ICUの環境つくりに関わるデザイナーという職業やデザインについてのお話し
さて、デザイナーという職種が、ICUの新設や改修計画に携わる事がまだまだ珍しいのが日本の現在だと思います。。
私の周囲にも、様々なデザイナーがおり、ヘルスケア、、やメディカル、、、といった事に携わっているデザイナーはおりますが、ICUに関わっているというデザイナーは、あまり見たことがありません。
臨床現場の方々も、そういった意味で、デザイナーという職種についてあまり詳しい方はいらっしゃらないと思いまして、今回は、デザインいう職業について簡単にお話しをします。
ちなみにですが、医療の方々とお付き合いをさせていただくとよくわかるのが、デザインの仕事って、とても医療の仕事と近しいのではないかと思うのです。
どちらも「人」を「みる」仕事なんです。
医師の場合は「診る」という漢字を使いますし、看護師の場合は「看る」という漢字。いずれも直接患者さんをみます。
デザイナーの場合は、物や環境を通して「人」をみます。漢字を当て嵌めるとしたらとりあえず「見る」でしょうか。
我々デザイナーは、結果として製品や空間のデザインを行いますが、中心は、全て人間です。
住宅の場合は、そこに住う家族を見ます。家族間の関係性や家族と近隣の関係性、親戚や友人など様々な人間の関係性から、住宅という環境をデザインしていきます。
飲食店の場合もそうです。店主と客の関係性、客同士の関係性、スタッフと道具や厨房、客席との関係性などが根本にあり、その関係性をデザインしていきます。ですので、結果として「ある」製品や空間を通して「人」を「見る」のが我々デザイナーの仕事となります。
また、デザインとは、直感的に感じた感覚を数値化したり、言語化したり、カタチにしたりする仕事でもあります。
これは、臨床推論と近しいのではないかと日頃感じています。
感覚的に、何かおかしい、、、違和感がある、、、、といった感覚を発見し、それに対して、知識や経験を使い、問題や課題を視覚化し共有することで、目標値を明確にしていきます。
そういった仕事のプロセスも含め、とても近しさを感じるのです。
昨今こういったデザイナーの考え方や取り組み方法を取り入れる企業も多く出て来ています。
デザインシンキング(デザイン思考)という言葉が巷に溢れていますが、デザイナーの「考え方」や「取り組み方法」を取り入れて、企業内の風通しを良くしたり、プロジェクトを取りまとめたり、企業力、スタッフ力の育成含めて活用さたりしています。
具体的にどんな「考え方」かというと、、
デザイナー という職業は、様々な職種の方々と仕事をしますが、どんなクライアントと仕事をしていても共通して行っているのは、、まさに先程ご紹介した、
「感覚から発見し、問題や課題を探り出し、理想の方向へ舵取りをし、見える化する」
という事です。
デザインという言葉が「形」や「色」「素材」などを総称していることは、皆さん日常生活でなんとなく理解されていると思いますが、その「形」や「色」「素材」という製品や空間、環境は、全て、事前にある問題や課題を解決しようとした結果の「状態」であり、「見える化」されたモノなんです。
よく勘違いをされるのが、デザイナーの職業は「格好良いもの、美しいもの」を作るのが仕事であると思われている方が多くおりますが、「格好良い、美しい」は、全体の一部でしかありません。その「格好良いもの、美しいもの」である事以前の「なぜその形や色や素材になったのか?」がとても大切なことなのです。もちろん「格好良い、美しい」は、とても大切な事なのですが、、。
そして、見える化したものを評価・精査し、またその問題や課題を発見していく事を繰り返していく事もとても重要です。
プロジェクトが終わったらおしまい、、ではなく、プロジェクトが終わったところから、また始まるのです。
ぐるぐると繰り返し繰り返し続いていくわけです。
ですので、デザイナーの仕事とは、体感、体験を元に、対象の問題や課題を発見し、最適な解決策を探り、見える化(具体化・共有)する事なのです。
その結果として、様々な製品や、環境があるわけなんです。
次回は、デザイナーの仕事について、僕が考え日々実践をしている「物の関係性」のお話しをします。