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ビール讃歌

 日増しに暑くなり、ビールがうまい季節になった。
 とはいえ、ビールは春夏秋冬いつ飲んでもうまい。夏は冷蔵庫、冬は屋外でほどよく冷やしたビールを飲む。大体は夕方から夜にかけての時間帯に飲むので、今日も一日よく頑張ったという気持ちになる。

 いつ頃からビールが好きになったのだろうか。
 子供の頃に親戚一同揃った宴会で「味見するか」と舌先だけビールに触れて、あまりの苦さに大人は何とまずいものを飲むのかと思った。最初の出会いは、印象があまりよろしくない。
 酒が飲める年齢になると、ビールは最初の乾杯だけで済ませて日本酒や焼酎に流れるようになった。何となくそれらに大人の匂いを感じていたためだが、特に焼酎は各地の乙類焼酎を飲み屋で注文してはロックでちびちび飲んだものだった。何事もなければ、今も焼酎派だったかも知れない。この時点でもビールは「とりあえずビール」程度の軽い扱いだった。

 転機が訪れたのは、友人とふと訪れたアイリッシュパブだった。そこで頼んだ1パイントのギネスが、すっかり我々を魅了してしまったのだ。これまで飲んだビールとは違う色、香り、まったりとした味に魅せられ、これまで軽い扱いだったビールをすっかり見直してしまった。もちろん一緒に頼んだフィッシュアンドチップスが気に入ったのも、言うまでもない。
 ギネス以外にも色々面白そうなビールがあると気づいたのはそれ以降で、仕事帰りに成城石井などちょっとお洒落なスーパーで輸入ビールを探し求めるようになった。それまではバドワイザーやハイネケンくらいしか知らなかったのが、ドイツビールを知りベルギービールを知り、ロシアや中東など一見ビールと直接関係がなさそうな地域のビールも飲むようになった。
 そのうちに国産のクラフトビールを知り、ビアフェスへと足を運ぶようになった。かつては「地ビール」と呼ばれていたクラフトビールだが、今では日本各地に醸造所ができてバラエティに富んだビアスタイルを提供してくれる。ビアフェスで飲み、タップバーで飲み、工場見学で飲み、今では国産クラフトビールが飲む酒のかなりの割合を占めるようになった。

 料理のおいしいビアバーでビールを楽しむのも好きだが、最近は出かけるのも難儀なご時世なので、家で一人飲みをする。翌日に仕事を控えた平日は飲まないルールを設けているので、飲むならば金曜日から日曜日の間になる。
 休日はなるべく有意義に過ごしたいと考えているので、ビールを開けるのは大体夕暮れ時になる(時々は昼下がりに飲んで、夕方までぐっすり寝ることもあるが)。
 ビールは冷やし過ぎない程度に冷やして、薄手のグラスに注ぐ。香りを楽しみつつ、30分ほど時間をかけてゆっくり飲む。外で友人と飲む時は別だが、一人で飲む時は何も食べないことが多い。
 一回に飲む量は、350mlの缶か330mlの瓶を一本だけにしている。それ以上はただ酔いが増すだけなので飲まない。ビールの味が楽しめて気分が良くなる分量が、自分にとっては缶か瓶一本ということになる。
(友人と外で飲む時は、その限りではない)

 普段飲むビアスタイルはクラフトビールが多いのでエール中心になるが、一般的なラガーも好きだ。逆に嫌いなビールというものはない。色々あって全部良い、それがビールだと思っている。
 この文章を書いている今日は、あいにく月曜日なので休肝日。次の金曜日に飲むビールを、今から考えておくことにしよう。

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