【大型作品】勝尾寺「だるま棚」
こんにちは!77回生のmaruです。今回は僕が設計した「勝尾寺『だるま棚』」の解説をしていきます。
はじめに
設計の解説に入る前になんでこの作品を作ることになったかという経緯を説明しますと、去年の6月のJBF(レゴの大きなイベントです)で灘校レゴ同好会の作品を見てくださった勝尾寺の方が、「お金は勝尾寺が出すから勝尾寺の名物のだるま棚を作ってみないか」と声をかけてくださったのが始まりです。まあ企業案件みたいなものですね。大小さまざまなだるまを設計して棚に並べる、というコンセプトが面白かったので受けさせていただきました。ちなみに実物のだるま棚もめちゃくちゃ見ごたえあるので是非行ってみてください。
だるま(60cm)
棚に乗っているだるまの中でも最も目を引く一番大きいだるまです。これの設計だけに2カ月半かかってます。
顔
まずは顔ですね。お察しの通りめちゃくちゃ時間かかってます。冬休み中はほぼ毎日これの設計してました。新年明けた瞬間は右上の眉毛作ってたんじゃないかな。
大きな構造は下図の通り3分割できるとこくらいですかね。
諸々の構造は以下の通り。
ここら辺の作り方は後述します。
これじゃわかりにくいと思うので、一部だけ取り出すと下図のようになってます。
真ん中は普通に積んでるだけなのでそこを取り外すと以下のような感じ。
四方向に横組みしてるだけです。上下部分の段差はなかなかの脳筋プレーです。
左右の部分は真ん中に比べてめっちゃ単純です。ほぼプレートを積んでるだけです。線が細くなっているところは横組みを埋め込んでいます。
以上で顔の説明は終わり…なんですが、これだけじゃ訳分からんって方もいると思うので、作り方(メイキング?) のようなものを書いときます。良ければ参考にしてください。
①まず顔全体の輪郭を取ります。
②輪郭をもとに何ポッチかごと(今回は3ポッチごとにしました)に線を引いて格子を作り、その間を埋めて顔の元となる平面をつくります。
③この平面に描きこみたいラインを、まずは平面で作ります。これは元の写真とかを見ながら作りました。(今回は鼻を書き込んだときを例にとります
④③で作ったラインを②で作った平面に落とし込んでいきます。これが一番面倒な作業です。この時に重宝したのが以下の3つの組み方。ラインの7割くらいはこれで解決しました。
こんな感じで元の平面と描きたいラインを見ながら組んでいきます。
最後に出来上がったのを埋め込んで完成です。この作業をひたすら一か月くらい繰り返してました。大型作品を作るときはぜひ参考にしてみてください。
胴体
「勝」の字以外は特筆すべきことはないですね。上に積んでるだけです。大体がブロック、上の傾きが緩やかになるところだけプレートも使っています。ちなみに胴体を作るときに、極力もとの曲面を再現できるように、方眼紙を利用しました。
この2枚から各層の前から見た時と横から見た時の長さを決めて、以下のように各層の断面を決めます。
(色分けが3色しかないのは家にあった色鉛筆が黄色とピンクしかなかったからです。このせいで後々n段目とn+3段目が分かりづらくなりめちゃくちゃ迷惑しました。アホかな。)
あとはこれを頑張ってPCに起こして終わりです。てかよく考えたらExcelで良かったやん。なんで全部手書きなんこいつ。
次は「勝」の字です。これは顔の模様と対して作り方が変わりません。埋め込まなかった分こっちのが楽でした。まず平面で「勝」の字を作ります。これを頑張って胴体に貼り付けるだけです。
これがこう
この作業が地味に面倒くさかったです。「勝」の字だけで2週間くらいかけた気がします。拡大したものを下に貼っときます。分かる人は分かると思います。
残りの黄色い模様とかはいい感じに縦組みと横組みを組み合わせてるだけです。
この部分、2時間くらいでパパっと作ったんですが割と上手く作れて気に入ってます。
だるま(20cm)
顔
まあまずは顔ですね。設計も顔から取り掛かりました。まずは目のまわりから解説していきます。
これだとちょっと分かりにくいと思うので、目玉を外して、分離できるところを分離させます。
真ん中の灰色のbarに目玉を突き刺していました。Barを使った理由は傾きをつけつつ目玉を固定するためです。あと、眉毛回りとオレンジの分が分離できるのは1*2スロープを付けるためにポッチ反転したかったからです。少ないスペースで見栄えよくポッチ反転するのにこれが最適だと思いました。眉毛は実は結構悩みました。2,3日いろいろ悩んだ結果がこの形です。
目の裏側はこんな感じになってます。Barで左右の傾きをつけて、ヒンジパーツで上下の傾きをつけました。
顔の残りの部分は大体二分割できます。(下のひげの構造が見やすいよう一部プレートとタイルを外しました。) 構造は見ての通りです。
鼻回りは分かりにくいと思うのでそこだけ抜き取ったのが下図です。
これを三枚おろしにすると、
こんな感じですね。ウェッジプレートの横組みで鼻筋を作りました。ウェッジプレートとカーブスロープで鼻のラインを作ってるのはお気に入りポイントです。ちなみにだるま棚の設計全体で一番初めに思いついたのがこの鼻まわりだったりします。あと地味にポッチ反転してます。(ポッチ反転の構造は下図)
うーん脳筋。
「勝」の字
表側から見ると割ときれい(と信じてます)なこの「勝」の字ですが、裏側は悲惨です。
ぐちゃぐちゃ。文字の各部をくっつけようと奮闘してたらこんなことになってました。これの解説は無理なので、極力分かりやすく分割した画像を以下に載せときます。頑張って解読してください。
その他
残りの頭、側面、背中は基本的にプレートで曲面を表現しています。頭は丸みを出すためにウェッジプレートを多用しました。
顔の横の模様はカーブスロープとラウンドプレートで表現しています。ちなみにこれを見た後輩が完全に上位互換の設計を見してくれたのでそれも載せときます。(敗北)
うーん、上手いね…
だるま(12cm)
3種類のだるまの中で一番小さいだるまです。これは60cm、20cmとは趣向を変えて、部員たちがいろいろアレンジできるよう顔の構造を単純にしました。結果的にめちゃくちゃ良いアレンジがたくさんでてくれて嬉しかったです。
顔
分かりやすく分割するとこんな感じ。ポイントは髭を牙のパーツで表しているとこぐらいでしょうか。目新しいことではないです。一応裏からの画像も載せときます。
横にポッチが出てるのは側面との接続のためです。
「勝」の字
デフォルメに結構苦労しました。一応「勝」と読める…よね?「力」をハートマークを傾けて表現したのは地味にお気に入りポイント。右上のポッチ反転は下図のような感じで作ってます。常套手段。
その他
頭、側面、背中はこんな感じです。書くことないです。
棚
棚です。ブロックを積んでるだけで特筆すべき構造はないです。左に空いてる大穴は60cmのだるまを置く用の穴です。
おわりに
設計に思ったより時間がかかってしまい、結果的に半年以上設計したこのだるま棚です。ギリギリの日程で制作させてしまった部員たち、特に、これの制作で日程がなくなりメイン作品をほぼ1人で作らせてしまった部長には頭が上がりません。ごめんなさい。なんとかかけた時間に見合ったクオリティはなんとか出せたと思います。
そして、完成しただるま棚はなんと、文化祭の翌日から勝尾寺の方で常設展示して頂いています!めちゃくちゃ良い場所に置いていただけました。このnoteを読んだ皆様もぜひ見に行ってみてください!以上で「勝尾寺『だるま棚』」の解説を終わります。最後まで読んでくださりありがとうございました。
おまけ「没にした設計集」
このくらい大きな作品になると、一つや二つ途中まで作って没にした設計も出てきます。ここではその中からいくつか選んで紹介したいと思います。
没にした設計①「だるま(60cm)の顔」
「だるま(60cm)」で顔の構造を紹介しましたが、最初は全然違う組み方をしていました。それが下図。
そもそもポッチの向きが違いますね。完成形だと横組みしまくってますが、こっちは縦組みしたものを傾けています。こっちのメリットは完全に平面なのでスロープとかと組み合わせやすいところ。スロープを使った髭は完成形よりもクオリティが高いかもしれません。デメリットとしては、曲面が作りづら過ぎるところ。最終的に顔の曲面が再現できないと思い、没にしました。
没にした設計②「だるま(20cm)の「勝」の字」
だるま(20cm)の「勝」の字ですが、最初はもうちょっと違う形をしていました。それがこちら。
実際のだるま(20cm)の「勝」の字よりもかなり綺麗だと思いませんか?僕は今でも割と気に入っています。これを没にした理由は単純、「デカすぎた」からです。最初「勝」の字を作る前になぜか縦のサイズを数え間違え、本来縦7,8ポッチのところを10ポッチと数え間違えてしまいました。しょーもなすぎますね。
没にした設計③「だるま(6cm)」
実は12cmよりも小さいだるま、だるま(6cm)も一応設計していました。めちゃくちゃデフォルメされた「勝」もついてます。これを実際に作るかは最後まで迷ったんですが、そこまでのクオリティではないこと、このデザインでこのサイズのだるまが実際に勝尾寺に無いこと、などを理由に買わないことに決めました。
以上、おまけ「没にした設計集」でした。