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定期報告20210610

 睡眠障害と食生活の基本的なことについて、寺田新著、東大出版会刊「スポーツ栄養学」で勉強してたことまとめ。

 摂取カロリーから基礎代謝と運動消費カロリーを引いたカロリー収支があまりにもマイナスであるとき、人体は体内のミクロな恒常性維持に関わるイオンチャネル調節機能であるとか、(体温維持や骨細胞産生などにもかかわる)ホルモン産生・バランス調節機能に使われるエネルギーを削ってしまう。成人が正常な生理機能と骨密度を維持するためには一日当たり45kcal/kg(つまり体重45kgの人の場合2025kcal)を摂取しなければいけないといわれており、飢餓状態(目安としては30kcal/kgを切ること)が日常茶飯であると人体は生理調節機能を低下させそれが慢性的な自律神経の乱れにつながる恐れがある。
 つまりたとえば、一日おきに食べる日と食べない日を繰り返す「プチ断食」のような絶食系ダイエット法は、不眠症や無月経などの生理不順、(生理不順でエストロゲンが産生されず骨芽細胞サイクルが阻害されることによる)骨粗鬆症などの生理調節機能障害を併発させる恐れが強いのでお勧めできない。
 確かに絶食系ダイエットは毎食腹八分目を維持させる苦行より食欲を抑えやすく実行しやすいし、実際内臓脂肪を削るには有効だが……しかしそれを繰り返すことでイオンチャネルやホルモン調節などの生理調節機能を低下させ、そのことが自律神経系に回復困難な深刻なダメージを与える恐れがある。過度の身体能力維持向上のプレッシャーを受け続けるアスリートにも多い症状だというが、そうだろうと思うよ。
 まあ、食べな過ぎで飢餓状態が続くと人体は最低限の生命維持だけにエネルギーを回して他を削るので、筋力だけじゃなくもっとミクロな代謝機能が低下して、自律神経系の乱れを引き起こすという話でした。今も若干の睡眠障害を抱える自分にとってはすごく大事な話だった。
 食事療法の基本は、まずは(自分の体重を目安に)多すぎず少なすぎない基礎的なカロリー摂取量とか、糖質・脂質・たんぱく質の三大栄養素から全体のバランスの見直しを、ってことだろうね。ビタミンとか細かい栄養素とかの話はそのあとだ。たしか飢餓状態が続くと胃腸の消化吸収機能も低下するんだったか……これもペプシン(タンパク質分解酵素)とかアミラーゼ(炭水化物分解酵素)とかの酵素がうまく産生されないとか、あとなんだかのメカニズムで。

 自律神経系にまでダメージが行ってしまったらどうしたらいいか、どうしていけば代謝含めた身体機能が回復するのか(大体運動後30分以内に糖質とタンパク質を摂って筋肉の解糖を抑えるのがスポーツジムとかのトレーニング法では定石なんだけど)、そのへんを調べているのだがまだよくわかっていない。運動時は筋肉周辺のグリコーゲンが解糖されて運動に使われる血糖値を維持する、それが消費されつくしたまま運動を続けると低血糖症になったり筋肉を解糖してしまうからトレーニングが逆効果になるとか故障が起きやすくなるという話なのだが、自分の中でその辺の知識がきちんとまとまっていないのだ。
 グリコーゲンはグルコース(単糖類の糖質、ブドウ糖)の貯蔵庫みたいなもの。空手の組手やってた時、トレーニングやり始めた直後とかそうだったけど、激しく運動しすぎてグリコーゲンの解糖が追い付かず低血糖症になったりした時は、おれは息切れひどくなったりめまいを覚えたりする。あとはなんだろう。飯食った直後の血糖値が高いときに運動すると、インスリンが過剰に産生されすぎて低血糖症を引き起こしやすい、とかかな。だから食後1時間とか過ぎた後の血糖値が落ち着いた頃に運動するのがベターだって。


 ……おれはSくんのことを、外から見ると過剰に心配し過ぎってくらい心配しているかもしれない。でも、COVID-19とかじゃなくてもただの風邪でも夏風邪がしつこいのはそうだし、Sくん前に絶食と過食嘔吐を長期間くり返してたせいで免疫系とか代謝系が(おれが半年間の不眠で脳神経組織の受容体と情報伝達物質放出系やられたみたいに)弱いみたいだから。
 免疫系細胞間の情報伝達をつかさどるサイトカイン放出・受容系とか、腸内の栄養吸収系&肝臓での代謝系とか、体内恒常性と自己修復をつかさどるホルモン分泌系が狂ってる時期が一度続いてしまうとなかなか治らないし、そういうミクロな部分での体の障害ってのは医学的知識のない人間には理解されづらい。手も足もあるし五体満足だけど、長期間の無理がたたってランゲルハンス島とかイオンチャネルとか(細胞表面から毛細血管へ続く)吸収管とか受容体とかミクロスケールで体を見たらボロボロ、ってのはよくあることだけど、元気そうに見えるんだよね。生きてるしちゃんと普通に笑ったり泣いたりしてるから。むずかしいね。
 たとえば、ブドウ糖をエネルギーとして筋肉に取り込ませるインスリンを生産する膵臓内のランゲルハンス島が、糖分の取りすぎに対処することによる「細胞器官の過労」でやられてしまうと、インスリンを外から定期的に摂取しないと生きていけない体=糖尿病になってしまうんだ。これは常識だよね?
 それ(糖尿病)と同じこと(細胞器官の働かせすぎからくるミクロな障害)がいろんな体内の器官であるんだよ。……って言えばまだわかってもらえるのだろうか。糖尿病の仕組みは誰でも知ってそうだから例に挙げたんだけど。そういうミクロな部分に障害(と定義する医学的基準は今のところないけど)持ってて体弱い人ってのは、ほんとうは結構な数いるよね。
 おれは毛細血管もイオンチャネルも、ホルモンが血管をめぐる様子も免疫系細胞間でのやサイトカインの授受の様子も書籍や論文から得た知識を頭ん中で普通にイメージできるから頭ん中で反応の流れを構成できるんだけど、イメージできない人は何言ってんのかわかんないってなるだろうな。ってかそういうのは普通に人体解剖しても見えないしね。目に見えないものは信じない、って人は遺伝子や免疫系も信じないんだろうし、(ミリカンの油滴実験も、そこから単位電子を仮定せざるを得なくなる計算もやったことないから)素粒子なんてあるのかどうかもわからないんだろうし、量子物理学の世界なんてわけわかめなんだろうな。

 おれはいつだったか、Sくんは、大切な人を殺すことを選ぶくらいなら迷わずに自分を犠牲にするんだ、と思った。……おれは、メインストリームから離れることに恐れなんてない。何処にいたって自分の意志で生きることを選んできているんだから、どこに行ったってそれは同じだ。君がどこへ行こうとも、どんなことをしようとも、君を守るよ。
 ちょっと危うさも感じたのは事実だけどね……恐れるものがまったくないわけじゃないし、むしろ常識的で冷静な判断をした結果恐れてそうするんだから、危ういほどに清くとうとい精神の持ち主だと感じた。名は体を表すというけれど、どこまでも魂の穢れを拒絶する君の意志は本当にとうといんだ。
 ある種の道徳は、精神的な鋭さを敵視し、反面でその鋭さに逆らおうとして怠惰を庇護する。ゆえにそれは表面上は道徳的に見えるよう扮した非道徳を勧めることもあるのだが、君はその種の道徳は拒絶しているらしい。困難な道だ、でも個人的な倫理が、倫理的な個人が始まるのはいつだってその地点からだ。若さゆえなのかな……でも、おれは君みたいな素直でまっすぐな子、はじめて出会った気がするよ。内心ちょっとはらはらしながら、でもちゃんと成長を見守りたいタイプの子だと思った。……前も言ったけど。この世界がそれを許してくれるとしても、くれないとしても、それがおれが君を好きな理由。

 Sくんのためにできることを考える、それだけで、おれにとっての世界がどれだけ明るく変わったか、揺るぎない足場を得たか、はかり知れない。
 おれ自身は別に、Sくんじゃない、誰とも知れない誰かに何を言われようが知ったこっちゃない。おれがちょっと気分を害することなんかより、優先順位は君が上だ。でも、もしも君の仕事に支障が出てしまうとしたら、……君も大切だけど、君の夢も同じくらい大切だ。でも、それは今答えを出すことじゃない。
 おれは君の帰れる場所でありたいと思っているよ、いつだって。だから無理に答えを出そうとすれば、君を傷つけてしまうだろう。だからそれはしない。あるいはそう想う気持ちに偽りがないからこそ、誰もが陥る白刃渡りなのかもしれないとも思うよ。君のことは好きだけど、君の負担にはなりたくない。たしかに疲れすぎていると時々全部捨てて音楽と本の世界に閉じこもっていたくなることはあるけれど、おれは、自分の身勝手な気持ちに振り回されて君を傷つけるほど短い時間を生きているわけでもなければ、頭も心も弱いわけではない。少なくとも、君の置かれた環境から君を置いて逃げ出すことはないよ。
 君がどこへ行こうとも、何をしようとも、最後まで付き合うよ。君が望んでくれている限りは。

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