見出し画像

『さくらももこ展』は、思った以上にさくらももこ展だった

こんにちわ。
今回は森アーツセンターギャラリーで開催中『さくらももこ展』の記事です。

ちびまる子ちゃんでお馴染みのさくらももこさんの展覧会に行ってきました♪

小さい頃、通っていたピアノ教室にちびまる子ちゃんの漫画が置いてあり、レッスンのたびに読むのが楽しみでした(ピアノの才能はまるでなかった)。中学生でさくらももこさんのエッセイに出会い、その軽快でユーモア溢れる文章の虜となって、著書はほぼ全て読破(その後も折に触れて読み返し、毎回面白さに脱帽する)。大人になってコジコジを読み、時間に追われる毎日の中で、肩の力を抜かせてもらったのを覚えています。

さくらももこさんといえば、エッセイを中心とした漫画や文章が有名ですが、最近「絵もすごくないか…??」と思い始め(遅い)、ちょうど展覧会が開催していたので、えいやっと観に来ました。

六本木なんてくるの久しぶりなんで緊張しますね…


さくらももこ展


展覧会は、漫画の原画やエッセイの原稿、カラー画を中心に構成されています。
デジタル化が進んだ現代では、非常に貴重な手書き原稿。下書きや修正、トーンの跡が残っており、作業の苦労が垣間見えます。
カラー原稿は予想通り、細かく美しい色使いで着色されており、デフォルメされた人物とは裏腹に、植物の葉や花弁一枚、天井の木目、服の模様の一つまできれいに描かれていました。

原画の横に印刷された漫画が並んでいたのですが、やはり印刷物はナマの原稿には敵わず、きれいな着色がつぶれて印刷されていたことが分かります…

旅行好きで、世界各国の民芸品をコレクションしていたというさくらももこさんは、絵にもそのデザインを取り込んでおり、モザイク画・外国のお菓子箱の装丁・トランプ・タロットカード・浮世絵・曼荼羅を意識した作品をたくさん描いていました。

また、ちびまる子ちゃんでは、漫画を意識したシンプルで可愛いデザインが多かったものが、コジコジになると書き込み量が格段に上がり、漫画を越えた芸術作品として質の高いものになっています。


大きな作品から小さいものまで


「のんきにいこうよ」 でも、本人は全然のんきじゃない


さくらももこさんの作風は、どれもゆるやかで脱力して、それが味わいとなり作品の魅力となっています。漫画の中でも「のんびりやろうよ」「ゆったりいこう」とさくらさん自身のメッセージが込められているのですが、本人は全然のんびりしていません。

展覧会では、漫画やカラー原稿のほかに、エッセイの原稿(手書き)雑誌ふろくのデザイン(かるた・全て手書き)アニメの台本(手書き…)アニメ映画の脚本(手…)、さらにその漫画化と、おびただしい数の作品を一人で創作されていたことが分かります。

さらに、雑誌の編集長、ラジオパーソナリティ、不定期連載の新聞、作詞と、多岐に渡る仕事量。脱力した癒しのイラストを描いているにも関わらず、本人はまさに仕事の鬼。
イラストも、色鉛筆やコピックで着色したものから、ちぎり絵だったり(りぼんの扉絵・本当にきれいだった)、エッセイの表紙絵にボタンやサプリメント(?!)を使ってみたり、フェルトや貝殻でデザインしてみたり。さらに、目次やタイトルなどは、印字ではなく自分の字で書きこんでみたりと、とにかくこだわりが強く、細部にまでさくらももこさんの魂がこもった作品になっているんです。

なにかのエッセイで、漫画家としてデビューした時に「私はこれまでぐーたら過ごしていたけど、これからは猛烈に働くことにする」と決意した という話がありました(『ひとりずもう』だったかな…)

「さくらももこの手引き」というメッセージの中では「大好きなことを職業にできた」と書いており、とにかく自分の好きなことに打ち込んだ作者の情熱が、観ている側にもまっすぐ伝わってきました。



かわいい♡


「さくらももこ」という人間が、そこにいる


展示作品は他にも、小学校の文集や(たまちゃんと並んで載っている、泣ける)息子さんと合作した絵本も展示されています。

さくらももこさんの作文は、小学校のときから評価が高かったそうで、文集を読んでいても「小学校6年生とは思えない…」と舌を巻くほど、洒脱な文章を書いていました。

また、息子さんと一緒に製作した絵本も展示されています。あの忙しい中、そんな時間いつあったんだ?!と驚いてしまうのですが、息子さんの提案にのり、途中で飽きて頓挫することもなく、話が破綻しないよう修正しながら、立派な作品として完成させていました。
息子さんに関する展示も多く、さくらさんらしいユーモアやシュールさを残しながら、本当に愛情深くこどもに接していたことが、展覧会を通して伝わってきます。


今回の展覧会、さくらももこさんの作品を通して、さくらももこさん自身がそこにいるかのような息遣いが感じられます。たまちゃんやアニメ声優のTARAKOさんが展覧会図録に寄稿して、さくらさんのことを語ってくれていたり、ラジオパーソナリティの音源が流されていたり(漫画そのままの喋り方)、創作への情熱、息子さんへの愛、身近な人々へのユーモアでシュールな視点が、「私はこんな人間だよ」と言っているかのように、展覧会を通して伝わってくるんです。
展覧会は、息子さんの挨拶で始まります。「興味の赴くまま、直感で生きたさくらももこという人物を知ってほしい」という一文を表現するかのように、さくらももこさんの姿が生で感じられるような、素晴らしい展覧会でした。

クリエイター、特に漫画家は早逝される方が多いイメージです。それだけ身体を酷使し、身を削って素晴らしい作品の数々を生み出してきたのでしょう。
展覧会を通してさくらももこさんに触れ「もうこの世にはいないんだ」と、寂しく思う反面、作品を通じていつでも会えるということを認識した展覧会でした。

開催期間が2025年1月5日までということで、一ヶ月を切りました。
興味がある方はぜひ行ってみてください。作品が小さいため、近くでじっくり鑑賞したほうがいいです。人の少ない平日に行くことをオススメします。

読んでいただきありがとうございました。

さくらももこ展
東京・森アーツセンターギャラリー(全国巡回中)
2024年10月5日〜2025年1月5日
10時〜18時(金曜土曜は20時まで)
チケットは日時指定制
(オンラインチケット・イープラス・ローソンチケット・アソビューで購入可)



いいなと思ったら応援しよう!