海外逃亡者(2)
興味の湧かない商売がいくつか僕にはある。
「不動産」
所有欲がないからかもしれないが、一度も自分名義で不動産を所有したことはない。
数億持っていた時でも賃貸か会社名義だった。売買が単純すぎてうまくいかない。
担保提供させることは多々あるのでそれを舞台に組み立てることは好きだけど興味はない。
「中古車」
テスラ以外は興味がない、むしろ過去に車を買った時も誰にかに適当に買ってきてっていうぐらいどうでもいい。買ったあとにガソリンを入れるのがそもそも好きじゃない。買ったらそれで終わりにしてほしいのに税金だ駐車場代だ〜とかかるのが許せない。
この「中古車」によって納田の嘘にボロが出て行くことになるとは夢にもおもわなかった。
数回大阪へいって打ち合わせたあと、東京にも僕の知人や関係者を紹介することになる。
「旭電気という会社に勤めることになったのでよろしく」と何人もの僕の人脈に話をした。
当面は、食品流通や新規事業構築などをやる予定だと説明してまわった。
僕が関係した医療機器の会社を納田に紹介したらえらく気に入り「投資したい」と言い出した。
大阪で開業したいと言うので僕は段取りを進めた。その頃、なぜか中古車の話をしきりに僕に奴はしていた。
「業者オークションでポンコツの数万ぐらいで買った車が一般オークションに出せば10万ぐらいになる。」
と言うのだ確かに、軽自動車とか安い車が数万で買ったのが6万とか10万とかになってる明細をみた。
まぁ商売の基本的にはそうだろうな〜がぐらいにしか思わなかったのだが僕からの提案で。
車には一切興味ないけど、3万で買ったものが6万になったら投資リターンは2倍、それも2週間で倍と考えると投資商品としては元本分ぐらいは戻ってくると考えると僕は理解できる。それを金融免許をとって商品化したらどうだろうか?
例えばお客からはクレジットカードで数万円投資させ1ヶ月車を売り買いする。3万の車を買って6万ならば6万の元本で3万の車を2台買えば12万になる。4倍になることを考えればお客に2倍と行って1ヶ月もしくは3ヶ月の期間デポさせておけば、利潤が高いのではないか?と提案した。
納田はそれが理解できたのかどうかは知らないがそれをやろうと言い出した。
「まぁ免許取るまでにいろいろ大変ですよ」と僕は将来的な話と取らぬ狸の皮算用で話した。
すると知人から「車買わないか?」とタイミングよく連絡がきた。
ちなみに僕は車の免許を日本から出国したあとに執行している。
当時は運転手がいたので免許はなくてもいいと思い上がってたので捨ててしまった。
本当に後悔してる・・・。
今でも免許取り直ししたいと毎年思うのだがやっぱり車に興味がないので繰越てしまう。
アラジンの魔法のランプでもあれば、お願いするかもしれない「免許くれ」と。
車種はベンツでたぶん数十万で買ったと思う。
売ってくれた人も「ヤっチー、お前免許もってねーじゃんwww」って笑ってた。
それを関東から納田に乗って関西まで帰えらせ査定させて売却させようと思った。
それに付き合った僕も車で関西まで戻ることになる。
あーだーこーだーと車について講釈たれてたけど、さっぱり僕には記憶に残ってない。
最初は、状態がいいからもしかしたら100万以上もしくは200万ぐらいで売れるとか言ってたので
「じゃその売った金で数回回してみてください、できるかどうか検証したいので。」
と言って預けたままにした。
翌朝関空から韓国へ戻る予定をしていたところに僕の携帯に見知らぬ番号で電話がかかってきた。
出てみると僕はあったことはなかったが、facebookでの納田と共通の知り合いで旦那さんが自衛官をしている女性からだったプライバシーもへったくれもなにもないが、Tさんとしておこう。
「おはようございます、納田さんから聞いたんですけどクレジットカードで中古車をかって運用するの私やってみたいのですが詳しく話きかせてもらえないですか?」
「まだ事業としてやってませんが僕は1台たまたま買ったのがあったので預けてやってみるつもりです。」
「どうすればいいですか?」
「まだ実験で直接買う方法でしかわからないので納田さんに聞いてもらった方がいいかもしれないですね。」
と言うような朝寝ぼけた頭での会話だったのでこんな感じで返答した覚えがある。
おしゃべりな納田があっちこっちに話たんだろうな〜ぐらいにしか思ってなかった。
このころ、1ヶ月に数日だけ日本にきて打ち合わせや仕事をまとめてこなし帰ることがほとんどでした。
おそらく日本にこれだけ長くいるのは、2014年になるまでほとんど海外だった。韓国での永住権もあったし2014年に映画の仕事に戻るまでこんな感じだった。
そして、大阪で医療機器の体験会を開くことになり難波の広めのホテル1室を会場にかりてオペレータも用意して10名程度の投資家含め体験させる人を呼んだ。思えば僕が顔を見知ってる人ばかりで納田の関係だけという人はいなかった気がする。これもフラグだったな・・・。
僕はホテルの部屋の鍵をもらい先に部屋にセットしにきた、納田は部屋のお金を払うのにフロントにいた。
ルームキーで中に入ると、すぐにフロントから電話がかかってきた。
「申し訳ございません、” T ” 様。ご提示いただいたクレジットカードがご使用になれませんでしたのでもう一度フロントまでお越し願えませんか?」
「あ、はい。伝えます。」
反射的に電話を切ってしまった。
血が逆流してスーッと寒気がするぐらいに感じた。
「” T ” 様」
聞き覚えのある苗字で、クレジットカード、このワードだけで凄まじいアラートが僕の中に鳴り響いた。
ドアのベルがなり、開けると納田夫妻で僕は何食わぬ顔して
「なんかフロントからクレジットが通らなかったそうですよ。」
「え〜ほんまかいな〜、会社のクレジットカード使うと面倒やから経理のTのカード借りてきてんけどな〜」
とベラベラと独り言のように部屋を出ていった。
嫁に何気ない世間話をした覚えが僕にはあるが、正直その瞬間に足元が崩れ去るような感触がして
その1日が終わり打ち上げの焼肉屋までなにを喋ったか覚えていない。
ぐるぐると思い出して、フラグの全てにこころあたりがある。
ここから
僕の内偵が数ヶ月に及んで始まる。
なにかがおかしい、確信的なものは” T ” しかない。
つづく
40才になったので毎日書く修行です。