『捨てられない女』
コロナウイルスが蔓延し、街中が自粛モードとなった。当然ながら私も自粛をしているのだが、一人が苦痛でない私は「お家時間」とやらを過ごしている。そんな私に一通のLINEが入った。
相手は一瞬だけ付き合った、付き合った数にカウントもしていない(したくもない)メンズだ。別れた原因は、重い、ドケチ、将来性がない等々理由は沢山あるが音信不通にしたくなるくらい非常に気持ちが悪く「別れよう。」すらなかなか言えず、、、(連絡すらしたくなかったが色々理由があったので音信不通に出来ず上手いことかわし別れた、交際中の話などは気が向いたらまたそのうち。)という奴だ。
非常に気分が悪い。
本を読んだり、流行りの映画見放題有料サービスの鑑賞をしようか考えたが、前々から重い腰が上がらなかった服たちの整理をしようと思い立った。
ところで、私は昔から服を沢山買ってしまう。若い頃に水商売をやっていて、同伴やアフターでいつも同じ服でいないことを意識していたし、プライベートでもとにかく男にモテたいと息を巻いていたからだ。そして、困ったことに、服が増えていき、新しいものを購入しても古いものを捨てられない。要は『捨てられない女』だ。
そんな『捨てられない女』である私は、昔流行ったり好んで着ていたフリフリ系~ギャル系~カジュアルなど、「まだ着れる」「そのうち着る」など思い、結局タンスの肥やしにしている。最近では、買っても着るのは同じ服だったりする。
この際、全部捨てるか。
なぜか急に、そう思いたち、「まだ着れる」「そのうち着る」服たちを袋にどんどん入れ捨てることにした。善は急げだ。どんどん入れろー!アラサー女子の私にはもう昔の派手な服は似合わない。服を捨てていく。気付けば服の量は10分の1程になっていた。
私の心も晴れ晴れしていた。
そう、要らないものは、ばっさり捨てよう。これまで、『捨てられない女』だった私。服も、そういえば、人間関係だってそうじゃないか。マウントをとる嫌味な女友達、パワハラの職場、なかなか見切りをつけられない。全てにおいて『捨てられない女』。
だが、冒頭で述べたLINEのケチ男はどうだ?ばっさりと切り捨てている。今日の服たちもそうだ。捨てることができている。なんだ、自分は思ったよりできる人間じゃないか。自分を褒めてあげよう。『捨てられない女』は、自分で思い込むことによって成り立ち、それを身にまとっていたのだ。
自分の何かに囚われているとそのまま止まってしまう。若い頃の服を無理して着る自分のように。
気付けば夕方だった。世間の情勢とは裏腹に、夕日が穏やかに差し込んでいた。