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個展「Lost and Found」について⑤

個展「Lost and Found」ですが、いよいよ始まり…どころかなんと折り返しになっておりました。今週末、5/1(日)まで開催しております。ほんとにぜひぜひお越しください!
ばたばたでの記事投稿になってしまいましたが、結構今までの記事で今回の展示について思うところやあれこれ文字にできてちょっとうれしい。展示のことだけでなく、まだまだいっぱい考えてることあるはずなのだけれど、やはり文を書くことへの苦手意識が邪魔をしている気がする。それでもそこそこまとまった量の文字を書けたのは我ながら頑張ったと思います。

個展「Lost and Found」について①~④はこちらからどうぞ

さて、今回個展についての記事が5本目ということで、いったん最後の記事にしようかと思ってます。テーマは「距離感」とするつもりですが、書いてて思い出したことがあれば付け加えていくとします。

「距離感」、自分で設定してみてから言葉の重さにちょっとびびっています。普段この言葉が使われるとしたら「他人との距離感」「距離感ばぐってる」「他人との距離ありすぎ」等々ひととひととの関係性を表すときだなって。他人との関係なんて人間の永遠のテーマのひとつじゃないか…。

距離感、モチーフとの距離感のことです。絵描きより写真家のほうが意識される方多いのかな?という印象です。(物理的に被写体との距離を考えないといけないという事情もあるかもですが)
絵の場合、狙った構図や配置などの「絵作り」のための要素を気にする必要がとても多いせいか、モチーフと描いた人との関係性が見えにくくなってしまうことが多い気がしています。人物デッサンなどモデルがその場にいる場合はちょっと感覚が違うかもしれませんが。架空のものを描く場合なんかは特に距離感を忘れてしまいそうになります。(架空のものとの距離とは?ということはちょっと置いておきます)
描くモチーフの大小、近寄り方、色の乗せ方や光の入れかた、いろんな技術を用いてモチーフとの距離を作ることは可能だと思っています。カメラが被写体との距離を詰めたり、絞りの数値を変えたりすることで距離感の演出を試みていることと同じです。

「かさ」

いきなり距離とってる作品出しちゃったな。かかわっているっちゃかかわってるくらいの距離感。

「雨ときどき雨」

同じモチーフで、こちらはもうちょっと近づいています。黄色の傘の女性がもし片思いの相手だったとしたら、「かさ」の作品も「雨ときどき雨」もありうるのかな。「雨ときどき雨」のほうがスマホで写真を撮った時に自然にとれるくらいの近さが出るようにモチーフの大きさを調整しています。


何か心惹かれる人を見つけたら近くに寄ってしまう(でも邪魔はしたくない)

人物を間接的にとらえたほうが、本質に近づけるような気がしたり。そういえば対象と親密に、近くなりすぎない作品が多いです。人物をはじめとしたモチーフが直接的に迫ってくるような作品を描いていないんだと。(マネの『草上の昼食』やゴヤの『サトゥルヌス』なんかを思い浮かべてもらえれば絵が鑑賞者に迫りくることがありうるとすぐわかります)。一歩間違えれば「安全にみられるだけの絵」になってしまう危険がある。(美術史の出身なので、ついこんな話をするとカバネルの『ヴィーナス』とマネの『草上の昼食』の対比の議論を思い出します。興味ある方は調べてみてください)

そんな自分への皮肉として…え、皮肉になってない気がするけど、、描いたのが実はこの作品です。

うっかりすると、「ただ窓の外からのんびりしてる女性を眺める」だけの絵になりかねない、と思い猫にこちら(鑑賞者側)を見つめ返してもらいました。あなたもまた、眼差されている対象なのだと…。

話がそれましたが、わたしは描くモチーフと距離を詰めることよりも、距離をとることでできる間合いをかなり大事にしてる気がします。ただし、モチーフと距離がありすぎると「安全な場所から対象を眺めてるに過ぎない」絵描きになってしまう気がして少し恐ろしいです。
最初に触れたとおり、人間関係や社会との距離の取り方なんかにも通ずる問題なのかな…。あったかもしれない距離感をLostしていたのだとすればFoundすることがあるのかないのか……。

さて、このあたりでいったん語るのをやめにします。街と人を描くために、あちこち出かけたり人と会ったり本読んだり…さまざまなことをしたからいつも以上に気になったりもやもやすることが多い中で制作しなくてはいけなくて(しんどくなったりもして)、でも作品の中に表せるものは表してみたと思ってます。あと4日、どうぞのこりは展示をみて感じるところがあれば幸いです。
とりとめのない文章にお付き合いいただきありがとうございました。


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苗個展「Lost and Found」
場所: MOUNT Tokyo
東京都世田谷区駒沢2-40-6
駒沢大学駅から徒歩10分
期間: 2022年4月20日(水)~5月1日(日)※月・火は休廊
11:00~18:00(最終日は17:00まで)
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