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エッセイ|夏空と百日紅

夏がはじまる。
今年も大好きな花を眺められる季節がやってきた。
今日、ぱんぱんっに咲いた明るいピンクの百日紅(サルスベリ)を発見した。
思わずスマホで写真を撮る。

サルスベリを知ったのはおそらく大人になってから。
あるドラマを見ていた時、"亡くなったお母さんが好きな花だった”という話が出てきたのだ。
その頃は、サルスベリという名前は聞いたことがあるけれどどんな花か知らない、そんな状態だったと思う。そして、ドラマの中で見たピンクのサルスベリにもそんなにときめいた記憶はない。

ところが、ある晴れた夏の日、実物を見つけた。
正確には、サルスベリと認識して見たわけではなく、
「わー!このピンクの花かわいい!!」と自転車で通りながら思わず漕ぐのをやめて立ち止まったのだ。
街路樹だったが、ていねいに木にプレートが下げられていた。
そこには「サルスベリ」と書いてある。




「お~~~これがサルスベリか!!めっちゃかわいいやん!」
おそらくドラマの中の画面上で見るのと、夏の青空の下見るのとでは
ぜんぜん感じ方が違ったのだと思う。

ショッキングピンクのサルスベリ。
この明るいピンクが私の気持ちを元気にしてくれた。

当時、転勤で横浜に住んでいた。
仕事は忙しく、バタバタと過ぎる毎日。好きな仕事だしやりがいもある。
一緒に働くスタッフも大好きだったけど、転勤から数年経ち、3.11を経験し関西へ帰りたい気持ちがあふれていた。
この時見たピンクのサルスベリは、思い出したら泣けるほどなんだか私に元気をくれた。
「がんばれ」と言われているような、そんな気持ちになった。


それからというもの、夏になればお庭や街路樹のサルスベリを探す。
引っ越したりしても、いつもサルスベリの木がある道を見つけ、多少遠回りをしてもその前を通って眺める。

白や淡いピンクも可愛いけれど、私にとってサルスベリはショッキングピンク。
私を元気にしてくれる大好きな夏の色だ。





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