アイデア展開 VS 特許権(リセッシュ特許で実践)
こんにちは。nabです。いわゆる企業弁理士として中小企業に勤務しています。今回は昨日紹介したKaoのリセッシュ関連特許からアイデア展開を考えて、さらにそのアイデアが権利侵害する可能性について触れていきたいと思います。
創作者側のアイデア創出のブレイクスルーになればと思いますし、アイデアを出して事業展開する際のリスクの存在を認識していただければと思います👍️
①復習
昨日のKaOリセッシュの特許発明(特許第5695288号)は、既存香料(例えばヌートカトン)が、特定のにおい成分であるトリメチルアミン 及び ピリジンを低減させるというの新たな効用を発見したことでした。そしてこの特定のにおい成分は、魚の腐った匂いがするとのことです。
②アイデア展開検討
このポイントからのアイデア展開を考えてみます。リセッシュは主に衣服に付着する匂い成分(トリメチルアミン等)を除去するものでしたので、このトリメチルアミン等の特定物質は、衣類の他についていないかなーみたいなことを考えてみます。するとこのトリメチルアミンは、魚が鮮度を失った場合にも発生するものであるとのことです。
https://team-supporter.com/4044.html
ということは、魚を調理したり、食したり、運んだりする際に、トリメチルアミンが手に付着して、手が魚臭くなってしまう可能性があるということになります。それならハンドソープとか、石鹸に今回の香料成分(例えばヌートカトン)を添加して、「魚の匂いがとれるボディソープ」が出来るのでは??みたいな風なアイデアを考えることが出来ます。おお!実際に下記に同じコンセプトの商品が発売されていますね。ニーズはあるのかも💡
https://team-supporter.com/4044.html
③特許権(5695288号)VS アイデア
今回は、他人の特許権からアイデアを創出していますので、今回のアイデアが、対象特許(5695288号)と権利抵触が無いかを確認してみます。こちらは、今回対象とさせてもらったKaoの特許権の請求項ですね。
特許権は、特許公報中の「請求項」の記載によって、権利範囲が定められています。
今回対象の特許権は①消臭剤組成物用いてトリメチルアミン等を低減させる方法であること、②ヌートカトン等の香料成分であること③成分添加量が0.001~5重量%であることです。
今回の展開アイデアである「魚の匂いがとれるボディソープ」には、当然①香料成分(ヌートカトン)が添加されていますし、「魚の匂いがとれるボディソープ」は、②消臭組成物を用いてトリメチルアミンを低減させる方法を用いるものです。③添加量は確定していませんので何とも言えませんが、今回のアイデアは、残念ながら、この特許権を侵害してしまう蓋然性が高い‼️ということになってしまいますね。。
それでも、このアイデアを実施していきたい!!となった場合、知財サイ ドとしては、この特許を無効化するための証拠を探す等、創作者さんの実施に向けたサポートを行っていくことになります。
このように特許権は、対象製品そのものの実施(リセッシュ)を抑止するだけでなく、その周辺の技術思想(匂い抑制石鹸のアイデア)の実施をも抑止する効力があります。
新しいアイデアを創出し、それを実施しようとするならば、まず特許調査で、周辺技術の情報を収集し、自分のアイデアが他社の特許を侵害していないかを検討することで、次の対策が生まれてきます。
記事に最後までお付き合い頂きましてありがとう御座いました😆少しでも、特許、知財の世界に興味を持って頂ければ幸いです💡
※今回の侵害判断はあくまで、特許権の効力やその概要を分かりやすく伝えるための簡易的なもので、今回対象の特許公報のみを参酌しています。実際の侵害判断は、今回対象の特許公報以外の特許公報や審判情報などを参酌することとなり、今回とは異なる見解となる場合がありますので、その点は留意してください。