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【料理エッセイ】蒲田の銭湯でソフトクリームを頼んだらギュッとしてたよ。で、友だちと羽根つき餃子を食べて、平成一桁生まれなカラオケしたよ。楽しかったよ。
友だちと蒲田で会うことになった。羽根つき餃子が有名なお店があるとかで、夜、そこへ行こうということになっていた。
その日、わたしは昼過ぎから暇だったので、普段、蒲田に行かないし、せっかくなら堪能したいと思った。調べてみると、散歩の達人のページが出てきた。例の羽根つき餃子についても載っていた。
見てたら、銭湯が有名らしい。なんと通常の価格で入れるにもかかわらず、基本が天然温泉というから驚き。しかも、黒湯と呼ばれる真っ黒なお湯が特徴で、海藻由来のミネラル成分を含んでいるとか。
とりあえず、駅から近い「ゆ〜シティー蒲田」というお店に行ってみた。なるほど、たしかに真っ黒なお湯で気持ちがよかった。
その後は喫茶店にでも行こうとかと思って、借りていたタオルを番台に返そうとしたら、上の階から歌声が聞こえたきた。
「なにかやっているんですか?」
「休憩所にカラオケがついているんです。ステージもあって、イベントもやっているんですよ」
「へー。そこで少し休んでもいいですか?」
「どうぞどうぞ」
ということで、階段を上がっていくと、常連と思しき紳士淑女の方々が楽しそうに盛り上がっていた。焼酎のボトルがずらりと並んで、煮込みとかポテトとか、いかにも宴会なつまみを肴によろしくやっていた。
さすがにその中には入っていけないので、ちょっと離れた先に座ることにした。一応、なにも買わなくてもいいらしい。ただ、お風呂上がりだし、ソフトクリームが食べたくなって、注文してみた。
すると、
「見た目変わってもいいですか?」
と、妙なことを聞かれた。どういう意味かわからなかったが、とりあえず了解してみた。
やがて、厨房から、
「きゃー! 平らになっちゃったー」
と、悲鳴が上がった。まもなく、運ばれてきたソフトクリームはギュッと平らになっていた。
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なるほど、このことだったのか笑
聞けば、その方、ソフトクリームが苦手らしく、いつもこんな風になってしまうとか。それはもう、逆にある種の技術なんじゃないかと感心しつつ、喜んで受け取った。無論、味に変わりはなかった。
カラオケは1曲100円なのだが、絶えず、誰かが歌っていた。ドンキホーテの店内で流れている歌とか、サザンとか、ザ・ピーナッツの『恋のバカンス』とか、ケツメイシとか、脈略がなくて面白かった。
その中で唯一、わたしの知らない曲が流れた。志賀勝の『男』という歌で、パンチパーマのおじさんが渋さたっぷりに歌い上げていた。なにせ、歌詞(特にセリフ)が強烈で度肝を抜かれた。
(セリフ)「あのなぁ 人間ちゅうのは 義理をかいたらあかん ええか兄ちゃん 人は心や 我口先ばっかりで ええ格好さらしよったら 俺もしまいにおこるで」
なんだか説教されているみたいだった。その場でネット検索したら、想像を超えるいかつい雄々しい志賀勝さんの写真が出てきてビックリした。
映画『仁義なき戦い』に出ていたらしいけど、こんな人ばかり出ていたので、どの役なのかピンとこなかった。この時期の俳優と現代の俳優を比べると同じ人種とは信じられない。
休憩所には漫画もたくさんあって退屈しなかった。こち亀が100巻ぐらいあったので手に取ってしまった。一応、わたしはこち亀を全巻持っているので、家に帰ればいつでも読めるというのに、好きだから、つい読んでしまう。
ちなみに36巻がお気に入り。若者の訃報をその子の実家に伝えるため、長崎出張へ出かける両さん。でも、すぐに支給されていた経費をぜんぶ飲み代に使ってしまって……。笑いあり、涙あり、こち亀の魅力が丸ごと詰まった大傑作! 読み切りなので、この巻だけでも満たされます。
こち亀にハマった小学三年生から何度読み返しているかわからない。なのに、また、銭湯で読んでクックックッ。シクシク。ちゃんと心を動かされるんだから、本当、世話ないよね。
あと、コナンも70巻ぐらいまで揃ってて、一応、みんな大好き津川館長の話が収録されている第10巻をチェックしておいた。これはアニメが公式YouTubeで無料公開されているので、知らない人はぜひ見てね。津川館長、めっちゃ怖いから。
コナンを全巻集めるのは早々に断念してしまったけれど、アニメは映画も含めて、ずっと追っている。最近はTVerで配信してくれているので、とても助かる。
たまに浦沢義雄大先生のとんでも脚本でコナンのアニメはネットを騒がせるけれど、個人的にはそういう大胆な演出も許容している度量の深さにグッとくる。
さてさて、そんな風に休憩所を堪能していたら、友だちと待ち合わせの時間になってしまった。飛び出し、銭湯の前の道を真っ直ぐ歩いて行ったら十分もかからず、目当てのお店「春香園」に到着。友だちと合流した。
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さすがは人気店。1時間で退席してほしいと頼まれた。
そうなったら、もったいぶってる場合じゃない。ビールに餃子に食べたいものをいきなりダダッと頼んでしまった。
さすがは名物、羽根つき餃子は迫力満点!
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もちもちの生地に、パリッとした焼き加減。噛めばジューシーな肉汁が口いっぱいに広がって、幸せ以外のなにものでもない。
写真は撮ってないけど、豆苗炒めも最高だった。豆苗なんて、スーパーで買えば安いんだし、家で作れる料理って感じがするけど、そうじゃないんだよね。シンプルな炒め物ほど火力に差が出る。こんなにも美味しくなるなんて! と驚けるから、高いと思っても頼んでしまう。
他にも麻婆豆腐とか小籠包とか食べているうちに、タイムリミットが来てしまった。本当は炒飯かラーメンも行きたかったけれど、泣く泣く、退店。どうしたものかと途方に暮れた。
先述の散歩の達人をもとに、友だちとバーボンロードを彷徨ってみた。でも、入りやすいお店は満席で、空いているところはプロっぽくて、わたしたちではとてもじゃないけど太刀打ちできそうになかった。
大通りに出るとカラオケ屋があった。昼間、銭湯で人が歌っているところを見まくっていたせいだろう。なんだか歌いたくなってしまった。
最初、安さに惹かれてまねき猫に行くも部屋が空いていないと言われてしまう。会員割引で25%オフのカラオケ館はすんなり入れた。嬉しい。
それなりにお腹は満たされていたけれど、カラオケっぽいパーティーメニューを注文した。テンションが上がる。
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まずはコナンの主題歌から小松未歩の『謎』を選曲。友だちは同級生なので当然盛り上がる。そこからいきものがかりの『気まぐれロマンティック』とか、平成一桁生まれらしいものを網羅していった。
たぶん、昼間、銭湯で歌っていた人たちもこういうノリで楽しんでいたんだろうなぁ。そんなことを思いつつ、志賀勝『男』が響く世代って半端ねえなぁと、改めて歴史の奥深さを感じた。
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