さとのば大学 クラウドファンディングのその後
2019年10月24日に開催された、
「さとのば大学 クラウドファンディングのその後」
に行ってまいりました。
場所は「風土はfoodから」。一回行ってみたかった。
神田からなんも考えずに歩いてたら15分かかって驚愕。汗かきました。
さとのば大学発起人の信岡さんとグリーンズの鈴木さんで、さとのば大学を監査するという1時間。鈴木さんは関係性を作る人づくりを大事にしていて、それを持続性につながると考えている。ふむふむ。という自己紹介を踏まえてスタート。
クラウドファンディングで集めた金額は計1040万円!すごい!
どんなファンドメニューがあったのか、と振り返りましたが、あしながおじさん(50万円)とかあしながおじさん(10万円)とか。あと海士町の食材とか、Tシャツとか。といってもみんなの支援が集まっての1040万円。ちなみに私は具現化構想ファンクラブというのにファンドした結果、プロボノをやっていたりします。
でも10~15%がCampfireの手数料。マジで?そんなに高いの?無知だった・・・。そうすると、ファンドする側としても考え方を変えないといけないのかも。手数料をどう考えるかはファンドを受ける側の話かもしれないですが、少なくとも、自分のファンドした金額そのままが届かないというのは覚えておく必要がありますね。メモメモ。
じゃあ手数料引いた900万前後がどのように使われているのか。
人件費と広報が大体7:3だそうな。まあそうですよね。見ててもわかる。
事務局の人件費もさることながら、地域側も講師側も大贅沢ですもの。
さとのば大学1期生は計8人。4つの拠点(女川、新富、海士、西粟倉)に3人-2人-2人-1人の配分で3カ月を暮らしたそうな。月曜は地域メンタリング、火曜から木曜はZoomでの講義、金曜はオンラインホームルームで午前を過ごし、午後は各地域でプロジェクトに取り組みました。
人件費の観点では、事務局側はフルタイムではないにしろ4人が稼働。でもさとのばだけのお金で動いているわけではない。
講師は全体ミーティングが月1回、期に3時間の講義が3回、といってもその準備もあるし、大体2.5日/月位は稼働?
地域側は、学生の地域メンタリングに加えて、学生の居住環境や地域の方とのふれあい、学生のプロジェクトの話もある。
こう書いてみると、さとのば大学の凄いサポート感が伝わります・・・。
一方広報はといいますと、大学だったり企業だったりにアプローチ。
大学では、学生に外の環境を感じてほしいと願いを持つ先生がいたり。
企業でも、昨今のCSR/SDGsといったキーワードも踏まえ、地域を学ぶための研修プログラムの一環のような側面も。
実際に1期生の1名は、企業からの派遣で、半さとのば半企業的な3カ月を過ごしたそうな。いいなあ・・・。
それでは受講費はいくらでしょうというと、3カ月コースは15万円/人。ここでマジかよ破格じゃね的な失笑が起きるww
まあ回収の仕方を考えていかないといけない、というのは発起人信岡さんも感じているようで、最終的には受講費を地域と事務局で半々にして、地域側のプロジェクトにもつなげたい、と思っているようです。
この辺から、お金だけの監査ではなく中身の話にシフト。
さとのば1期生はどんな人が多かった?という鈴木さんの問いに、僕の周りにはいい意味の変態がよく来る、という信岡さんコメント。類友?
安全性が大事な農耕民、ドキドキが大事な狩猟民、楽しみが大事な遊牧民、と分けたときに、狩猟と遊牧のあいだ、という人が多かったというフォローが後で入りました。これならなんとなくわかる気もします。
プロジェクトはどんな感じだったの?という問いについては、地域が用意したプロジェクト切り出しのパターンと、マイプロ的な自分がやりたいプロジェクトのパターンの2つがあるとのこと。
学生さんも、地域を選んでここがいい!というパターンが多かったようです。関係人口が増えてきているということかもしれません。逆に、地域に行きたい人をちゃんと送り込めた、という成果ととらえてもいいのかも。
そしてだんだんと学びの話にシフト。
信岡さんは何に喜びを?という問いには、学びを広げたい、というコメント。正解のない学びが必要な時代、とりあえずやってみるのが大事だけど、それをするための補助線を引くお手伝いをしたい。この辺はさとのば大学のホームページにも書いてありますね。
学ぶのに億劫な理由の一つに、評価が怖いっていう人もいるけど、それは評価軸が少ないから怖い、ということ。人間の特性を5軸くらいで測るのは無理で、50軸とか100軸とか用意しちゃえば自然と自分の個性もちゃんと見えてくるし、さらにどこを伸ばそうか、という項目も見えてくる。自分でも選べるようになる。これが補助線のお手伝い。
という話を、多様な軸を実際に議論した表を画面に見せながらにこにこ話す信岡さんに対して、鈴木さんが「ド変態」の称号を授けておられましたww
でも実際信岡さんが代表を務めるアスノオトでは、たとえば「ほうれんそう」の「ほう」について、できているできてないのゼロイチではなく、1~6のグラデーションを付けて話をしているとのこと。これいいな。参考になります。
さらに話は地域の話題に進んでいきます。
なぜ東京ではなく地域なのか?という問いに対しては、東京ではプロジェクトを始めにくいというコメント。
東京は、専門性が高い人間が多いけど、全体に対する決裁権を持つことは難しい。うまく回すにはお金が必要。
地域は、全体性をもって動ける人が多い。必要なリソースが見えやすいし、それを人間性で動かしやすい。
これは大企業とベンチャーの関係にも近い気がします。この辺は私の悩みですが。
ではなぜ1つではなく4つの地域なのか?については。立地毎にできることが違うから。例えばイカ漁と森林運営では、日々のやることも違う。事業計画も違う。事業のスパンまで全然違う(森林なんて10年単位!)。当然町のフェーズによっても全然違う。選択肢が複数あることで自分に合ったところを選べるし、それぞれの地域にまたがることで、それぞれの地域のメンバ同士の対話でまたわかることもある。
特に学生の立場ではまず試せる環境が大事。試した結果が、さらなる冒険、さらなる一歩につながる。確かにその通りですね。
いよいよ、長期的な計画の話に入っていきます。
立ち上げてみた感想、やってみて見えてきたことは?という問いには、ガバナンスから構築できたとのこと。例えば教育改革をしよう!と学校が思った時、ありがちなパターンは
①カリキュラムを変える
②先生の中に浸透
③そのあとガバナンスに行けるかどうか(でもだいたい行けない)
というパターンになってしまう。そもそもの仕組み全体から変えていかないと改革にならない。その仕組みから作れたのが大きい、ということですね。
会社を真剣に変えるなら人事制度から変えないと、というのと同じだね、という鈴木さんの補足も。この辺はまさにその通りという感じです。
では今後のビジョンは、というと・・・
まずはさとのば大学のカリキュラムを2年で3地域を回る、くらいにしていきたい。といってもいきなりは難しいから、3カ月を6カ月にするところからスタート。
さらに大学と提携していきたい。大学の初年度教育との整合性は高い。
仲間がいて、地域から学び、そのあとの専門教育につなげる、というアプローチ。
そして就職の形を変えていきたい。就職するために大学に行く、という仕組みから脱却して、学びの形を変えて、創造性・主体性を持った新規事業性の高い人材を生み出せる仕組みにしたい。
そういった取り組みを経て、日本中を学習するコミュニティ、未来を自治していくコミュニティにしたい。そのために、そういった感覚を持つハブ的な人を増やしていって、いろんなところに文化を根ざしていきたい。
話は最後に文化の話に移ります。
文化を作るにはやっぱり人数を増やしていかないといけない。
今活動性のある地域が、さらにプレーヤーを増やし、さらにそれによって活動性を増していく、というサイクルがあるが、ともすれば、いい人の奪い合いになってしまう。これを各地域で人を育てられる、育てあう形にしていく必要があって、でも1つの地域だけの覚悟で進めるのは難しい。
それを、さとのばの学生が地域に入り、地域コーディネーターとともにプロジェクトを回し、その成果を地域とその自治体の活動につなげる、というサイクルを回していき、さらにその中で学びの環も広げる、というのが大事。
というところでお時間となりました。
締めくくりとして、鈴木さんからの監査総括は以下の3点。
①構想の実現のためには、人材がまず足りない!組織の充実が大事。
②事業の継続性を考えないといけない。経営戦略。
③学生のみならず、関わる人それぞれの出口戦略。
このうち、②については学長+経営者的な人を常に募集中w、さらに①③については、卒業生が次期の運営に回る形も見えてきていて、環を広げていきたい、という信岡さんコメントでした。
個人的な感想ですが、鈴木さんのうまい監査運び(?)で、お金の話だけでなく、学びやビジョン、さらに文化の話に広がり、多様な話になったなあと思いつつ、持続性にはやっぱりお金のところが大事だよなというのが率直なところです。
とはいえ、私は都会の企業の人間で、その立場で話を聞いたときに、専門性が高いが全体決裁権がないというのは大企業の特徴でもあって、そんな中にもこのような文化を広げていくことで、それが学習するコミュニティにもつながるのだろうとも思いつつ、お金ではなく学びの形で輪が広がり、その延長でさとのば大学の持続性が保たれるような仕組みが作れるとよいなあ、ともやもやと考えています。
ということで充実した1時間でした。ありがとうございました!