戦略人事:既得権益に囚われる人々との闘い(ライドシェアは他人事ではない)
■人事部門の苦悩
人事部門は当然のこととして、採用、教育、評価や異動、賃金などのオペレーショナルな部分を担う実行部隊でもある。一方で、事業の拡大や新規事業の推進などに伴う組織構造の変化や少子高齢化や法的枠組みの変更などの様々な要素により人事制度を再構築しなければならない要請なども増えてきている。
こうした要請は「経営層」から発せられることが多く、その意図をくもうとすると「資格制度」「キャリアパス」「賃金制度」などにてを付けざるを得ない。その中で汲むべきこととして「衡平性」がある。しかし「衡平性」は、今まで既得権益で恵まれた人々からその権益を取り除き、格差の為に不遇だった人に資源をまわすことも含まれる。
新たな人事制度を構築しようとすれば、天秤の傾きを解消せざるを得ない。しかし、経営が要請しているにもかかわらず、事業部門を預かる取締役などは、自分の所属する人々に不利になると反対する。部分にしか目が行かない人たちが人事部門の足を引っ張る。なぜならば取締役は経営者ではないからだ。あくまでも「自己権益」を優先する。言い過ぎかもしれないがそうした事例を見てきている。
■身につまされる記事
理念を重視し、理想を議論していても、既得権益のせいで立ち往生するのが目に見えている事例もある。
○ライドシェア「タクシー会社以外も参入可能に」 規制改革会議が提言
2023年12月26日
中間答申では、IT企業などを念頭にタクシー会社以外でも参入できる法制度について議論し、来年6月までに結論を示すことを求めた。新法制定なども視野に入れているとみられる。地域や時間帯、台数も制限せず、雇用契約だけでなく業務委託を含めるよう求めている。
https://www.asahi.com/articles/ASRDV666HRDVULFA003.html
○ライドシェア、対価の目安「タクシーの80%」 変動価格制導入も
自動運転は全都道府県実施に向け支援予算措置
2023年12月25日
特にライドシェアに関しては、対価の目安をタクシー運賃の5割から8割に引き上げることや、ダイナミックプライシング(変動価格制)の導入も盛り込まれている。
https://jidounten-lab.com/u_44690
タクシー運転手不足という面を、事業者、運転手、地域という利害関係者だけでなく、利用者などの利便性を考えれば、
①タクシー会社だけが事業をできるというのは廃止すべきである。
②運賃は需要と供給の原理からダイナミックに決めるべきである。
安全面については情報技術などで解決できることはウーバータクシーの運行コンセプトで明らかである。保険などの整備、情報セキュリティの強化などで解決できることが多い。
しかし、政府は「タクシー業界」に配慮して、おそらくは「影響の少ない」政策しかしないだろう。これでは世界において行かれる。
■経営者のすべきこと
経営者は理想を語り、戦略の方向性を示し、優先順位を決めて組織を指示する。しかし、指示をして終わりでは無責任である。報告を上げさせるだけでは十分ではない。なぜならば、現場は「面倒」が起きることは報告しない傾向があるからだ。
経営者は現場に赴き、観察しなければならない。
結果だけを聞くのではなく、その経緯を聞かなければならない。
さもないと、「結局何もしない」ことと同じことが起きる。
人事部門は、力が弱く、事なかれ主義になりがちである。責めるのではなく経営者の支援が必要である。
人事部門は本質的に縁の下の力持ちである。自身の欲望を二の次にできる上層部がなければ成り立たない。
(2024/01/06)