SBNR Design Labo を立ち上げます
2020年もあと10日程だ。今年一年を振り返るとコロナで世界中で人々の価値観が大きく変わった一年だったと今更ながらに実感する。
そんな中、SBNR(Spiritual But Not Religious)をめぐる社会環境が大きく変わってきたことを実感する日々だ。
2014年にSBNRの概念に出会い(南カリフォルニア大学 日本研究所 ウィリアム・ダンカン教授より伝授)、それ以降、僕自身のライフワークとして日本におけるSBNRを実証してみようと様々なプロジェクトを展開してきた。
当初、SBNRはまだ新しい概念で、しかも米国では宗教的な観点から社会の価値観の変容を表す指標であり、それが日本におけるクールジャパン現象やインバウンド現象と関連している可能性については誰も想定していなかった。しかしSBNRを調査するにつれ、次第にその関連性は次第に揺るぎないものに変わっていった。
その過程で数多くの実験を行った。その都度、一緒に実験を行うパートナー(政府、自治体、企業、クリエイター)にSBNR現象の説明をし、了解を得ながら少しずつ進めていった。そして気づけば6年が経過した。
日本人がプロダクトアウト思考で見ている日本文化とは別の観点でSBNR層は日本文化を見ており、そしてその同心円に共感部分がある。実験を進める中でこだわった点は、仮説→実験→検証という手法を踏襲し、一つずつ課題をクリアしてゆくといったステップの刻み方だった。
4つの指標がSBNR層に特徴的にあることがわかってきた。それは「心と体のバランス」、「ネイチャー思考」、「人徳・大義・誠実を尊ぶ」、「ポスト資本主義」である。
福島県庁との「ダイヤモンドルート」、愛媛県庁との「お遍路ブランディング」、スポーツ庁との「武道ツーリズム」、鶴岡市との「山伏ガストロノミー」、石垣市との「アイランダーサミット石垣」など全ての活動をSBNRを軸に展開してきた。
そして今年、パンデミックにより社会全体がSBNR化してきたかのような様相となった気がした。これまでと同様にプロジェクトのプレゼンテーションや、セミナーや政府との会議で SBNRの話題を出してきたが、今年は特に反応がビビッドであった気がした。そして同時にニーズを実感した。
今こそ社会に貢献すべきではないかと思い始めた。これまでの成果をしっかりと換言し、そしてSBNRに関心がある人々を巻き込みながら、日本の社会が少しでも良くなってゆくために一助になりたいと思い始めた。
そこで、一つの個人的なプロジェクトとして「SBNR Design Labo」という名称で、SBNRデザインに特化した取り組みを立ち上げることとした。
目的は三つある。
「SBNRの未来戦略化」
1、SBNRの概念を元に、より精度の高い文化経済戦略として磨きあげる
「SBNRのジブンゴト化」
2、SBNRを軸としたプロジェクトを共感者と共に立ち上げ、成果を出し、関係者自身のジブンゴトとしてオービットさせてゆく
「地球社会に貢献する」
3、自然観が背景にある日本文化を海外からのSBNR視点で再文脈化し、より良い地球社会づくりのポジティブインパクトを起こす
そして、まずはSBNRに関する情報を整理することから始めた。具体的には、「SBNRとは何か?」、「日本にとってのSBNR」、「SBNRのプロジェクト事例とその特徴」である。
本当は本を執筆し、整理したかったが、時代の変化が早すぎるので、まずはオンラインで公開してゆこうと思う。
無料でノウハウを公開することに対して、中には勿体ないという人もいたが、僕の考え方は逆だ。SBNRデザイン思考を推進することで、より社会は良くなってゆくと思っている。少なくとも国内に1000人くらいのSBNRプロデューサーが育つべきだし、SBNRを軸にソーシャル・デザインや地域プロデュースを展開する企業が100社くらい必要だと考えている。これまでの時代のように「日本文化はこうだ!」と日本人だけが考えて世界に売り込んできた前時代的な思考をアップデートし、世界から日本がどう見られているか、そして日本はどんなインパクトを作ってゆけるかを国民総出でデザインしてゆく時代がこれからであると思っている。
兎にも角にも、世の中は急速に「問いの時代」に突入している。本質を見極めながら地に足をつけて歩いてゆくべしと考えている。
「スピリチュアリティー(人徳、誠実、価値観、哲学、精神性)」が重要な社会になると考えている。日本から少しでも良いインパクトを世界に起こしたいと考えている。
SBNR Design / バリューデザイナー XPJP inc.
渡邉賢一