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戦没者に寄り添い、追悼するリメンバランス・サンデーで涙した話

11月12日(日)、Kranji War Memorial(クランジ戦争記念碑*)で行われたRemembrance Sunday(リメンバランス・サンデー**)。
シンガポール在住20年のめぐみさんから「きっと興味を持っていただけると思うから」と、ご連絡をいただき出席することになりました。
イギリスゆかりの戦没者追悼式に参加し、感じたことを綴りたいと思います。

*クランジ戦争記念碑
市中心部から約22km離れた閑静な地区にあるクランジ戦争記念碑。丘の中腹に記念碑と墓地があり、丘の斜面に4400基以上の墓石が並びます。第二次世界大戦で戦死したイギリス連邦の人々を祀っています。

Visit Singapore

**リメンバランス・サンデー
1918年11月11日に第一次世界大戦終結を記念してイギリス国王ジョージ5世によって定められたイギリスの記念日。その日に近い日曜に戦死者を追悼する日としてイギリスでは戦死者の慰霊碑前で追悼儀式が行われています。王室、首相、各政党党首、外相、英連邦や軍の代表者などが出席する大きな儀式です。

News Digest UK

クランジ戦争記念碑で行われる戦没者への追悼の儀式

毎年11月に、シンガポールの北部Kranji War Memorialで開催されているセレモニー。
1824年から1942年までイギリスの植民地だったことから、シンガポールでは戦没者追悼式を開催しています。
かつてはイギリスの第一次世界大戦終結を祝うものでしたが、Kranji War Memorialでは第二次世界大戦中に戦死したイギリス、オーストラリア、カナダ、スリランカ、インド、オランダ等の人々を祀っていることからあらゆる戦争で亡くなった方々を追悼する儀式となったそうです。

参加者に配られるリーフレット

式の流れは、イギリス系スクールの子どもたちによる演奏、合唱に始まり、イギリス大使、シンガポールはじめ各国の関係者、軍警察関連団体を代表する方たちの挨拶、式の中盤では起立して参加者全員で合唱する場面もありました。

Abide with me ~私のそばにいて~

スコットランドの賛美歌である Abide with me(私のそばにいて)の伴奏が始まりいざ歌い出すというところで、私は思いがけず涙が溢れ出てしまって、うまく歌うことができませんでした。

心が震えるような美しいメロディ、墓地で賛美歌を歌うという経験が初めてだったのもあると思いますが、その場にいるあらゆる国籍の人々が共に平和を願って歌うシチュエーションに、思った以上に感極まったのだと思います。

セレモニー中に感じたこと、ガイドさんの説明で思ったこと

今回出席するまでは、正直イギリス連合国の戦没者追悼の儀式に日本人が参加していいものかと考えてしまう自分がいました。
当日は日本大使館や英国学校関連の保護者に日本人の方もちらほらいましたが、式典がスタートするまで少し緊張していた部分もありました。

でも式中に司会者より「親愛なる日本からのゲスト〜、ドイツからのゲスト〜」と配慮のある紹介がされていて、全体的に温かい空気感に包まれていたのが印象的でした。

イギリスの追悼花であるポピーを献花

セレモニー後は、墓地のガイドツアーに参加し、たくさんの墓石を前にシンガポーリアンのガイドさんから第二次世界大戦において戦死された方々について教えてもらいました。

墓石の多くは、1942年の日付が刻まれ、日本軍との戦いで亡くなったことがわかるものがほとんど。イギリス、中国、オーストラリア、カナダなどたくさんの方が犠牲になり、日本軍が攻め入った時の状況をツアー参加者が尋ねるシチュエーションもありました。

National Musiumやシンガポール唯一の山があるブキティマ公園にも日本軍侵略について詳細が記されていて、毎度居た堪れないような気持ちになり、なかなか慣れるものではありません。
でも今回、墓地というセンシティブな場所での儀式とツアーに参加したにも関わらず、未来へ平和を繋げていこうとする意図を感じることができました。
日本人として申し訳ないと思う戦争の歴史を現地のガイドさんから話を聞くのは辛いですが、一生懸命伝えようとしてくれる姿に心打たれている自分にも気づくことができました。

2万4000名余りの軍兵士の名前が刻まれる塔

別の視点から戦争について考える

イギリスに縁もゆかりもない私でしたが、今回セレモニーに参加して改めて第二次世界大戦のこと、今まさに戦争している国やそこに住む人々のことを考えるきっかけになりました。
日本と第三国から見る戦争の記憶は、同じものでも全然違うように映ります。

そこに気がつくと争いにはどちらの立場もあって、被害者だと思っていても加害者だったりその反対ということもあり、真逆の見え方も知ることができます。

戦争で親しい人を亡くすことは本当に辛いこと。
私の祖母の兄もミャンマーで戦死しており、戦地に赴いたまま帰らぬ人となってしまった話を祖母から聞いていたので、遺族の悲しみは理解できます。

戦争関連ゆかりの場所は心情的に訪れにくいものですが、機会を作って足を運んでみると新たな視点、違う角度から平和について考える機会を得られます。
海外にいる間に、可能な限り現地で学ぶことを続けていきたいと改めて思えた追悼セレモニーでした。


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