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児童相談所の女児追い返しから見えてくる業務実態 命に関わる事件が起きないと改善されない国が日本

一般男性育休教員です。

まずは、タイトルにあるように衝撃的な報道がなされていました。

この報道にある「業務の委託を受けた当直職員が追い返した」という部分に違和感を覚えました。児童相談所(以下、児相)は、業務委託をしているのか?という疑問をもち、調べてみると、ほとんどの自治体で業務委託の実態があり、自治体の職員と連携、もしくはマニュアル等によることを知りました。児相は、教員としてもお世話になる施設の一つになります。今後、どのような対策が必要になってくるかを考えていきます。

□今回の報道から

1 女児は保護されるべきだった
2 児相への非難は、処理対応を遅らせてしまう
3 自治体の委託業者の損切り

1 女児は保護されるべきだった

まず、様々なところで言われていたように、午前3時に訪ねてきていることから、一時保護の対象になることは明らかです。
(委託先NPO法人の)職員が、判断に迷った場合は、自治体の職員に連絡、相談の上、判断することになっていたことから、連絡、相談がなされなかったことも問題です。さらに、「高校生くらいだと思った」と一部報道がありましたが、児相は例外を除き、18歳未満までの対応を求められています。この話も、判断をいかに誤っていたかが分かります。

その後、交番での対応がよく、警察側の連絡により、一時保護が認められました。

2 児相への非難は、処理対応を遅らせてしまう

このような報道が明るみに出ると、非難されるべきではありますが、児相の通常業務が阻害されてしまいます。これにより、さらに助けるべき児童の保護や自宅訪問業務が滞ってしまうことは、想像に難くありません。

3 自治体の委託業者の損切り

この報道で、もう一つ注目したいのは、委託されたNPO法人の職員が追い返したために起きたことだと、自治体が会見を行なっているところです。
NPO法人に指導をし、該当職員を勤務させないことを決めたようですが、自治体としては「自分たちは悪くない」といっているように思います。

確かに、正規職員に判断を仰がなければいけない事案でしたので、筋は通っていますが、損切りと言われるものに聞こえてしまいます。さらなる児相業務改善を行なっていくべきです。ここに自治体の児相への関心の低さが見受けられます。

□そもそも児相とは

今回の児童保護の対象となる虐待の対応ではありません。障害、子どもの発育、非行、不登校などに関する相談や支援を行う施設です。その業務の過酷さは想像を遥かに超えるものでしょう。また、一時保護といっても、同じ施設に虐待と非行や障害のどちらも存在するため、一律の厳しい支援、指導になることもあり、施設環境は劣悪になりがちです。

そこで、児相業務の外部委託がほとんどの施設で行われています。そして、児相に配属された専門性のない児童福祉司という役職とともに、手探りで進めなければいけないのです。
その中でも、虐待案件は親との信頼関係や力関係を考えながら、支援していかなくてはいけません。酷い扱いを受ける子を目の当たりにしながら、親との信頼を獲得しなければ、次に進めないことが往々にしてあるそうです。
そして、保護した先では、子どもの権利が剥奪された施設での支援になります。このようなすべてが児相任せの環境を変えない限り、保護されるべき子を守ることはできません。
事実、アメリカでは、保護が先になされ、裁判所でその判断を行う形になっていて、まず被害者である子を保護する動きをとる必要があります。今回の件も、専門性のない正規職員がどう判断したかによっては、より非難を集めたかもしれません。

そして、この児相任せ、児相非難は、近年の虐待死が報道される中で、最悪のケースを生んでしまいました。

□船戸結愛ちゃんの事件

この事件の時系列や詳細については、たくさんの資料がありますので、そちらをご覧ください。

この事件は、香川から東京目黒区への転出、そしてその間の児相の動きに非難が向きました。

香川では、通告により見守り開始→虐待発覚一時保護→不起訴決定により、職員の家庭訪問条件つきの一時保護解除→虐待発覚、二度目の一時保護という流れがありました。

そして、医療機関からの進言がありました。保護から施設入所への進言です。家庭裁判所の判断が出ると、入所が決まります。しかしここで問題になるのは、裁判所の判断が親に報告される部分です。そして、怪我の程度からいくと、入所を認めない判決が下ることも考えられたそうです。親との信頼関係が崩れてしまうことを恐れた児相が、結果的に「介入」ではなく、「援助」の判断に至りました。

病院への通院を条件に、再び一時保護の解除がなされてしまいます。そして、より多くの目で親子を見守ることになりました。それを嫌って、東京目黒区への転出になってしまいました。

児相間での引継ぎが行われ、香川でのケースを受理した東京目黒区側は、虐待と認定しましたが、原則の48時間以内を過ぎてから、家庭訪問をしました。しかし、家庭訪問期の遅れと受け応えから5分程度で終了。しかも、結愛ちゃんを確認することはありませんでした。
次の機会である小学校説明会でも姿を現していないのにも関わらず、確認を怠りました。
そして、警察からの連絡で、事の重大さに気付かされたわけです。

香川と目黒区の児相の判断や家庭訪問の悪さに非難が集まりました。香川側の報告書では、この判断の内情が報告されましたが、目黒区側の報告書では、虐待案件の家庭訪問原則からかけ離れたことなどに関しては内情の報告は見当たりません。

□児童虐待防止法改正

この事件を受けて、親、保護者の体罰が禁止されることになりました。

児相業務の一端である虐待における事案は、園、小、中への聞き取り、通告者からの聞き取り、家庭訪問、保護者への指導や一時保護など多岐に渡ります。上記で紹介した通り、これだけには留まらないのが児相業務なんです。
現場での業務改善の一つとして、業務委託が、このような形で再び非難されることになると、専門性をもたない児童福祉司の負担が増えるのは当たり前です。そして、児相を非難する方々は、さらなる悲劇を生むことを想像すべきなんです。専門医や警察の配置によって少々の改善が認められます。また、訪問業務と保護業務の担当者を分けることが定められました。児相の権限を高めることや専門性を高めること、そして人手不足を解消すること。これらによる弊害が、この報道によって明らかになってしまいました。

今後も、業務委託が行われいく背景を想像し、非難と行政に対する改革意見を履き違えないようにしたいです。


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