トンビ
風を切って走る田舎列車
翼を風に預けたトンビを追い越した
赤信号で踏切が閉まる時
自動ドアの速度に焦らされる時
バカをして笑い合う時
いつも等しく同じ時が進んでる
また一つ知らない駅に着く
隣に座って来た彼女が着ている服が放つ
鼻を刺す柔軟剤の匂いでここが都会に染まってること思い出す
社会の時間割が薄れた身体
田舎列車に充満する確かな居心地の悪さ
僕の視線が泳ぐ
僕はどこに居るんだろう
この列車に希望を託すことを諦め
知らない駅で下車した
そこは砂利の敷かれた道が茂った森へ続くだけの駅だ
私の行くべき道にたどり着いたようだった
この足を地につけて歩くたび
地中に根をはる音が聞こえてくる
それが僕の心臓の鼓動と重なるだけで生きてることが分かる
なんて単純な世界だろうかと空に尋ねる
さっき追い越したトンビが森へ入っていった
僕も続けて森へ入った