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こんにちは美容室

 SNSを毎日やることは毎日美容室に行くのと似ている。美容室には最近は行かなくなったけど、通っていたときは美容師さんを指名していて、馴染みの美容師さんにこんにちは、と挨拶する。美容室に毎日行く人はあまりいないかもしれない。毎日行くとしたら、わたしは毎日美容師さんにこんにちは、と言う。
 本を読んでいると、内容とぜんぜん別のことを考えているときがあって、そういうときは集中して読めていない。
 ヘーゲルの『精神現象学』を、もうどれくらいの期間読んでいるのかわからないくらい、終わらない。読んでいると、ついつい別のことを考えているから、わたしは『精神現象学』を読んでいるとはいえない。わからない、わかるわけない、と言って読むのをやめてもいい、読めていないんだからやめたほうがきっといい、だけどくやしいから最後まで読みたい。
 ぜんぜんわからないなりに、お、と思う部分は、いくつかあった。
 最近読んだ部分では、411ページ最後の行から412ページのはじめにかけて。
「感覚はいうまでもなく場ちがいな否定的存在であり、ひきかえ、義務の純粋思考は一点たりともゆるがせにできぬ本質なのだから、統一をもたらすには、感覚を放棄する以外にすべはないように見える。が、感覚も統一にむかう運動の要素であり、現実の要素でもあるから、両者の統一をいうには、さしあたり、感覚が道徳にふさわしいものになる、とでもいっておくほかはない。」

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