エッセイ / 記憶

 この前初めて、夢に祖父が出てきた。

 祖父は八年前に突然亡くなった。

 うっすらとしか覚えていないけれど、祖父と祖母が二人の家の縁側に座っていた。
 祖父は胡座だった。
 祖母の家は庭に小さな山があって、縁側からは山を望める。二人が山を眺める、その背中を僕はただ見る。それだけ。
 ほんの一瞬だけの夢だった。

 だけど、その一瞬が、とてつもなく長く感じた。

 何を語った訳でもなく、こちらを振り向く訳でもなく、ただ眺めるだけ。
 普遍的でありつつ、絶対に現実にはできない。

 祖母は今も生きている。認知症で大変なこともあるけれど、お世話しながらひとりで住んでいる。見てくださった方はわかるかな、相方のMVに登場する民家。
 祖父も祖母も、縁側で黄昏れるようなタイプの人間じゃない。僕の記憶がある限りは。木々の世話をしたり、祖父は倒れる直前までスイミングへ通っていた。

 この夢を見て、何となく、八年前の頃を思い出した。

 祖父は、僕が二人の家へ遊びに行くと「おう!」といつも元気よく挨拶をしてくれて。今なら、落ち込むことは無いのか?って疑いたくなるくらい大らかな人だった。
 夏の終わり頃、突然倒れて、一週間くらいで亡くなった。僕にとってはそれが、物心ついてから初めての「親族の死」だった。一生分泣いて、「当たり前の世界はいつか変わるんだ」ということを少しだけ知った。
 この出来事から、「人は死んだらどうなる」とか、「死後の世界はあるのか」とか、そういうことを考える様になった。祖父の死が突然すぎて、実はどこかで生きているんじゃないか。そう思ったからだと思う。

 今でも祖母のところへ会いに行くと、遺影を眺める。
「おう!」って言われている様な気がして、心の中で最近のことを喋って。僕は霊感があるから、死者への言葉は伝わってるんじゃないかなって思う様にして、よく語りかけている。

 そんな事があったなと思って、何となく綴ってみました。
 認知症の祖母、未だに僕が高校生だと言い出すときがある。怖い。笑

 死生観の話は好きなので、気が向いたらまた書きます。

ではまた。

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