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本気の恋、したことありますか?


大船駅で当時付き合っていた人を待っていた時、駅構内の本屋さんで素敵な一冊と出会った。


「人はなぜ、バーテンダーに恋の話をするのだろう。」


ある意味胸を突かれたような、思わずハッとさせられたそのひとことに、
まんまと心を掴まれた私は、本屋さんに入ってたったの5分でその本を購入した。


あなたは恋をしたことがあるだろうか。

誰かのことを大好きだと思って真夜中に切なくなったことはあるだろうか。

その気持ちが相手に伝わり、
相手も自分のことを思っていて、
心から抱きしめあったことはあるだろうか。

しかし、すべての恋はいつか消える。

あの恋はたしかにあったはずなのに、
あの時、誰かのことを強く好きだと思った気持ちはたしかに存在したはずなのに、
いつか消えてしまう。

私はそんな存在したはずの恋を書き留めて、

この世界に残しておこうと思った。


キュンとしてしまうような甘酸っぱい恋から、
すれ違いで終わってしまった切ない恋、
してはいけない相手に恋をしてしまった報われない恋、
もう戻れない初恋の話etc...。

まさに十人十色。
もちろん誰一人としてエピソードが被ることはない。

しかしそのどれもが、誰もが思わず自分と重ねてしまうような恋で溢れていた。

本を読み進める度、気持ちがキュゥゥっと締め付けられたりほっこりしたり。

小説に登場する人物全員が
恋に必死で本気で、一生懸命で。

その姿は、
本来ならものすごく人間臭くてカッコ悪いはずなのに、
なぜだかものすごくカッコよく見えた。

例え実らなかったり、あるいは円満別れではなかったとしても、
記憶に残るほどの恋というのは、
良くも悪くも人生においてすごく貴重なものだと思う。

当時付き合っていた彼との恋は、今となってはもう過去のものとなってしまったけれど、付き合ったことを後悔した日は一日もない。

ビールとchelmicoとサッカーをこよなく愛し、ドライブが好きで運転がとっても上手だった彼は、間違いなく当時の私にとって最高な人だった。

彼との恋が本気の恋だったかと聞かれたら分からないけれど、少なくとも彼と出会わなければ、私はchelmicoを知ることはなかっただろうし、大船駅でこの本に出会うこともおそらくなかっただろう。

今となっては分からなくとも、
その時の自分にとってはいつだって本気の恋で、必死で、大恋愛をしていた、
そんなことにこの本を通して改めて気付かされたように思う。

恋したい人も、恋に疲れた人も、
初恋が忘れられない人も、
いけない恋をしている人も、
恋人との倦怠期で思い悩んでいる人も、
この人と結婚してよかったと思っている人も、

是非この本を手に取って読んでみてほしい。

思わず自分と重ねてしまうエピソードがきっと見つかるはずだ。




読んだあなたが素敵な恋に出会えることを願って。



林伸次『恋はいつだってなにげなく始まってなにげなく終わる。』幻冬舎文庫、2021年。

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