100年間続いた英国人ブルック家の所有した謎の王国(1841年~1941年)3/3
実は、1950年代にハリウッドの映画会社が、ブルック家の類稀なストーリーを、映画化したいという企画があったそうですが、ブルック家の親族より、丁重に断わられたそうです。
ブルック家の残していった歴史は、ジェームズの冒険話、首狩り制圧の際のイバン族との攻防(特にイバン族の英雄レンタップとの鬩ぎ合い)、そして、忘れていけないのは、チャールズに嫁ぐ為に、イギリスから来た、淑女マーガレット。女王マーガレット・ブルックは、芸術的な才能に恵まれ、その素養が、自身の書物などに残っています。
と、あげるとキリが無いほどネタがあり、映画化されると間違いなく、大作になる筈の素材ですが、私個人の考えでは、映画化されない事は、正解なのではと。壮大なる浪漫や冒険の歴史が、スクリーンに閉じ込められる事無く、サラワクの人々の心の片隅の中に、永遠に残り、語り継がれていき、そして、運良くこのサラワクを訪れる機会に巡り会えた人々は、その街に刻まれた浪漫を、個々人の国の歴史と照らし合わせる事によって、ブルック家と「サラワク王国」は、永久の浪漫を持ちえるのでは、と。
そんな特別な場所のサラワクで生活出来る優雅さを、クチンのウォーターフロントで夕陽を眺めると、いつも、思い出させてくれる。
「一国の王であるってことは全く愚劣そのものさ。しかし一つの王国をこさえるってこと、こいつは別物だ」(アンドレ・マルロオ「王道」)
***サラワク王国の事をもっとお知りになられたい方は、「ボルネオの白きラジャ/ジェームズ・ブルックの生涯」三浦暁子著(NTT出版)をお読み下さい。数少ないサラワク王国に関する日本語の著書です。ジェームズ・ブルックの生い立ちから、ボルネオ島でホワイト・ラジャ(白人王)になるまでの経緯、サラワク王国時代の様々な出来事、そして、イギリスで彼の人生の幕を閉じる迄、一つの王国を作った英国人の稀有な人生が事細かに描かれています。
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