ジャズ記念日: 8月4日、1958年@ニューヨーク
August 4, 1958 “Summertime”
by Miles Davis & Gil Evans Orchestra
at 30th Street Studio in New York for Columbia (Porgy and Bess)
都会的な蒸し暑さのあるニューヨークの夏に、曲名の通り南部を舞台としたオペラ、「ポーギーとベス」からの偉大なガーシュイン兄弟が手掛けた有名曲。その題名から夏に聴きたくなる一曲。
同オペラ曲で構成されたジャズアルバムをマイルスが名編曲家のギルエバンスと組んで制作したのが本作。
白人嫌いなマイルスといえども才能を認めて共演した数少ない一人が「音の魔術師」と形容されるギルで、曲のアレンジ手法の影響を受けたとされる。マイルスの物悲しげな音色に寄り添った伴奏をするオーケストラの展開がドラマチック。
マイルスはビバップ、ハードバップに続き、今作ではクラシックにも近づき、ジャンルを跨ぐクロスオーバージャンルの最先端を走り続ける。マイルスはアドリブは最小限に控えて原曲メロディーに忠実に演奏するが、それはギルがマイルスを念頭にアレンジを施しているからで、マイルスもその意図を汲んでの結果と推測する。
アドリブの余地が少ない中でも、その音色と表現で孤高の存在感を示すマイルスの凄みは、この時点でも「帝王」に相応しい。ポールチェンバースによる歌心あるベースラインを軸に、ギルが繊細なアレンジを施して音を重ねることで旋律の展開を促進していて、2:25からさりげなく主旋律の裏側にチューバが加わることで終焉に向けての盛り上がり効果が生まれている。
アルバム自体は複数日に跨って収録されているから、オーケストラ編成でもあって、かなりの予算が付けられていたものと推測する。この作品が高く評価され、商業的にも成功したからこそ、二人による続編的なクラシックを題材とした「アランフェス協奏曲」を含む「スケッチオブスペイン」という大傑作が翌年に生まれることになる。
因みにドラムは、アルバムでは、フィリージョージョーンズとジミーコブが起用されているが、マイルスは、この二人をどう使い分けていたのか、がとても気になる。パッと聴いたところ、ドラマチックなドラムの存在感をフィリーに求めて、バラード的な情緒さとオーケストラとの調和感をコブに割り当てているように思われる。3曲目”Gone”のフィリーのダイナミズム、10曲目”It Ain’t Necessarily So”のコブのオーケストラと一体化したグルーブ感は、二人の個性が最大限に発揮されていて起用も秀逸。マイルスとギルは事前に相談したのだろうか。
録音はコロンビアで頻出のマンハッタンにあったスタジオ、通称”The Church”。広々としたスタジオだけあって、このようなオーケストラ録音も実現可能だった。
ポーギーとベスから生まれた他のスタンダード曲は以下の通り。
そして、ガーシュイン楽曲に興味を持たれた方は、こちらもどうぞ。
最後に、”The Church”とマイルスの演奏に興味を持たれた方は、こちらもどうぞ。本作の約半年前の作品で、ベースとドラムも本曲と同じ構成です。