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年俸制とは結局何なのか
「年俸制」の意味を正確に理解している人は少なそうです。というか、わたしもよく分かっていませんでした。
ということで、年俸制って結局何なのかを整理してみました。
年俸制 = 1年単位で給与を決定すること
まず結論ですが、「年俸制」の言葉としての意味は、
年俸制 = 1年単位で給与を決定すること
これだけです。それ以上でも以下でもありません。年俸制という言葉には給与を年単位で決めるという意味しかないのです。
しかし、一般的に年俸制は「実力主義」「裁量労働」などの文脈とセットで語られることが多いと思います。これは、企業が年俸制の特徴を利用して(あるいは勘違いして)他の制度とセットで運用することが多いと思われます。
この記事では、年俸制にありがちな誤解や生まれやすい疑問について整理してみます。
年俸制は実力主義?!
年俸制は、一般的には成果主義・実力主義の評価体系とセットで使われることが多いようです。
しかし、前述のとおり年俸制はあくまで給与を決める期間の話であって、給与額を決める評価制度とは別のものです。年功序列な年俸制があっても何の矛盾もないわけです。
年俸制が成果主義や実力主義評価とセットで使われているのは、1年ごとに給与を改定すると明言することによって従業員の給与を上げ下げしやすいという企業側の思惑が重なっているためだと思われます。プロスポーツ選手の年俸改定などでもなじみがあり、受け入れやすいのかもしれませんね。
年俸制だから給与大幅ダウンもありえる?!
年俸制=実力主義のイメージから、年俸制だと1年ごとに給与が大きく変動するイメージがあるかもしれません。
しかし、年俸制だからといって従業員の給与を大幅に下げられるかというと、そうではありません。
例えば年収1000万円の人が翌年500万円になったとしたら、よほど合理的な理由がない限りは労働条件の不利益変更にあたり、裁判になったら負ける可能性が高いでしょう。
年俸制だからといって給与を急に下げてもいいわけではありませんし、逆に月給制だからといって給与を下げられないわけではありません。
年俸制も月給制どちらであっても、給与を下げる際には労働条件の不利益変更にあたらないかに注意する必要があります(急に上げる分にはだいじょうぶです)。
年俸制だと残業代が出ない?!
年俸制だと残業代が出ない、と勘違いしている方も多くいるようです。
中には、「年俸制なので働いた時間ではなく仕事の成果や実力で給与を決めます(だから残業代は出ません)」と採用ページに堂々と書いてある企業すらあります。
繰り返しになりますが、年俸制はあくまで給与の決め方であって、残業代をどうするかはまた別問題です。
年俸制であろうが、雇用契約を結ぶからには企業は従業員の労働時間を管理する義務があります。法律の範囲内で所定労働時間を定め、所定労働時間をこえた場合には残業代を支払う必要があります(36協定も忘れずに)。
所定労働時間をこえても残業代を払わないケースは、管理監督者である場合や裁量労働制を適用される場合ですね。
法律で定められた範囲で管理監督者もしくは裁量労働制を適用させる必要があり、年俸制だからといって残業代を支払わなくてもいいわけではありません。特に裁量労働制を適用できる職種は限られているので注意が必要です。
年俸制は年に1度の給与支払われる?!
査定によって年間賃金が1200万円になったから、1200万円を年に1回ポンと支払えばいいかというと、これはNGです。
労働基準法24条によると、「賃金は、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない」とあります。1年に1回のみの給与支給は法律で禁じられているのです。
年俸制だと賞与が出ない?!
これも関係ありません。
年俸制は給与を1年ごとに決める仕組みであって、その支払い方は法律を守る限り自由です。査定で定めた1年間の給与を年2回の賞与+12か月の月給で支払ってもいいわけです。
ただ、注意が必要なのは査定で定めた1年間の給与を下回ってしまっては契約違反となることです。
賞与は支給の弾力性が高く、業績が悪いときには支給額が減ったり支給されないことは一般的にあるかと思います。年間給与額を約束していない月給制なら(労働条件の不利益変更にならない限り)それで問題ないのですが、年間給与額を約束している年俸制の場合には業績が悪いからといって賞与が減額されるのは契約違反になってしまいます。
結局何が違うの?!
これまで整理してきたとおり、実力主義評価・残業代の支給有無・賞与の有無、いずれも月給制と年俸制の決定的な違いはありませんでした。
「じゃあ月給制と年俸制では何が違うの?!」と問われると、私見ではほとんど違わないと思います。
あえて違いを挙げるとするならば、年俸制の場合は提示された年収額が保証されることでしょうか。
月給制の場合は、年間給与額を約束しているわけではないので、合理的な理由があれば給与を上げ下げすることができます。理論上は1か月ごとに給与を変えることもできるのです。
一方で年俸制の場合は年間給与額を約束しているので、どんな理由があっても契約期間中に給与を下げることはできません(上げることはできます)。
なお余談ですが、以前「年俸制(査定年2回)」という求人を見たことがあります。1年間の給与額を約束した半年後に給与が下がる査定をしてしまっては契約違反では…と勝手にはらはらしました。上がるだけの査定なら問題ないですけどね。
さらに余談で、その問題を避けるために「半年俸制」「半期年俸制」としている会社もあるようですね。
以上のとおり、月給制と年俸制の間にほとんど違いはありません。年俸制だから実力主義・月給制だから年功序列というわけではなく、給与を決める期間と評価制度は別個に捉える必要があります。
もし、自社や転職先の企業が年俸制をうたっている場合は、言葉の響きからだけで決めつけずにその会社の評価や労働時間への考え方をしっかり見極める必要がありそうですね。
記事は以上です。最後まで読んでいただきありがとうございました!
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