事故パンについてまとめてみた ~B2落ちや8項抵触との付き合い~
※以下、選手名は敬称略です
※成績は2023年9月4日終了時点の情報です
前田滉の事故パンでの安全運転に対する一部の論争
昨日、物議を醸していたのが、8月29日からの蒲郡「中京スポーツ杯争奪 蒲郡ボートキング決定戦」においての地元愛知支部の前田滉の走りについて。
地元シリーズ、なおかつ主役不在のシリーズであるにも関わらず、ドリーム戦に選ばれないどころかオール6コース、スタートも決まらない状況で6着の連続。
上の画像は最終日後半前までの成績でしたが、その最終走は.32のスタートからF艇+事故艇が発生しての4着入線。初めて6着以外でしたが、10走とも最下位という結果でした。
この走りに対して、
「F2だけどいくらなんでも酷すぎないか?」
「せめて5着を獲る走りをしてくれ」
「6着連続するぐらいなら出るな」
というような声がありました。
結論から言えば、前田滉は事故パン(詳しくは後述、簡単に言えば事故しすぎ)なので、格下選手への5着争いにすら持ち込めない状況なので、仮に展開が向いても安全運転せざるを得ない。そんな状況、ということでポストしました。
ポストした結果、「事故パンについては知っていても、実際にどの選手が事故パンであるか知られていないこと」や「それを知っていてもその走りは認められない」という声があり、想像以上の反響がありました。
インプレッション数で言えば、福岡メモリアルの他のポストを余裕で超すレベル。
その後も、元レーサーの西川昌希氏や関谷聖二氏などもそれに関してポストしていたの見ました。ってかみんな日曜にめっちゃ議論するやん。
事故パンで安全運転することに対して、様々な意見がありましたが、自分は「意思表示してくれるんだから5艇立てで話を考えられるので良いのでは」と思っています。ただし、「事故パンで安全運転する」というのをファンが読み取らないと、「A1だし、F2でもターンテクで着を拾ってくれる!」と信じているファンを裏切りかねないのは確か。
ただ、出走表で「〇〇選手は事故率が高いなのでレースで1着争い参加できません、買わないでね」と書けないのは当然。仮にそんなこと書いて他艇の事故を避けた結果で3着に浮上したらそれはそれで大問題。
ということで、「知ってるわ、そんなん」という人もいるかもですが、今回は事故パンの定義であったり事故パンの調べ方とかを書いておこうかなと思います。
そもそも事故パンとは?
事故率について
ご存知の方は多いと思いますが、事故点と事故率について書いておきます。
事故率の計算方法については、事故点の合計を出走回数で割った値となります。事故点については上記のとおりですので、下記は補足。
※選手責任外の出遅れは事故点はありません
優勝戦のFLはペナルティの差はあれどグレードに関係なく30点
優勝戦以外のFLは非常識でもそうでなくても20点、ただ出走表のF本数だけでは優勝戦のFか一般戦のFかは区別が付きません
妨害失格(S2)は通常の事故より5点多い15点
選手責任の失格(S1)は10点ですが、仮にその事故で後半も欠場となった場合はほとんどが選手責任の欠場となるので、20点加算になる場合もあります
逆に選手責任外であれば失格も欠場も事故点はつきません、ただし級別審査のための出走回数もカウントされません
例えば、フライング2本切って、選手責任の転覆失格1本、不良航法2回の選手が級別審査の半年間(5月~10月、11月~4月)で90走した場合、
(20x2+10+2x2)÷90=54÷90=0.60となります。
事故率によるペナルティ
①事故率が0.70以上で即B2
いくら勝率を稼いでいても、事故率が0.70を超した場合は即B2です。
目安として、
70走→49点(フライング1本+失格3回やフライング2本+失格1回で50点)
90走→63点(フライング2本+失格2回+違反2回で64点)
100走→70点(フライング2本+失格3回or妨害失格2回で70点)
となります。
ただ、100走を超したあたりで事故パンを気にしないといけなくなるのは、スタートの早い選手よりは他艇に積極的にアタックに行く選手です。・・・というのもフライング2本も切ったら斡旋の入り方次第ですが90日休みで90走できるかどうかも微妙になるので。
なお、事故率は0.70以上でアウトなので、0.695などであればセーフです。級別審査の勝率は小数点3桁以下四捨五入ですが。
2013年前期級別審査、今垣光太郎は三国GWで新期早々フライング。そして、6月の芦屋グランドチャンピオン決定戦で集団Fに呑まれ早々にF2。選手責任失格も2本。出走回数も80走しかかなわずA級どころか事故パンでB2に転落。
ただ、2013年の総理大臣杯(クラシック)は級別に関係なく出られるので、B2の身でSGに出場しました。
②事故率1.00を超えると8項抵触で半年間の斡旋保留
8項抵触の条件として、
①半年間(前述の2期間のうちどちらか)の出走回数50走以上
②勝率3.00未満か事故率1.00以上
となります。ですので、事故率が1.00を超しても49走しかしていなかったら8項抵触は回避できます。ですが出走回数50走以上はB1の絶対条件なので49走未満で即B2です。
仮に、①・②を満たした場合は半年間の斡旋保留となります。事故率だけでなく勝率も同様なので、「事故しまくり」もですが「5着6着ばかり並べる」のもご法度です。
8項抵触の場合、半年間の斡旋保留となります。大体、新しい期の始まる11月や5月の初めからとなります。つまり、1期まるまる走れないので、次の期は事故率が0.70を超しているのでB2、その次の期も出走回数不足でB2が確定します。
B2だと斡旋もなかなか入らないので、仮にA1選手が抵触した場合はA1に戻ってくるのにも時間がかかります。
8項の主な抵触者 ~小芦るり華~
冒頭の画像、佐賀支部女子の若手エース格の小芦るり華のデビュー期は、菊地孝平のびっくりのゼロ台スタート連発。(本人談ではありません)とはいえ、18歳のルーキーがここまでスタートを踏み込むのは、なかなか見ない光景。
しかし、デビュー5ヶ月目の住之江で1本目、+.06で当時の非常識Fルールで即日帰郷。これで収まると思ったら次節もタッチスタートというど根性。フライング翌節の平均スタートで0.11。
これは来期もっと良くなるのでは?と臨んだ最終節の児島。
フライング3本と不良航法1回で合計62点の事故点、小芦の出走回数は50走を超えてしまっていたため8項抵触。そして8項抵触の斡旋保留はF休みとは被らないので、小芦はF3の180日間と加えて半年間の斡旋保留、ほぼ1年間の休みをデビュー1年目から課される形となりました・・・。
美談にしたら行けないの承知ですが、デビュー期の失敗を糧にして、今は安定しているのかもしれないです。
8項の主な抵触者 ~福来剛~
8項抵触は、期末に事故をしてカバーできなくなった時に大体起きます。
2017年前期級別審査の福来剛は、6月と休み明けの7月に地元でフライング2本、選手責任1本を2節でやってしまう散々っぷり。事故点は違反1回を含めて20+20+10+2=52点。
しかしF2休み前の時点で51走。このままでは事故率は52÷51で1.02。休み明け10月末にギリギリ斡旋が入ったので最低2走は無事故で走らないといけません。
その期末のびわこ。事故率が1.00を割る・・・はずだった53走目。
妨害失格で期末に15点加算。残り2日間も出走しましたが、もちろん15点をペイできる回数走れるはずもなく8項抵触となりました。
今では、2020年の平和島クラシックで優出、2022年の常滑ダービーでも予選前半で活躍するなどしていますが、B級落ちからA1に復帰するまでに4期、細かい期間で言えば1年8ヶ月かかってます。
ちなみに、このときの福来選手は初日選抜でも5コースで普通にスタートしている通り、大外選択をしていません。これが大外選択だったら・・・福来の未来はどうなっていたんでしょうか。
おまけ 事故した時にペイするための出走回数
待機行動違反・不良航法 3走
選手責任失格・欠場 14走
妨害失格 22走
フライング・出遅れ(優勝戦以外) 29走
フライング・出遅れ(優勝戦) 43走
事故点から計算した、①の事故率0.70でB2の条件を脱出するために、無事故で走らないといけない出走回数です。②の場合は単純に点数と同じ回数走らないといけないわけです。(妨害失格なら15点なので15走)
期始めに失格で10点持っても、無事故を意識すればすぐに事故率を下げられますが、見積もりを甘く見ていると急なスタート事故連発で苦しむことになり、最悪は半年斡旋停止もありうるのです。
前田滉を例に取った、事故パンを回避するために取らざるを得ない行動
では、前田はどのような状況であったか?・・・は、Xにもポストしていますが、文字数制限のない場所でもう一度書いておきます。
7月7日の多摩川の前半レース時点で事故点は39点(フライング1本+妨害失格1回+不良航法2回)、出走回数は44走で事故率は0.88でB2圏内ですが、F1本の30日を踏まえても出走回数はまだまだ稼げる状況。A1キープも挑戦できる状況でした
フライング。
7月7日多摩川11Rのフライングで事故点は59点。出走回数は44走。
①事故率0.70でB2降格を回避するには85走必要なので残り41走。
②事故率1.00で斡旋保留を回避するには、49走で止めるか、60走するか・・・つまり残り16走。
もちろん、この残り◯走は無事故無違反前提。待機行動違反が取られたら2点加算なので、前述の通り①には3走無事故無違反が必要になります。
7月7日時点で9月の下関ヤングダービーの斡旋は入っていたので、41走できるかは斡旋次第・・・とはいえB1で迎える1月からの新期とB2で迎える1月からの新期は斡旋や出走回数にも差が出てきます。
定かではないですがB2の場合、仮に成績を上げられても斡旋が思うように入らず出走回数不足でA2止まりになり、A1復帰が半年遅れる可能性もあります。(斡旋次第なので90走確保できる可能性もあります)
おそらくそういう背景で取った行動が・・・
①オール6コース回り
②レースには参加したくても出来ない状態
につながったと思われます。・・・というかそうでしょう。
他の選手と何が違うのか
では、他のF2選手でも攻めている選手がいるのは何なの?という話。ちょうどF2で常滑周年を走っている黒井達矢を見てみましょう。
執筆している9月4日現在、常滑70周年記念を走っている黒井達矢も戸田お盆シリーズで今期2本目のF。7月のフライングと合わせて90日休みの状況。
・・・しかし、予選突破こそならずも3日目以降はオール3連対、イン逃げは5日目後半レースも含めて2度とも決めています。
黒井達矢の事故点は、合計56点。(9月4日終了時点)
1本目のフライング 20点
2本目の優勝戦フライング 30点
違反 3回(待機行動違反2回、不良航法1回) 6点
出走回数は106走なので、事故率は0.52。前田とは違って、同じF2の身でも事故率に余裕があるので6コースで安全に回らずともレースに参加できます。
ちなみに、この出走回数なら後18点事故点の余裕があります。フライングが20点ですが、そもそも次切ったらF3。仮にターンで無理をして操縦不良で失格となっても事故率の余裕はある状況。
しかも、勝率も6.93。このままいけば来期はA1です。
「黒井は上手いから」とかでなく、そもそも置かれている立場が違うということです。
事故率、事故パンを調べる方法
まだまだ書くことあるのですが、この文章の時点で5000文字行ってました。
先日出したこの記事で4000文字です。あ、見てくださった方、意見を頂いた方ありがとうございました。田村隆信、やっぱりすごいんですね。気になる方は稚拙な文章ですがぜひ読んでいただけると嬉しいです。。。
謎の告知はさておき、最後に事故パンを調べる方法を書いておこうかと思います。自分はこのように調べてるよってやつなので、参考にして・・・事故パンで安全運転せざるを得ない選手は・・・消したほうがいいと思いますけどね。
①各情報サイトで調べる
ひまひまさんの出走表+α →6名分の事故点がひと目でチェック可能
ひまひまさんの級別成績 →事故率の高い選手が一目でわかる
宮島フリークスさんの「今期成績検索」 →登録番号を入れれば事故率や事故点がすぐわかる
艇国DBさんの各選手の成績 →不良航法と待機行動違反がわからないが、失格や欠場はわかるので計算で大体の事故率を計算可能!
ボートレース日和の出走表でチェック →一目で確認可能ですが、実際の事故点と若干の差がある模様
私が参考にしているのはこのあたりです。一番参考にしているのは艇国DBさんです。名前で検索できて成績にアクセスしやすいです。F2とかの選手は事故率を見て、事故パンのリスクを抱えてないかチェックできます。
違反が網羅されていないですが、2点の差なので大体の計算なら艇国DBさんのページと電卓や暗算で。
ただ、ボートレース日和さんのデータは色々と網羅しているので一番手堅いんじゃないかと思います。「基本情報」の下まで潜ったら載ってます。
宮島フリークスさんの成績検索は、「このままだと来期こうなるで」っていう目安も教えてくれます。正確ではない?ですが、赤くB2と表示されていたら事故パン圏内です。
皆おなじみのひまひまさんは全体像を見る時にめっちゃ便利ですよ。最近忙しそうで、トップページがまだオーシャンカップのままだった・・・。支援ってまだやってるのかな。
②出走表から探る ~本場の出走表にある場合~
蒲郡の出走表には事故率が載ってます。正直事故点より事故率が大事なので、ここの事故率が期始めでもないのに0.70より上を行っていたら注意です。
ちなみに、9Rの①井上忠政は事故率0.71、これは期末、4月末の出走表。井上は期始めにF2を切った後も⑥コースには出ずにスタートに気をつけながらF2の身で勝率をキープしてA2には踏みとどまりました。
蒲郡を買う時は出走表のPDF片手に予想しましょう。
③出走表から探る
とはいっても、ほとんどの場で載ってないのは確か。①にあげた各種情報サイトで確認できますが、面倒くさいって場合は・・・
フライング2本持ちを見つけたら、6コースに出ていないかの確認or事故率を検索、事故率が0.70を超している場合は無事故運転意識の可能性大
フライング1本持ちでも、不可解に6コースに出ている動きがあれば事故率を検索、事故率が0.70を超している場合は無事故運転意識の可能性大
事故率が0.70を超していても、選手それぞれに考えがあるので必ずレースを降りている場合ではないですが、節間の成績やスタートタイミング、選手コメントを確認すると、F2でもレースに参加できるか、そうでないかが推測できるかと思います。
おわりに
事故パンでレースに参加できないという状況に対して、X(旧Twitter)で様々な意見が出ていました。自分の意見は、「事故率などをチェックすることでA級選手であれど購入対象から外すなど、舟券戦略に活かせるのでは」と思います。
ただ、考えは人それぞれなので他人の意見を変えるまでのことは出来ません。
今回の記事は、事故パンについての情報をまとめて、閲覧された方にとて何かしら参考になったり、前田滉の意図(あくまで推測)が伝わっていればなと思って書きました。今後のボートレース観戦に彩りが加われば嬉しいです。事故パンなので決して良いものではないかもしれませんが・・・。
実は、今期の事故パン予備軍リストも作ろうと思いましたが、事故率の説明だけで3000文字に達していたし、記事を書いている時間もまさかの2時間超え。
とりあえず、改めて別の記事で書こうかと思います。
今日はここまで。とりあえず自分でも読み返してみますが、情報の誤りなどありましたらXのリプライでも構いませんので教えてください。感想もお待ちしています。
おやすみなさい。