推敲は文章の正しさよりも読者の感情の動きをみるとよさそう
文章を書いたら公開前に必ず行う「推敲」について、わたしはこうやっているよという記録がてらの紹介です。
文章の正しさは目的達成のための一手段に過ぎない
推敲の辞書的な意味は、「詩や文章を作る際、字句や表現を何度も練り直すこと(コトバンク)」です。
ではなぜ字句や表現を何度も練り直すか。それは、その記事で果たしたい目的を達成するためのはずです。
文章を世に公開する以上、何かしらの目的があるはずです。「⚪︎⚪︎について知ってほしい」とか「共感してほしい」とか「自社を良く思ってほしい」などなど。となると推敲は、これらの目的が達成されるかどうか?の観点で行うべきであり、単に誤字脱字チェックをすればいいわけではないことが分かります。
正しい文章になっているか、誤字脱字がないかはもちろん重要なことです。しかし、正しい文章それ自体が目的ではなく、その文章で果たす目的を達成するために正しい文章が必要、という順番なのです。
なお、表記の間違いや誤字脱字を修正することは厳密には推敲ではなく「校正」と言いますが、この記事では推敲と校正の使い分けはせず、文章を公開する前に読み直して修正することをまとめて推敲として扱っています。
読者の感情の動きに注目する
文章で果たす目的を達成できるか?を確認するためには、「読者の感情の動き」に注目するとよさそうです。文章の目的がなんであれ、読者が抱く感情を無視しては目的達成は叶わないからです。
以下は、わたしが実際に推敲する際に行なっているチェックリストです。ブログ記事を前提にしていますが、テキスト主体の発信全般に当てはまるかと思います。
その記事タイトルはクリックする気になるか
当たり前ですが、記事タイトルで読みたいと思ってもらえなければ読んでもらえません。ですので、想定読者がその記事タイトルを見てクリックする気になるか?をまずは確認します。
その際、クリックする動機を言語化しておくといいでしょう。例えば本記事のタイトルは『推敲は文章の正しさよりも読者の感情の動きをみるとよさそう』です。クリックする動機は「推敲は文章の正しさをみるんじゃないの?」といった疑問や「そうそう、分かる」という共感などでしょうか。
クリックする読者の動機や感情を言語化できないときは、何かがおかしいサインです。
タイトルが気になって読み始めた人を序盤でがっかりさせてないか
そうして記事を読み始めてくれた読者を序盤でがっかりさせないようにするのが次のチェックポイントです。具体的には、上述したクリックする動機を序盤で回収できているか、を確認します。
記事タイトルが気になって読み始めたのにタイトルと関係のない話題がずっと続いていたら、「期待外れの記事だな」と感じて読むのを途中でやめられてしまいます。記事タイトルが気になって読み始めてくれているわけですから、読者をがっかりさせないように記事序盤でその動機を回収できているかをチェックしましょう。
読者が感じる疑問を置いてけぼりにしてないか
文章を読んでいて感じた疑問が説明されないままだと、なんだかもやもやしてしまいますよね。もやもやの結果、読むのを途中でやめてしまうことだってありえます。
例えば今読んでいただいているこの記事では、「推敲と校正の定義がごっちゃになってない?」という疑問が生まれそうだったので、一つ目の段落で「校正と推敲の使い分けはしません」と断りを入れています。この断りがないと、読者が「これは校正のこと?推敲のこと?」と疑問を感じながら読み進めることになってしまうと思ったからです。
なお、この「読者に浮かんだ疑問を解消する」ことはけんすうさんの書いた以下noteの「論理構造について」の部分を参考にしています。
想定読者にとって読みやすい粒度の説明になっているか
「文章として正しいか」ではなく「想定読者にとって読みやすいか」としているのがポイントです。いかに文章として正しくても、想定読者にとって読みにくければ意味がないからです。
想定読者にとって読みやすいかどうかは、記事の内容をどこまで細かく説明するかの粒度によって決まります。記事で紹介するトピックの専門家が想定読者であれば細かな説明は不要ですし、逆にそのトピック初心者が想定読者の場合には細かな説明が必要です。
例えば今読んでいただいているこの記事の想定読者は「推敲を一度でも経験したことがある人」としているので推敲自体の説明は最低限にしています。推敲の経験がある人にとって「そもそも推敲とは」の説明をしても意味がないどころか邪魔になってしまうためです。
逆に、もし想定読者が「初めて文章を書く人」の場合には、推敲自体の説明をもっと手厚くしてあげたほうが読みやすいでしょう。
このように、「その説明の粒度は適切か」は想定読者によって決まります。筆者にとって適切と思える粒度であっても、想定読者にとっては読みにくい場合もあるので、客観的な視点で推敲するのが大事ですね。
企画の段階で想定読者と読後感を想定する
以上、わたしが行なっている推敲のポイントをまとめました。こうしてまとめてみると、良い文章かどうかは想定読者と文章の目的によって変わることが浮き彫りになったかと思います。
ですので、そもそも記事を企画する際に「想定読者」と「読後感(≒記事の目的)」を想定しておくと良さそうです。これらを定めることで、「想定読者にとってこの表現は分かりにくい」とか「この読後感を持ってもらうにはこの文章はいらない」などの、文章の良し悪しを測るモノサシが生まれるわけです。
逆にこれらを想定しておかないと、文章の正しさ以外にモノサシが生まれずに有効な推敲ができなくなってしまいます。
以上、わたしの推敲のやり方を紹介しました。最後までお読みいただきありがとうございます!!