夏の訪れ
6月のある日の晩、お風呂に入ろうとしたところ、入れ違いでお風呂から上がったばかりの母に言われた。
「お風呂に入ろうと思ったら脱衣所におっきなゴキブリがいたから、スプレーを取りに行って急いで戻ってきたんだけど、逃げられたのよ。んもう!と思って、ごきぶりホイホイをセットしたんだけれど」
何だ。てっきり「捕まえたわよ」の武勇伝かと思ったが、まだいるのか。
大概の虫は平気な私だが、どうしても彼らだけは相容れない。
しかしながらお風呂には入りたい。
遭遇しないことを祈りながら浴室へと向かう。
幸いなことに、浴室でも脱衣所でも彼とは遭遇しなかった。
ほっと胸をなでおろし、ストレッチをしながらお風呂上がりのゆったりとした時間を過ごす。
そろそろ寝ようかと寝室へ向かおうとした頃に、脱衣所から嬉々とした母の声が聞こえてくる。
「ごきぶりホイホイにかかってる、かかってる!」
うちの母のことだ。二言目には「見て見て!」と言ってくることであろう。間髪入れず「あ〜それはよかった、ありがとう、おやすみ」と言い放ち、寝室へと戻る。
もう少し爽やかな方法で感じたかったなと思いながら、
夏の訪れを感じた夜。