プロメアを観た話
端的に言うと、プロメアの感想をまとめるためにnoteを始めるくらいには最高だった
【はじめに】
『プロメア』2019年5月24日公開、TRIGGER制作のアニメ映画。
(以下公式より)
燃え上がるのは世界か、魂か―――。
全世界の半分が焼失したその未曽有の事態の引き金となったのは、
突然変異で誕生した炎を操る人種〈バーニッシュ〉の出現だった。
あれから30年――攻撃的な一部の面々が〈マッドバーニッシュ〉を名乗り、再び世界に襲いかかる。
対バーニッシュ用の高機動救命消防隊〈バーニングレスキュー〉の燃える火消し魂を持つ新人隊員・ガロと
〈マッドバーニッシュ〉のリーダー・リオ。
熱き魂がぶつかりあう、二人の戦いの結末は――。
【ストーリー】
ことフィクション全開映画に関しては、どうしても12話前後のストーリーの猶予を持つ地上波に比べて、早足な印象を受けたり、逆に世界観すべて詰めようとしてとっちらかった印象になる可能性を秘めていると思う。
ただ、プロメアは絵柄や作品全体が纏う疾走感を保ちつつ、ストーリーの濃度やキャラクターへの愛着を薄ませることなくエンディングまで走り抜けており、「目が離せない」と「付いていけない」の間の絶妙なラインだった。観ていて本当に楽しい映画だった。
楽しいだけではなく、個人的に一度画面から目を背けてしまったくらい陰惨な要素もある。
ストーリーの根底に選民思想やナショナリズムの危うさがあり、爽やかでカラフルな絵面を通してではあるものの、鑑賞者のリアルにも問いかけるかたちになっている。流動的近代に生きる中で、技術活動の”リスク”に直面したとき、再び統計や科学に依拠し、それが”真”と”善”を併せ持つと錯覚しうるのか。
答えの出にくい問題を描いている一方、エンタメとして不完全燃焼に終わらせることなく、かつフィクションとしての強引さをアップテンポな映像で相殺した気持ち良いラストだった。
ストーリーの中で”関係性の強調”や”個人の内面との対話”といった、いわゆる「腐れ縁要素」や「自分語り」が少なかったのも、自分には合っていた。
これは個人の嗜好の違いなので良し悪しはないが、キャラクターに良い意味でも悪い意味でも深度と粘り気を持たせる要素だろうし、回想シーンが増える。プロメアでは作品の爽やかな雰囲気に水を差すような演出がそぎ落とされていたように感じる。
とくに各キャラクターの関係性に関しては、ほとんど——クレイとガロの出会い以外、過去についての言及(バーニングレスキュー、マッドバーニッシュの内部についての詳細など)が冒頭以外一切なかったのがとても良かった。
時間軸がブレず、脇道に逸れることなくまっすぐにストーリーが展開していく様子が爽快だった。とても完成度の高い、元気をもらえるようなストーリーだった。
【キャラクター】
かと言って、キャラクターに深みがなかったかというと一切そんなことはなかった。
キャラクターに関して言えば、以前から深くプロメアに触れ続けているファンがたくさんの愛情を持って情報・二次創作を発信しているので語ることはあまりないが、鑑賞後にほとんどのキャラクターをこんなに鮮明に覚えている作品も少ないように思う。主人公組に軸をドンと構えつつ、魅力的かつ邪魔をしないキャラクターたちを脇に据えた、素敵な構成だった。
どうやら体制側の記号が■、反体制側が▲として、キャラクターや建造物、エフェクトなどで表現されているみたいなので、それを把握して見てみると面白そう。
先述のようにストーリーのテーマが比較的暗いため、キャラクターが継続して過度に憎しみや復讐心を抱く描写をすると、本当に作品全体が暗い印象になりかねない。その点を、前向きな意思を持つ主人公たちや、その場の命を救うことに全てを懸けるバーニングレスキューの人々で中和されていて、観やすかった。
リオの暴走からの切り換えが早かったこと、クレイの思想を深堀りしすぎなかったこと、そして何よりガロの嫌味ない明るさが作品を通して一貫していたことが、作品が沈まないように下支えし続けていたように感じる。
声については本当に素晴らしかった以外の言葉が見つからなかった。前情報ほぼなしで観始めたのでクレイが話し始めたときは度肝を抜かれたし、エンドロールでは「松山ケンイチ!?!?」とでっかい声をあげた。
【その他】
ここから直感的
ただ好きで、漫然とたのしくアニメやゲームに触れてきた自分でも、ロボアニメとして感動した部分が数えきれないほどあった。
そもそもアクセルワールドを未だに観直しているような自分にとっては、マッドバーニッシュ組のデザインはほんと~~~~~~~にかっこよかった。
ただロボットのデザインはもちろんのこと、
動きが………………本当に…….…………神…………
今のアニメってこんなに動くの……むり……ぜんぶみよ……
ってなった。開始5分で、ヌルヌル動く機械が画面いっぱいに広がったりカメラがギュンギュン動いたりで、最高すぎてちょっと変な手汗かいた。
CGとアニメの境目も、素人目にはほとんどわからなかった。切り替わりがどうしても気になってしまって、実写版トランスフォーマーの衝撃以降、あまりロボアニメは観ていなかった。自分がそうした作品から離れていたことも作用して、ロボットの滑らかな動きと二次元的なシンプルさの相性の良さを見せつけられ、めっちゃ感動した。こんなに見えちゃっていいの…?
噂の版ズレもかっこよかった。目が老いてるので、あのスピード感+スパイダーバース級色収差のダブルパンチなんて目がイっちゃうのでは…と思ってたけど、隠し味程度でとってもスマートだった。
各所で澤野節が炸裂する劇中曲も素晴らしかった。爆盛り上がり曲はもちろん、キャラクター同士が無線で話すシーンのbgmなんて全部エモくて失神しそうだった。ガンダムUC観なおそ。ラストのシーンも緑の光でおもわず「アクシズの奇跡…」ってなった。
同じ制作会社ということで、いわずもがなグレンラガンのオマージュが各所に散りばめられていてたのしかった。
どことないカミナみ、ガイナ立ち、ドリル、巨大化…グレンラガンを観たのはだいぶ昔で霞んでるけど、おお…となるシーンがたくさんあった。きっとトリガーファンにはもっと嬉しい演出が数々秘められていたんだろうな。
プロメアは他トリガー作品の例にもれず、美しいコンセプトアートをいくつも見せてもらっているようだった。
キャラクターや背景の削り切られたシンプルなシルエットが、特徴的なエフェクト表現——▲や■、そして要となる”炎”を終始際立たせていて…カラフルなのにまとめられた、天才的なバランスの絵面に感動しっぱなしだった。
とんでもないレベルのアニメとしてのクオリティ、ロボが主役じゃないのに超絶かっこいい機械、往年のファンへのサービス、最高の作品だった。プロメア観て!と言うファンの気持ちが伝わってきた。
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