#6 ほら、またぼくを置いていく。
突然の入院から早3週間。まだ退院までは時間がかかりそうである。
ぼくの病気の場合、症状が多岐に渡ることもあり検査することが山ほどある。だからまあ、入院期間が延びるのも仕方あるまい。
だがさすがにここまで長くなると、孤独感というか取り残されてる感というか、置いてけぼり感を感じてくる。
コロナの影響で面会禁止でお見舞いに来てもらえないし、仕事で「ここどうすればいい?」っていう連絡もだんだん無くなってきたし。でもそこじゃない。ぼくが置いてけぼり感を1番感じるのはそこじゃない!では何なのかというと、、、
大部屋の他の人たちが、どんどん退院していくこと。
退院していくことは大変喜ばしいことだ。だって治ったのだから。おめでとうございます。これからもお大事に。話を聞いていると50〜60代の方が多くてみなさんバリバリ働いているご様子。役職に就いている人もいるだろうしそんなに長く休んでもいられない。専業主婦の妻に大学生の子どもがいれば尚更だ。彼らは愛する家族を露頭に迷わすわけにはいかないのだ!(そんな切羽詰まった人なんてそうそういないだろうが。)
それに比べれば、20代独身男性なんて随分お気楽なものである。健康保険からいくらか補助が出るし、ぼくの場合は難病なのでさらに補助が出る。ぼくの住む立川市には独自の給付制度まであるらしい。おまけに生命保険に加入しているからそこからもお金が出る。例え入院期間が半年、1年になろうと貯金を喰い潰すなんてことにはならない。
でもやっぱり羨ましい。普通の生活に戻りたい。いーなー、退院できて。ぼくも早く退院したいなー。身体は健康なのになー。てか絶対ぼくの方が健康だし。だって若いから。毎朝血圧やら血糖値やら測ってるけど、絶対ぼくの方が数値はいい。だって若いから。コレステロールとか肝臓・腎臓の数値も尿酸値も、視力も聴力も健康診断の数値は全部ぼくの方がいいに決まってる。だって若いから!退院後だってみんなは1週間後とかに呼ばれてるっぽいけど、ぼくはそんなにすぐには来なくていいらしい。今のとこ副作用もないしそこまで詳しく管理する必要はないらしい。なぜかって先生も言ってた、だって若いから!!おい!ぼくの方が健康で丈夫だぞ!だって断然、若・い・か・ら・な!!!!
ちょっくら思考が暴走してしまいましたな。そーりー、そーりー。
まぁどれだけ不平不満を並べたところで、まだぼくはそのタイミングではないわけで。
ぼくはチェスの駒みたいなもので、駒を動かす神様から「まだ動くときではないのだ」と未だに動かされないでいる。
ぼく:あのー、神様?そろそろ飽きてきますよ、動かさないと。
神様:…。
ぼく:もしもーし、動かさないなら、勝手に動いちゃいますよー?笑
神様:…。
ぼく:…、動かすときは早めに言ってくださいねー
…。
ぼくの言葉が届くのは、まだもう少し先らしい。
今日はお隣さんが退院だ。
おめでとうございます。
お大事に。
お気をつけて。