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おばあちゃんと亀
おばあちゃんの話part2です。
このお話は祖母が亡くなった時の話です。
そういった話はちょっと…と言う方はそっ閉じして下さいね。
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私の祖母が亡くなった時、世間では植村花菜さんの「トイレの神様」がたくさん流れていた時代でした。
私は祖母が亡くなる数ヶ月前から、まだ小さい娘を連れて、実家と自宅を往復する日々を続けていた。
親戚の多い実家だったので、入院中の祖母には常に誰かが付いていた。
私の娘はまだ小さかったので、長く病室にいる事は出来なかった。
なので、私が祖母の病室に居る時は父やお見舞いに来ていた親戚に娘を見てもらっていた。
もうあまり長くは無いとは知っていた。
出来ればずっと祖母の近くにいたかった。
だけど当時の私が、娘を連れながら、仕事で来れない主人のいない中で、結婚後嫌悪感と不信感だらけの実家に長く滞在する事は出来なかった。
祖母は、私が自宅に帰っていた時に亡くなった。
父からの連絡で、もう危ないとの連絡が最初だった。
その第一報を聞いた時、私は実家に帰る事が出来る新幹線の最終があと一、二本あると携帯で確かめた。
私はもう半分パニックになりかけながら、着の身着のままお財布と携帯だけバックに突っ込んで、主人と寝ている娘を残して飛び出そうとしていた。
もう一度携帯が鳴った。
父からだった。
おばあちゃん亡くなりました。
私は玄関でワアワア泣いた。
次の日に私と主人と娘、それから義理父母も一緒におばあちゃんに会いに行った。
おばあちゃんはいつもの顔で少し笑っている様に見えた。
おばあちゃん、ごめんなさい。最期に私は立ち会えなかった。
自分の気持ちを優先して、その場にいたくなかったんだ。
お葬式が終わり、私は自宅に帰った。
暫くボーっとしてしまう日々が続いた。
とても天気が良い5月だったのに。娘を散歩にも連れて行けない日々が続いた。
見かねたママ友が声を掛けてくれた。
『外、出られてないかなと思って』
我が家から遠いのに、わざわざ自宅近くの公園まで来てくれた。
彼女とその息子さんはとても優しい人だ。
出会った時からずっとそうなのだが、とかく気を使わせない。
私が話しをしたい時はウンウンと聞いてくれて、話したくない時は空気の様に一緒にいてくれる。
息子さんも娘より一つお兄ちゃんなのだが、物腰が優しく、娘が困っているとすごく自然に手を貸してくれる。
二人に誘われて、私達親子は久しぶりに公園にやってきた。芝生に座って、お茶を飲む。
ポツポツと私はおばあちゃんの事を話す。
何も言わずに聞いてくれる友人。
子ども達は花摘みと虫取りをして笑っている。
その時、座っている私達の少し先の道を一匹の亀が横切ったのだ。
広い公園なので池がいくつもあるのだが、私は亀が横切ったのを初めて見た。
『おばあちゃんだ』思わず口に出してしまう。
すると友人は『そうだね』と当たり前の様に言った。子ども達も亀に気づいて、みんなで草むらの奥の池までゆっくりゆっくり歩く亀を眺めた。
私がおばあちゃんを思い出す時、子どもの頃の思い出ももちろんあるが、このシーンも必ず思い出す。
きっと、ぐずぐず不器用な私の事を心配して
来てくれたのかな。
都合の良い解釈かもしれないけれど。
おばあちゃん。ごめんなさい。
そしてありがとう。