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イバン族の食文化 05/11

もう1種類の地酒が、「イジョ」と呼ばれるヤシ酒があり、イバン族の人が「イジョ」と呼ぶヤシの幹から取れる樹液に、ある樹木の樹皮を入れると発酵するらしいが、この酒だけは、サラワク中にあるイバン族の中でも、バタンアイやルボック・アントゥー近辺の限られたイバン族の村にしかないレアな酒だ。

これは、カルピスの様な味がして、一飲、アルコールの殆ど入っていないカルピス・ハイかなという感じで、私はこれを飲んだ時、酔う前に吐き気がしたので、果たして、酒と呼んで良いのか物議を醸すところだ。

吐き気がしそうになるから、酒と呼ぶのか、偶々、そこで飲まされた「イジョ」が問題あるのか、今も謎である。

でも、その「イジョ」初体験は、収穫祭の時で、その村人が、次から次に、大きな壷に入れて運んで来る。

その村人が、「イジョ」はどうやって作っているか見たいか聞くので、その荒れた酒盛りから逃げたい気分もあって、ロングハウスの裏庭に着いて行った。

5m位の「イジュ」と呼ばれるヤシが何本かあって、その上の方の葉の付け根のあたりに壷が置いてある。そこまで上がる為に梯子も丁寧につけてあるので、登ってみると、V字型の薄い鉄板の様なものが幹に差し込んであって、樹液がそこを通って、壷に流れ込む仕組みになっている。

仕組みというほどのものではなかったが・・。
興味ついでに、その液を舐めると、カルピスの原液そのもので、冷たい水で溶かすと美味しいかなと思ったのだった。

しかし、アルコール分が無いので、その人に聞いてみると、その原液に、樹皮をいれないと、酒にならないとの事。
偶々、私が登ったヤシの隣のヤシの壷が満杯になった様で、村人が、それを担ぎ降ろして、何かの樹皮をその中に入れて、持って行った。それで、酒の出来上がりだそうだ。

実際、その樹皮が醗酵を促すのか、時間がたつと醗酵が促されるのか、それを確認する前に、酔っ払ってしまった私だった。
今も謎である。 いつも、その謎が解ける前に、泥酔させられてしまうので、いつも、謎を解くことが出来ない。

さて、その時は、ドリバーも必要なく、ウォルターと寛いで、ちょっと英語表記の洒落た“LONGHOUSE”の食前酒を飲みながら、グルメな食事が出来上がるまで、雑談をしていたのだが、途中で、1km位離れた位置で畑仕事している、クリス夫婦も合流していた。

今日は、一緒に食事をする事になっていたそうだ。
村のロングハウスであれば、隣近所で行ったり着たりで、非常に賑やかだが、農作地は、それぞれの出作り小屋が離れているし、それぞれが何時もいるという訳でもなく、収穫の時期は、こちらにいる人が比較的多いが、非常にさびしい環境だ。今日は、というよりも、何時も一緒に食事を取っているようだった。
ご飯もおかずも出来上がって、さあ食事という段階で、その夫婦は、突然、煤けた鉄鍋に入った、自分の小屋で炊いてきたご飯を出し、自分のお皿に盛った。

“マイ・ライス”の登場だ。

イバン族の人にとって、お米は非常に重要なもので、狩猟などの獲物は全村で平等分配するのが慣わしだが、お米だけは、貸し借りというのがある位、シビアなものである。
以前、ロングハウスで、村の人を招待して、ある家族の部屋で食事する事になった。その時、私も同席したのだが、呼ばれた人が全員、これも煤けた鉄鍋を持ってきた。
そして、食事が始まると、それぞれの鉄鍋から自分で炊いたご飯をお皿に盛って、食べた時には、本当に驚いた。おかずはホストの家族が用意し、お皿はその家のものを使っていた。しかし、ご飯だけは、自分で炊いたものを食べる。イバン族の食事作法の一つを学んだ瞬間だった。と言っても、ご飯が余っている人は、その他の人に勧めたりするのだが・・・。

いずれにせよ、お呼ばれした時には、自分のお米は炊いて持って行くのが基本であるのは、イバン族の村では、鉄則だ。

イバン族の人は、どんな事があっても、1日に3回ご飯を食べる。どんな山奥でも、畑でも、クチンの街中でも、クアラルンプールの大都会でも、絶対に3回ご飯を食べる。日本人の人には、当たり前に聞こえるかもしれないが、イバン族の人は、もっと食べる。

 

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