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好きな人に好きと言う
福岡からの帰路、兵庫県のふく蔵さんに寄った。知人が展示していたので、見に行ったのだ。
酒蔵を改造したギャラリーショップはどっしりといい雰囲気。展示は広い店内の、いちばん奥で開催されていた。
展示スペースに足を踏み込むと、途端に動悸がはげしくなったのが分かった。心なし瞳孔が開いたような気もする。興奮しているのだ。
「美しい…」
並べられた作品を見てシンプルにそう思った。彼女の作品を見るのは、これが四度目だ。初めて見たのは、6年前に開催された松本クラフトフェア。パートナーの学校の先輩として紹介された。夫婦でクラフト作家として生計を立てているらしい。
その時は「クラフトってなんだろう」くらいの理解度だったが(今もそんなものだが)、彼らの作るもののクオリティが高いことは、素人目でもすぐにわかった。圧倒的な“品”が、そこにはあったから。初めて見た時から、私は「美しい…」と見惚れていた。
だけど、「自分には相応しくない」「自分では持て余すだろう」と考え、手にとることはなかった。クラフトだから使うのがいちばんとは知りつつ、これまでは“見てるだけ”に専念した。
そんなことを3回繰り返し、自分に勿体なさを感じてた。いいと思ったものには触れず、そこそこだなと思うものを使ってる私を。(私はユニクロとかセカストとかで、安価なものを手に取りがち。)それって、「買い物で自己評価してる」ということだ。
そういう買い物の仕方は、売り物やお店に対しても失礼だろう。それならと、とりあえず買うならどの子がいいだろうかと展示品から探してみることにした。茶色いがま口を手にとった。暫く待っていると、がま口が猫のようにゴロゴロ鳴いてる……ような気がした。
私は「あれ?あんなに気高い雰囲気と思ってたのに、意外と懐っこい?」と驚き、じっとがま口を見つめた。美しさからよそよそしさを勝手に感じていたが、手に持つと「馴染む」大きさであり肌触りだった。
私は購入を決めた。レジに並ぶと、ふく蔵さんでは感謝祭を開催してたそうで、帰りに揚げ饅頭をもらった。
揚げ饅頭を手に下げながら、私は高揚した声で隣にいるパートナーに伝えた。
「好きな人に好きって言えたみたいな気持ち」だと。
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3soku(さんそく)
自然素材「竹・木・綿」から作られた日用品のブランドです。綿の場合、手紡ぎ、草木染め、手織りの工程を通して生地を作られています。がま口の他にポーチやブックカバー、ストールなど幾つかのラインナップが揃います。各地で展示会を開催されているので、お近くの際ばぜひ覗いてみてくださいね。
http://www.3soku.jp/index.html
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