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暮れの綺麗なご挨拶:俳句誌『ユプシロン』No.7

昔、「暮れの元気なご挨拶~♪」という歌が印象的なCMがあった(調べたら日清オイリオギフトらしい)。
毎年このCMがテレビで流れるたびに「そうか、もう今年も終るか」と思ったものだ。

そして現在。CMはめっきり見なくなったが、年一回『ユプシロン』がこの時期に我が家のポストに届くたびに今年の終わりをしみじみ感じている。

さて。『ユプシロン』とは関西在住の四人の女性俳句作家たちの俳句誌。
No.7とあるので、創刊から7年ということか。早いなあ。

以下、感銘句(お一人・二句。敬称略)。

仲田陽子
竜胆を軸にいちにち回りだす
なんとなく定員のある焚火かな

中田美子
八月の空から落ちてゆく競技
白椿落下の夢を見続ける

岡田由季
梅園のここから裏と思ふ坂
人選ぶやうなる蟬の体当たり

小林かんな
ぶらんこのだんだんずれてくる目鼻
葛湯溶く吉野は人を隠す山

一人・50句。それ以外はあとがきのみ。
己の身一つ、いや俳句一つのみで勝負している潔さは変わらず格好良い。

表紙も毎年、鮮やかなカラー1色。今年は明るいピンク。
でも、ベタ1色に立ち上がるユプシロンの白抜き文字が際立つから甘さはなく、これまた清々しい。

四者四様の個性が屹立した50句は完成度が高く、壮観な柱のようだ。
読むこちらの背筋も知らず知らずのうちに伸びてくる。

「俳句は挨拶」というが、頂いた時期を含め隅々まで綺麗かつ丁寧な挨拶のこもった一冊と思う。充実した誌面がいつも嬉しい。
今年もご恵贈いただきありがとうございました。

一年の中で作品として発表できる(残せる)新作50句がある、ということは、その裏に倍以上の俳句作品が詠まれ存在するということ。
作品の質が常に一定レベル以上に担保されていないと50句連作は難しい取り組みと思う。
厳しく己を鍛えているからこその、揺るがぬ綺麗さが一冊全体にある。
あと、個人的にはあとがきで大好きな『百年の孤独』(G・ガルシア=マルケス)について触れられていたのが嬉しかったです。

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