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「ハッピーノート」で児童に寄り添う①
長崎大学教育学部の鈴木研究室を見学しました。鈴木慶子先生は3年次ゼミ生への指導に”社会による教育”を取り入れています。学生が様々な業種、役割の方と交流、指導を受けながら企画をたて、交渉し、物事を実現していく力を養うためです。2022年度の3年生は青年会議所(JC)大村と連携して、教育関連プロジェクトを実施しました。どんなプロジェクトなのかレポートします。
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キーワードは「地域」「グローバル」「自己肯定感を育む」
Q:JC大村からはどんな要望を受けたのですか?
石橋さん:JC大村は、大村市への誇りを胸に、グローバルに展開する活動を進めています。そのモットーを元に、僕たちの教育学部での学びを活かして「大村市の児童の自己肯定感を高めてほしい」と要望をもらいました。
Q:子どもたちの自己肯定感は高くない?
西川さん:低くはありません。ですが、コロナ禍での交流制限でやりたいことができない時期が続いたので、表現したいことが少なくなり、感情表現が薄れていった可能性はあると思います。
Q:地域、グローバルに加えて自己肯定感の向上。テーマが幅広いですね
川口さん:3つのキーワードは単独では全く違う内容ですが、組み合わせることが可能です。例えば、大村市で遊んで楽しかったこと、できるようになった経験を共有することから、ポジティブな感情を育て、自己肯定感を高められます。
石橋さん:また、外国に行かずともグローバルな視点を持つことはできます。例えば「大村湾で起こっている変化から世界規模の環境問題を考える」といった視点です。環境問題を自分ごととして捉えることができる様になるでしょう。
感情を表現する「ハッピーノート」
Q:具体的にどんな活動を計画するのですか?
西川さん:JC大村は大村市の小学生を対象にしたイベント「豊かな大村湾に触れて学ぼう!」を計画しています。子どもたちに大村市の魅力を伝えて、地域を担う若者を育てることが目的です。その中で、私たちは企画「ハッピーノートと海のお絵かきタイム」のコーナーを担当します。
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Q:「ハッピーノートと海のお絵かきタイム」とはどんな企画?
西川さん:白紙の絵本を一人一冊ずつ渡して、楽しかったことや記憶に残ったことを絵に描いてもらうという企画です。
野邊さん:イベント「豊かな大村湾に触れて学ぼう!」では、海の生き物との触れ合いや水中ドローンでの観察など、様々な催しがあります。その体験の記憶が鮮やかなうちにハッピーノートに表現してもらおうと考えています。
石橋さん:表現方法は、絵を描くでも文字で書くでも何でもOKですが、ページの端に楽しかったかどうかを表す“ニコちゃんマーク”を描くことが決まりです。
小田さん:イベントの前に予行練習をしました。僕がお世話をしている学童の子どもたちにノートを渡して夏休みの思い出を描いてもらったんです。
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Q:全面を使った熱のこもった作品ですね!
小田さん:描くことで楽しかった思い出がどんどん蘇っているようでした。子どもたちは話すことが好きだから、ハッピーノートを元に聞き込むと会話がどんどん広がります。その時の感情を一生懸命伝えようとしているのが伝わってきます。
Q:自己肯定感を高められる効果はソコですね
川口さん:はい。自分の気持ちを表現する練習になること。また、見返した時に「あの時楽しかった」と思ったり、それを他の人と共有することです。
小田さん:ハッピーノートはページ数があるので、普段から自分の気持ちを書き留めるようになったらいいと考えています。
石橋さん:自己肯定感を高めることは目には見えないし、一朝一夕に成果を出すことはできません。自分の感情を外に出すことを継続して行ってほしいと思います。
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求められるのは「個性」を受け止める環境
鈴木先生:一方でイベントを「楽しい」と感じられない子もいるかもしれません。感じ方、表現方法は人それぞれですから。その場合はどうしますか?
小田さん:先生が仰る通りだと思います。子どもが描きたいことを描けない環境を作ってはいけない。苦手なことを知ることも未来につながる重要な気付きです。
野邊さん:「周囲と同じように物事を捉える必要はない」と知ることで自己肯定感が高まる子もいるはず。その感情を他の人、大人に認められるという経験も児童にとっては大事な経験だと思います。
石橋さん:そうですね。ネガティブな感情を認めることは大事だと思います。その上で、ポジティブな感情を引き出す手助けをしたいと思います。楽しいと感じることを一緒に探して、児童が自分自身を知るキッカケを作りたいです。
ハッピーノートは表現するだけではなく、子どもたちが自分を知るためのツールでもあるのですね。次回はイベント「豊かな大村湾に触れて学ぼう!」の結果をご報告します。
鈴木慶子先生のインタビューはこちら