創造を阻むバイアス
こんにちは!弁理士のnabです。本日は、イノベーションに不可欠な「創造を阻むバイアス」をテーマにお話しさせていただきます。参考図書は、鈴木宏昭さんの認知バイアスです。
表紙画像は、みんなのフォトギャラリーよりいただきました。ia19200102さんありがとうございます。
(1)制約が創造を阻む。
本著においては、Tパズルのパズルの問題が提唱されています。(以下参照)4つの異なるパーツを組み合わせて、Tの形を作らせるという課題です。
ちなみに正解は以下の配置です。この問題にトライした人の中で、15分以内で解決できたのは、わずか10%であったそうです。
この問題にトライした多くの人は、上の水色の5角形のパーツを、①基準線に平行、又は垂直に置いたり、②5角形ピースの凹んだ部分を、他のピースで埋めようとしたそうです。
①②のような人間の常識からくる自然の傾向性を「制約」と呼びます。
(2)制約を緩和する多様性
このパズルを解決できた人は、ピースの置き方、繋げ方について、さまざまな可能性を試していた一方で、出来ない人は、いくつかの特定パターンを試すにとどまっていたそうです。
たくさんのパターンを試すという多様性が、制約を緩和するわけですね。この他にメンバー構成の「多様性」も、イノベーションの制約を緩和するようです。
iPS細胞でノーベル賞を受賞した山中伸哉さんの研究室は、生物学の専門家に加え、工学部出身で生物学のことは初心者や、実験動物の管理が得意であった方など、多様性のあるメンバーで構成されていたようです。
(3)規制を緩和する評価
また、Tパズルに関連する実験を行った被験者のうち、パズルをうまく解ける人たちは、パズルの見本との照合を頻繁に行っていたそうです。
Tパズルに類似する複数の課題を行わせると、被験者は、前の課題においては、パズルのピースをほぼ全て使い切った段階で、失敗と判断したのに対し、後の課題では、パズルのピースを3個ほど使った段階で、失敗したと判断するようになったそうです。
課題で経験を経ることにより、「見切り」が早くなるわけですね。しかも後の課題では、作るべき図形の参照回数も増えていったそうです。ヒトは、学習によって、目標と現状のマッチ度を明確化し、段階ごとに評価を適切に行う構えができていくようです。
(4)徐々にひらめいている
なぜかわからないが、今まで散々苦労していた問題が突然に解けてしまう経験はあると思いますが、どうやら、実際には突然ひらめくということはないようです。
Tパズルの研究からみても、制約に合致した置き方がどのように変化したかを見てみると、制約を逸脱した置き方は後半の方が多くなっているそうです。
(5)失敗が見方の変化を促す
チェッカーボード問題とよばれる難しいパズルがあります。
対角にある2つのセルを取り除いたこのチェッカーボードを、セル2つ分をちょうど覆う板を用いて埋め尽くすことが出来るかという問題です。答えは、「埋め尽くせない」です。
最初は2つのセルを取り去ったので、白は30セル、黒は32セルです。板は必ず白と黒のセルをペアにするので、必ず黒が2つ余ってしまう。よって埋め尽くすことはできないとなります。
これを解決した人は、だいたい以下の道筋をとおるそうです。
ここで大事なのは、何度も試行を繰り返し、いつでも黒が余ってしまうという失敗を重ねていくことだそうです。
エジソンは「私は失敗などしていない。1万通りのダメな方法をみつけただけだ」という言葉を残しています。エジソンは、洞察・発見が失敗を通じた学習であることに気付いていたのですね。
(6)まとめ
あるものごとについて、考える量・回数を増やさないと、イノベーションに至ることはできない点について、非常に共感を覚えました。制約を突破するアイデアは、試行を繰り返す上で、無意識的に進んでいることもあるようです。
「チャンスは準備された心に訪れる(Chance favors the prepared mind)」
皆様の素晴らしいイノベーションを期待しております。
最後までお付き合いいただきまして、ありがとうございました。