生きていれば、いいことある
shiftbase退職に関して
まえがき
2023年7月12日、母が亡くなって今日でちょうど1年が経ちました。
母が亡くなる直前、新潟の小さなアパートの一室で、
母は僕に対してこう問いかけました。
「わたしって本当に幸せな人生だったと思わない?」
末期がんで体力が衰退する中、
最後の瞬間まで前向きなあり方を貫いた母をみて、
最後まで立派な人だなと、尊敬の念を抱きました。
僕を産み、育ててくれて、本当にありがとう。
あなたの息子であることを誇りにおもっています。
そんな母の死から1年。
本当にいろんなことがありました。
とあるスナックのママが僕にある言葉を教えてくれました。
「人生には、"まさか"という坂がある」と。
まさか、自分が創業した会社を去ることになるとは。
まさか、自分の身にこんな不思議なことが起きるとは。
去年の夏には、想像もつきませんでした。
shiftbaseを退社した理由
今年の4月時点では、
脳の難病が原因で退社したと公表しました。
「体調は大丈夫ですか?」と、
心配の声を多数いただくので、
この場を借りて報告いたします。
僕は元気です。
一方、僕の身体におきた現象については、
いまだに原因はわかっていません。
自分に起きた現象をどのように表現すべきかわからず、
"脳の難病"という大袈裟な表現を使ってしまったことで、
必要以上に心配をおかけしたこと、反省しています。
繰り返しにはなりますが、
僕は元気に生きています。
もう少し具体的に、僕の身に何が起きたのかを説明させてください。
ざっくり整理すると、以下のような現象が僕の身に起きました。
・突然、文字が読めなくなった
・目の前に幾何学模様が見えるようになった
・瞬間的に激しい頭痛が発生する
など
精神科医からは霊的現象の可能性があると言い渡され、
「霊的現象といわれた僕はどうしたらいですか?」
と質問するると、
医者からは「専門外です」と、
ごもっともな回答をいただいた。
原因が不明で且つ、特殊ケースということもあり、
会社の代表権を僕が保有していることのリスクを考慮し、
創業メンバーと熟議の上、退職する運びとなりました。
自分で創業した会社を去ることは、
悔しく、耐え難い経験でした。
shiftbaseが生み出した価値
なんとも不甲斐ない退任劇ではありましたが、
「UNCHAIN」と「進捗2Earn」という2つの価値を、
地球上に生み出せたことは今でも誇りに思っています。
①「UNCHAIN」 〜エンジニア養成機関〜
②「進捗2Earn」〜エンジニア向けの開発助成金制度〜
僕自信、経済的な理由で学びたいことを自由に学ぶことができず、
そんな自分をみて、悔し涙を流す母をみて育ったので、
UNCHAINでの取り組みは、とても意義深いものでした。
それだけに、会社を離れることは、
とても悔しい出来事でした。
shiftbaseを創業した背景
そもそも、なぜshiftbaseを創業したのかについても触れさせてください。
shiftbase創業時の僕の夢は、
個人の選択肢が豊かになり、
自分らしく生きる人が増える社会をつくることでした。
そうした背景から生まれた事業がUNCHAIN(アンチェーン)です。
UNCHAINは、端的にいうと、エンジニア養成機関のようなものです。
広義では、エンジニアリングを学習できる教育機関と言えるかもしれません。
このUNCHAINでは、誰でも、無料で、開発スキルを学ぶことができます。生まれや境遇、経済的な理由に関係なく、最先端の開発スキルを学んだ人が、人生の選択肢を増やしてくれています。
shiftbase退社を公表した際に、UNCHAINメンバーから以下のようなメッセージをいただきました。
いただいたメッセージを読み、
自分たちが挑戦したことの社会的な意義を実感でき、
「これまで頑張ってきて、本当に良かった」と、
熱く込み上げるものがありました。
この方はいま、ブロックチェーン関連のプロダクト開発案件に引っ張りだこなんだそうで、自分のことのように嬉しく感じます。
お世話になった方々へ
さて、UNCHAINという事業の立ち上げは苦難の連続でしたが、
ゆうきさん、たかせ、しょうの3人と
真剣に議論した日々は、笑いあり、涙あり。
あの日々は、生涯で色褪せることはありません。
改めて4人で創業できたことに感謝です。本当にありがとう。
会社という枠の中で、4人で走り抜くことはできなかったけど、
どこかでまた笑い合える日を迎えられれば幸いです。
投資家の皆様
不甲斐ない形で退任する僕のことを、
ビジネスの関係性を超えて、
今でも変わらずに人として応援してくれていること。
有難く思っています。
これからは違う形で恩返しができると幸いです。
慎泰俊さん
shiftbase退社後も親身に相談にのっていただき、
ありがとうございます。
テジュンさんの志、人生のあり方から常に刺激を受けています。
僕が尊敬する人は、南方熊楠、ガンジー、マザーテレサ、テジュンさんです。
いつもありがとうございます。
shiftbaseバックオフィスチームの皆さん
バックオフィス業務に負担かけてごめんなさい。
とても愛のある配慮をいただいたと思っています。ありがとう。
落ち着いたら、全員で食事でもいって、
思い出話に花を咲かせることを密かに楽しみにしています^^
連絡くれたみなさん
連絡、ありがとう。
なんだかんだ、人並みにシンドかったので、
みんなの気持ちが心の支えになりました。
本当にありがとう。
これからも僕はドブネズミのように、
美しく生きてまいります。
そして、改めて。
shiftbaseは最高のチームです。
皆様、今後ともshiftbaseのことをよろしくお願いいたします。
よくいただくご質問
そもそも体調は大丈夫なのか?
結論からいうと、大丈夫です。
前章で紹介した現象に関しても、改善傾向がみられています。
共感覚 統合の多様性
色々と調べていく中で、"共感覚"とよばれる人口の数%程度の人しか持たない認知特性の存在に出会い、自分に起きた現象は"共感覚"に類似していることがわかりました。
https://twitter.com/UNCHAIN_Nack/status/1677738665320263680?s=20
この半年間、何をしていたのか?
この半年間は "iki.earth(通称:粋)" 所属のアーティストとして
ライブ出演をしながら日本全国をまわっていました。
(車の走行距離は9000kmを超えました)
映像のBGMは、僕が作曲した"雅旅"という曲です。
このような刺激的な日々を過ごせているのは、
相棒のサーダン(元GREEエンジニアで、現ラッパー)が
いろんなライブに僕を連れていってくれたおかげです。
ゆうきさん、改めてサーダンを紹介してくれてありがとう。
このバンドには、ラッパー、ゲームエンジニア、起業家、ゲームクリエイター、JAZZバンド、お笑い芸人、瞑想家、アパレルデザイナー、メイクアップアーティスト、イラストレーターなど、
あらゆるジャンルの「アーティスト」が調和し、
さながらサーカス団のように各地で"遊び空間"を演出しています。
Nack(中野)は最近なにしてるのか?
現在は、アーティスト名Nack Nao(ナックナオ)として活動しており、
ラップ、楽曲制作、書道を中心にパフォーマンスをしています。
ラップ
主にライブでフリースタイルラップを披露することが多いです。
目の前にいるお客様の雰囲気、属性にあわせたコンセプト設定、言葉選びを大切にしています。
僕は、ラップを仏教における念仏と同じものであると解釈しています。
鎌倉時代に文字が読めない百姓のために、踊りながら「南無阿弥陀仏」と念仏していた一遍上人と、ラッパーの般若さんは同格だと思っています。
ようは、大事なコトを伝える手段として、同じものであると言いたいわけです。
曲名:untitled days -陰-
はじめて収録したラップです。音源制作、リリック作成、ラップからすべて自分で作成した1曲になります。
ライブでは、主にフリースタイルラップを披露することが多く、今年に入ってから、7回もステージに立たせてもらいました。
楽曲制作
日本の"侘び・寂び"の美意識に代表される引き算の美学を音で表現し、HIPHOP、テクノミュージックからサンプリングした音源を組み合わせた、あたらしい音楽ジャンルの開拓に挑戦しています。
先日、訪日外国人向けのライブで披露したら、とても反応が良く、「日本的な美意識を再定義してくれる音源を求めていた。君はこの道のパイオニアだ」と評していただきました。嬉しい。
曲名:空祭(そらまつり)
日本のお祭り音楽が、30〜50年くらいアップデートされていないことに気づいたので、祭囃子をクラブ音源っぽくアレンジしてみました。
日本の祭囃子のリズム感や音質は、海外の方にとってはとても珍しいみたいで、今後はクラブカルチャーにも訴求していきたいと思っています。ナイトクラブにいるユーザー層に、日本の伝統的な祭り音源の魅力を訴求できたら嬉しいです。
曲名:いい下弦の月
2023年5月12日(下弦の月)の日に作成した音源です。
PoeticsのCEO山崎はずむさんからギター音源部分はサンプリングさせてもらいました。この曲は個人的に好きで、聴いていて何だか落ち着きます。ライブシーンで日本のお客さんに最も反応がよい曲です。
曲名:雷櫻(かみなりざくら)
雅楽で利用される琴や竹笛などの音源を用いて、EDMを作成しました。曲の途中から4つ打ちのビートが入ります。先日の訪日外国人向けのライブで、お客さんが縦揺れしているのをみて、改めて4つ打ちの破壊力を思い知りました。この曲の音源はルイ君というプロのトラックメイカーにミキシング(加工)してもらいました。クラブっぽいエフェクト、4つ打ちのアイディアは彼の仕事です!
書道
一般的な書道のイメージからは外れますが、グラフィックアートっぽい作品をつくっています。作品自体はすでに何人かにお買い上げいただいており、部屋やお店に飾ってくれている写真を見る度に幸せな気持ちになります。
2024年2月に下北沢で個展を開催するので、よろしければお越しください。
さいごに
よくアーティストとして何を表現したいのですか?
と聴かれることがあります。
日本的美意識など思いつくものはあるのですが、
自分の中の根源的なモノに関しては、
まだ問いの答えを言語化しきれていません。
とはいえ、今の時点で思うことは、
いきていれば、いいことがある。
そんなことを自分の生き方を通して、
とくに子どもたちに伝えていけたら嬉しです。
(どちらかというと、自分に言い聞かせているような気もしますが。)
昨年末、僕はとつぜん文字が読めなくなりました。
自分のことを心配してくれる家族、友人、仲間のためにも、
起きたことへの理解を深めたい。
その一心で、数百冊と本を読みあさりました。
その結果、ふたたび文字が読めるようになりました。
これは奇跡なんてものではなく、
努力の結果だと思っています。
今あるもので、なんとかする。
自分が決めた道で、なんとかする。
生きていれば、いいことがある。
生きていれば、なんとかなる。
今日も自分に、言いきかせています。
この先、どんな困難があっても、笑って乗り越えていきたい。
我が母のように。
Mother Luck you.
母に幸あれ。