ドライブ・マイ・カーを見た
色々賞を取りまくってて話題になってる映画である。日本映画初のオスカーもワンチャン……と言われているがはてさてどうなるか。こんだけ受賞ラッシュをしていると流石に気になるので、TOHO系列でやってるなら見るか〜くらいに思っていたらシャンテでやってるらしいので久しぶりに日比谷まで足を伸ばして見てきた。シャンテに行くのは大学時代以来だから、おそらく4年ぶりくらいだと思う。
平日の真昼間にもかかわらずしっかり満員だった。なんのかんの半年近く前の映画なので、都内でやってるのはシャンテ含めて数件っぽかったし妥当なところか。普段はガラガラの映画館でガラガラの上映会ばかり見ているのでいまいち座席は窮屈に感じた。椅子も小さめだったような気もする。
さて、肝心の感想ではあるが、素晴らしかったの一言に尽きる。ただ、万人に勧められるかというとそういう映画ではないな、と思う。話の本筋自体は派手なものではないし、描写が非常に丁寧なこともあって進行自体は非常にゆっくりとしたものだ。その上で、上映時間が179分もある。『アベンジャーズ:エンドゲーム(181分)』といい勝負である。痛快な娯楽作品であり、インパクトのあるシーンが連続するあちらに比べると、やはりどうしても退屈に感じてしまう人は多いだろうと思う。なので、こういう映画を見慣れていない人にはあまりおすすめは出来ない。ちなみにこの上映時間のせいで合わない椅子にすごく長い時間拘束されることになり、尻がすごく痛いことになった。
本作は村上春樹の短編小説が原作である。短編小説の癖に179分って一体どんな短編小説なんだ……と思われるかもしれないが、あくまで同名の短編小説は軸になっているだけであり、同じ短編集に掲載されたいくつかの作品の要素や、監督によるオリジナルの要素も多く含まれている。
私は原作を読んでいないので、どこまでが原作の要素で、どこまでが追加された要素なのかは正直わからなかった。ただ、脚本は本当に素晴らしい。この作品自体の物語に、チェーホフの『ワーニャ伯父さん』や、主人公の妻が語った物語が交差するその瞬間は、凄まじいという言葉以外で言い表すのは難しい。そうでありながら、村上春樹作品独特の雰囲気もよく残っていると感じる。まあ、私は村上春樹作品は高校の授業で読んだ『レキシントンの幽霊』を含めても片手で足りるくらいしか読んでいないのでその辺はなんとも言えないんですけども。
本作では西島秀俊の演技が絶賛されている。実際、この作品は彼の映画である。主演として圧倒的な演技を見せている。ただ、個人的にはそれと同じくらいに岡田将生の演技が印象に残った。終盤に差し掛かるあたりからの長台詞からの流れは圧倒的である。これは狙って作られているのであろうが、その瞬間だけは全てが彼を中心に動いているように感じた。そして、それに説得力を持たせるだけの演技を彼は実際行なっている。
全体を通して絵作りも美しく、見惚れてしまうようなシーンも多い。全てが非常に高品質にまとまっており、実に見事な映画だったと思う。今後の賞レースの結果も楽しみだ。