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自分からの卒業
昔々、あるところにエゴがいた。
エゴは自分のことしか考えていなかった。
努力しても努力しても上手くいかない。
砂で作った城のように、押し寄せる波にさらわれて、いつも努力は報われず、虚しくなった。
友達にウインウインがいた。
ウインウインは、エゴにいつも優しくしてくれた。
エゴはウインウインに聞いた。
……ウインウイン。なんで、君は自分にそんなに優しいの?
ウインウインは当たり前のように言った。
……君はいつかみんなの役に立つ人間になれるからさ。僕はそう信じている。
ウインウインはいつもみんなの幸せを考えていた。
損するような役割を果たして、エゴから見たら、もっとズルくやればいいのに、いつも誠実に働いていた。
ウインウインには仲間がたくさんいた。
支えあい、信頼関係で結ばれ、ウインウインのまわりはあたたかい雰囲気で満たされていた。
エゴは聞いた。
……どうすれば、自分も君のようになれる?
ウインウインはエゴの目を真っ直ぐ見て言った。
……自分より大切なもののために、みんなで何かを成し遂げていくことを目指したらいいよ。
エゴは変わった。
自分のことしか考えていなかった。
ズルしてさぼって、人に任せてばかりいた。
一生懸命になった。
頑張るようになった。
笑顔が増えた。
まわりの目が変わった。
……あいつ、楽しそうに働いてるな。
エゴは信頼されるようになった。
エゴのまわりで笑顔の輪ができた。
エゴは幸せになった。
ウインウインは聞いた。
……どうだい? みんなと一緒に何かをするのは楽しいだろう?
エゴはウインウインに感謝した。
……君のおかげだよ。自分のことしか考えていなかった昔が恥ずかしい。
エゴはもう虚しくならなかった。
みんながエゴが来るのを楽しみに待っているから。
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