勝手にファクトチェック:「首相公邸の利用に関する規定」
1 はじめに
1万8千円の大金をはたいて電気通信主任技術者試験に申し込み、更には2陸技(第2級陸上無線技術士試験)にも出願しているので勉強しないとしよ
うがないのだが、どうにも過去問を見ても訳が分からない。
そういうわけで土曜日の朝からTwitterを見ていたのだが、そんな中でひとつのツイートに目が留まった。
「首相公邸の利用に関する規定」と題する文書である。
以下は書き起こし。
公邸を巡るもろもろの問題はあまり知らないし、何か意見を述べてみようという気もないのだが、この「規定」は少しおかしいんじゃないかと思ったので、いかにその理由を書いていきたい。
2 公邸の名称
「規定」においては、一貫して「首相公邸」として表記されているが、法文中に「公邸」の語が用いられた最も新しい法律である、重要施設の周辺地域の上空における小型無人機等の飛行の禁止に関する法律(平成28年法律第9号)には、以下の記載がある。
※完成以来居住事例がなく、私も今存在を知ったが、実は官邸の敷地内には、総理大臣公邸のほかに、官房長官公邸が存在するようで、このような規定振りとなっている。
宿舎管理のために規定を定めるのならば、法文にならって「(内閣)総理大臣(の)公邸」等の表記とするのが適当であると考えられるし、あくまで俗称に過ぎない「首相公邸」の語が公文で用いられるのには違和感がある。
3 公邸管理の所管
正直に言って公文でも表記揺れはよくある問題(法令審査を通るようなものであれば用字用語は徹底してチェックされるが、部内の決裁のみで制定される内規レベルではそこまで見ない場合が多い)ではあるが、この問題は、「規定」の信ぴょう性を疑うに相当の理由があると思われる。
「規定」においては、宿舎管理は内閣府の所管であるかのような記載になっているが、令和5年度概算要求において、官邸や公邸の維持管理経費を計上しているのは、内閣府ではなく内閣官房となる(注:内閣府は内閣府設置法により置かれる機関であるのに対し、内閣官房は根拠を内閣法に置くため、根本的に組織の根拠法が異なる。)。
一般的に、庁舎や宿舎等の行政財産の目的外使用許可に関する事務はその財産を管理する官庁が行うため、公邸の維持管理を行う内閣官房ではなく、内閣府に対して許可を求めるのは明らかにおかしいことになる。
以上の理由から、上述の「規定」は、各行政機関の所掌事務に疎い部外者が作文した偽文書の可能性が高いという結論に至った(そもそも、内閣府が政策調整や省庁をまたぐ政策を所管する官庁で、内閣官房が内閣の庶務を行う官庁であるという認識があれば、一読した段階で違和感を抱くはずである。)。