見出し画像

雲に吸収されふかふか浮いている

 教育実習生は毎年いたはずで、小中高と学校で過ごしていたのだから、たくさんの教育実習生を見てきたはずなのに、わたしはひとりしか覚えていない。
 背がとても高い男の人で、その人は自己紹介で、自分は中国語をやっている、と言った。
 うぉーしーりーべんれん
 という言葉を、その人は教えてくれた。中国語で、わたしは日本人です、という意味だ。
 中学2年のときにやってきた教育実習生と、うぉーしーりーべんれん、という言葉だけを、ずっとわたしは忘れずにいるのだけど、その理由が、自分でもわからない。

 夫の実家に帰って、義母と喋っていたら、昔通っていた中学校が有名な心霊スポットだったという話を始めた。昔、心霊スポットばかりが掲載された電話帳みたいなものがあって、そこも掲載されたのだと言う。
 義母が、幽霊の話をしたことは、今までなかった。わたしが今、怪談にはまっていることを、義母は知らない。
 偶然だろうけど、自分とか他人の考えていることは、喋らなくても雲みたいなものに吸収されていきふかふか浮いていて、そこから偶然に取り出すこともあったりするのだろうか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?