「孤独のグルメ」ごっこ
私は1人で外食するのが結構好きだ。
美味しい料理を頂けそうな、雰囲気の良い、個人経営の居酒屋やレストランに入る。
メニューと睨めっこしながら、どれにしようか、あれもいいなと自分の脳内で作戦会議。
料理をひとくちひとくち味わいながら「う〜ん美味しい」「どうやってこの味わいを出しているのだろう」と自分の中で会話を繰り広げたり、「お、あのお客さんが注文してるの、美味しそうだな。あっちも注文しておけばよかったか・・」と食べながら考えたり。
お店選びから料理を頂くまで、自分の気持ちをしっかり見つめ、脳内では常に言葉が紡ぎ出されていく。
「孤独のグルメ」ごっこと私は呼んでいる。
ここ数ヶ月、孤独のグルメごっこが出来ていなかったが、先日久々にその感覚を思い出した。
ランチを食べたかったが、街に着いたのは14時半過ぎ。
そもそもランチ営業が終わっているお店も多い時間だった。
まだランチを頂けるお店をGoogle Mapで探す。
いくつかのお店が表示される中で、「今の気分にあったお店はどれだろう?」と自分に問いかける。
カウンターで日本酒を飲んでいる自分が思い浮かび、昼から通し営業をしている和食店に見当をつける。
いざ入店すると、感じの良い店員さん達と、雰囲気の良い内装。
うん、これは間違いない、と確信する。
メニューを見ると、つまみ、一品料理、定食とラインナップは様々。
お腹がぺこぺこだったので、定食を注文する。
今日のおすすめには魅力的なメニューが多数並んでいたが、その中でもひときわ私の心を掴んだのは、あん肝ポン酢。迷わず注文した。
そういえば、一人でこういうお店に来るのは久しぶりかもしれない。
そう思うと、途端にそわそわしてくる。
料理への期待に胸を膨らませ、ビールをちびちび飲んでいると、あん肝が提供された。
大きなあん肝が、3切れも。
あん肝、いつぶりだろう。
少なくとも2022年の1年間は食べていない気がする。
3切れ入っているとはいえ、1切れをたった一口で頂いては勿体無い。
まずは箸で半分に切る。
いやいや、半分も勿体無い。
さらに切って、当初の1/6くらいの大きさになったところで、ぱくりと頂いた。
あん肝特有の、こってりまろやかな風味と、とろける食感。
そして、大根おろし、ポン酢のさっぱりとした組み合わせ。
これこれ、この感じ。
美味しいご飯を巡って練り歩くのが私のライフワークなんじゃないかとか考えながら、あん肝を大事に大事に味わう。
そうこうしていると、すぐに定食も提供された。
まずお椀をひとくち。
出汁の味にほっこり癒される。
定食のおかずは新鮮なお刺身が5種類。
何から手をつけるか考え、さっぱりした白身から頂く。
どれも非常に美味しかったが、マグロを頂いたときの感動といったら。
もともとお刺身はなんでも好きで、特別にマグロが好きという訳ではないのだけれど(どの魚も同じくらい好きなのだ)、身の味わい、口の中で甘く溶けていく感じが格別だった。
気づけば一杯目のビールは飲み干していた。
次の用事の兼ね合い上、あまりゆっくりする時間はなかったが、あん肝もお刺身も日本酒と合わせたい。
よりどりみどりの日本酒の中から、ピンときたものを選んで頂いた。
誰かと一緒にご飯を食べると、美味しさを共感しあえて楽しい。
一人で、自分と対話しながらじっくり味わって食べるのも、とっても楽しい。