悪の組織格付けチェック『ダイの大冒険』大魔王軍編
こんにちは、悪の組織愛好家のなべはるです。好きなヒャド系呪文はヒャダルコです。
さてさて、『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』の再アニメ化が決定しましたね。実に28年ぶりとのことで、これはアツい!今回は大魔王打倒まで描いてくれることを期待しています。
というわけで(?)ダイの大冒険 再アニメ化記念と称して、悪の組織格付けチェック『ダイの大冒険』大魔王軍編をやってみたいと思います。
今回の格付けチェックでは、「組織力・チームワーク」「トップの魅力」「採用力」の3つの視点でそれぞれ星5つを満点にして評価します。ストーリーのネタバレありまくりなので原作未読者はご注意を。それでは早速どうぞ!
組織力・チームワーク ★★★★☆
まずは組織力・チームワークです。個の力だけに頼らず、いかに組織として成果を出す仕組みになっているか?がポイントです。
◎ きれいなピラミッド型組織で指揮命令系統が明確
大魔王軍の組織を語るうえで外せないのは、なんといっても組織図をきっちりひいていることです。
きれいなピラミッド型組織
(ダイの大冒険 文庫版2巻 稲田 浩司 三条 陸)
上記のようにきれいなピラミッド型組織を構築しています。大魔王軍の幹部メンバーを会社の役職で例えると下記のとおり。めっちゃ会社っぽいですね。
ここまできれいな組織図を書き、監査役まで配置する悪の組織は、後にも先にも大魔王軍だけでしょう。組織図を見れば、誰が誰の指揮命令系統にあるかが一目瞭然です。
これだけきれいな組織図があるためか、大魔王軍は統制がとれた活動でダイ一行を追い詰めています。
原作既読者の方は、魔王軍は連携せずに各個撃破された印象をお持ちかもしれませんが、バルジ島の対決ではハドラー・フレイザード・ミストバーン・ザボエラの4人で総攻撃を仕掛けたり、バラン戦で消耗しているダイ一行にハドラー・ザボエラコンビが夜襲を仕掛けるなど、悪の組織にしてはかなりのチームワークを見せています。
× 階層を飛び越えたトップからの命令
このように、統制された指揮命令系統でさすがの組織力をみせる大魔王軍ですが、1点だけ看過できない失敗があります。
それは、トップのバーン様が中間管理職のハドラーを飛び越してヒュンケルに直接命令を下したことです。
(ダイの大冒険 文庫版3巻 稲田 浩司 三条 陸)
ハドラーは全軍でダイを叩くつもりだったのに、バーン様のおかげで作戦が台無しになってしまいました。これは絶対にやっちゃいけないヤツですね。現場の士気はダダ下がりです。
ハドラーもバーン様の命令に納得いってない感がバリバリ出ちゃってます。
現場では不満が爆発
(ダイの大冒険 文庫版3巻 稲田 浩司 三条 陸)
フレイザードがキレてますね。バーン様が指揮命令系統を守らないばっかりに、不満の矛先が命令を受けたヒュンケルに向かっています。この場合、悪いのは組織のルールを守らなかったバーン様であってヒュンケルではないのですが、上に対して強く言えないピラミッド型組織の悪いところが出てしまっています。
このことがきっかけかは分かりませんが、ハドラー・フレイザード・ザボエラは組織全体よりも自分の手柄を優先させるようになり組織にほころびが生まれてしまっています。
良い組織を作って終わりではなくて、それをルールどおりに運用することがだいじだと教えてくれますね。
きれいな組織図など評価できるポイントは多いのですが、バーン様のルール無視を減点して星4つとしました。
トップの魅力 ★★★★☆
つづいて、組織トップである大魔王バーン様自身の魅力について。規模の大小を問わず、やはり上に立つ人が魅力的かどうかは組織に置いて非常に重要です。
◎ 失敗に寛容で穏やかな性格
悪の組織のトップというと、冷徹で部下のちょっとした失敗も許さず制裁を加えるイメージがありますが、バーン様はそんなことはありません。
その口調はいつもていねいで穏やかなうえに部下の失敗にも寛容です。
作中では、失敗を重ねたハドラーに対して勇者アバンを倒した功績で失敗をチャラにしてもう1度チャンスを与えています。
部下の手柄を覚えているバーン様
(ダイの大冒険 文庫版6巻 稲田 浩司 三条 陸)
1度の失敗で部下を切らずに何度もチャンスを与えたり、部下の手柄をちゃんと覚えて認めるなど、バーン様はこれまでの悪の組織のリーダーにない良い上司っぷりを発揮しています。
× 社長の顔が見えない
そんな良い上司なバーン様ですが難点が1つ。極度の秘密主義者で、部下に対してその素顔を見せないのです。
上の画像のように、直属の部下ハドラーに大事な話をするときも布越しです。これは典型的な社長の顔が見えない組織!
いちおう、素顔を隠す合理的な理由があるとはいえ、これでは部下はいい気分はしないでしょう。
そんなバーン様の秘密主義が良くなかったのか、結果的にバーン様は部下から慕われなかったようです。7人の管理職のうち最終的にはハドラー・ヒュンケル・クロコダイン・バランの4人が敵組織である勇者サイドに裏切ってしまいました。
ヒュンケルとバランは出自を考えると仕方ないにしても、ハドラーとクロコダインはマネジメントしだいで流出を防げたように思えます。
◎ 辞めた社員にも敬意を払う
このように多くの社員が辞めてライバル組織(勇者サイド)に転職してしまう大魔王軍ですが、バーン様は辞めた社員を責めないどころか敬意を払っています。裏切り者には制裁を!が常識の悪の組織においてこれは非常に珍しいことです。
裏切り者にも敬意を示すバーン様
(ダイの大冒険 文庫版19巻 稲田 浩司 三条 陸)
強い奴に差別はせん!の流れから言及されない我らが獣王クロコダインのことは置いておいて…。
宴の途中で「やる気出ないんで辞めます」宣言したロン・ベルクに対してもバーン様は声を荒げません。
ロン・ベルクを引き止めるバーン様
(ダイの大冒険 文庫版16巻 稲田 浩司 三条 陸)
「武器作るやる気出ないから辞める」というロン・ベルクに対して、「鍛冶屋としてではなく剣士として、魔軍司令の座を用意する」と別のポジションを用意するほどの柔軟性。ほんとバーン様は心が広いです。
ロン・ベルクの意志が固いとみるや無理な引き止めはせず「魔族の人生は長い…気が変わるかもしれん」と一言。出戻り採用まで視野に入れています。
「トップの魅力」は、社長の顔が見えず幹部の半数以上が転職するという致命的な問題がありながらそれを補うほどのバーン様の魅力を評価して星4つです。
採用力 ★★★★★
最後に人材採用について。良い組織はトップ自ら採用に力を入れていたり、採用できる仕組みが整っています。
◎ バーン様の勧誘力がすごい
ドラクエといえばラスボスで魔王が勇者を勧誘することですね。ドラクエ1 りゅうおうの「わしの味方になれば世界の半分を勇者にやろう」は日本で最初のリファラル採用と言われています(出典:ゲーム民明書房)。
ラスボスの勇者勧誘はドラクエのお約束
(ダイの大冒険 文庫版19巻 稲田 浩司 三条 陸)
バーン様もお約束どおり最終決戦で勇者ダイを勧誘するのですが、この勧誘が意外なまでに熱いんです!
「仲間になってほしい」という自分の都合を押し付けるのではなく、ダイの心の奥底にかかえている矛盾と葛藤を突いて、ちゃんとダイにとってメリットのある勧誘になっています。
「人間は最低だぞ」というセリフは、ベンガーナのデパートでドラゴンの襲撃を防いだあとにダイが小さな子供に「お兄ちゃん怖い」と泣かれてしまっているので説得力があります。
結果として断られたものの、ダイは「おまえの言うことはうそじゃないと思う」と一部認めています。一歩間違えていればバランのように首をたてに振っていたかもしれない、と思わせるほど良い勧誘でした。
トップ自ら採用に積極的で、かつ相手のニーズをふまえた勧誘ができるとは、さすがバーン様、さすがの採用力です。
◎ 創業メンバーが採用に熱心
冒頭に紹介したピラミッド組織は、バーン様および創業メンバーであるミストバーンが主要人物をスカウトすることで実現しています。
六大魔団長の採用理由
(ダイの大冒険 文庫版19巻 稲田 浩司 三条 陸)
忠誠心を買われたにも関わらず、いの一番に敵方に寝返った獣王クロコダインは置いておいて…ミストバーンのセリフから、軍団長それぞれの個性を把握している様子と多様性の重要さを理解しているのが伝わってきますね。
本編にその様子は描かれていないですが、ハドラー + 六大魔団長の採用経緯はおそらく下記(筆者の想像が含まれます)。
ハドラー・ヒュンケルはチョロそうですが、バラン・クロコダインあたりのスカウトはそれなりにたいへんだったんじゃないかなぁと想像します。
強い組織をつくるために、トップが採用の重要性を理解している理想の組織なので、「採用力」は満点の星5つです。
総評
以上、バーン様率いる大魔王軍を格付け評価してみました。
予想はしてましたがかなりの組織力。ネガティブポイントがヒュンケルへの指揮命令系統をとびこえた命令と、バーン様の秘密主義くらいしかありませんでした。
ただ、結果論とはいえ幹部の半数以上が勇者サイドに裏切ることになってしまった点を厳しく評価して下記の点数です。幹部の離職が止まらない組織はたいへんそう…。
考察は以上です。読んでいただきありがとうございました。
ほかに格付けチェックしてほしい悪の組織があれば、コメント欄にどうぞ!
2020年10月追記)
『るろうに剣心』十本刀も格付けしました。大魔王軍と僅差です!
2020年12月追記)
みんな大好きポップがなぜあれだけ成長できたのか?を考察しました!
サポートしていただけるとわたしの次のお昼ご飯に温泉玉子をトッピングすることができます!