優れたお金の条件とは?~ビットコインスタンダードより~
初心者向けによく勧められている『ビットコインスタンダード』(著者:SAIFEDEAN AMMMOUS 、出版:WILEY)を読んでいます。勉強のために自分の言葉でまとめてみます。
チャプター1では、お金の役割や優れたお金の特徴、廃れるお金の特徴が記されています。
お金って何?その性質とは?
お金には以下の3つの性質があります。
「交換の手段」として使える
「価値の保存」を可能にする
「価値の尺度」として使える
「交換の手段」として使える
お金は、欲しいものを得るために差し出すことができます。
例えば現代では、お金である紙幣を差し出すと、食料や車などを入手できます。また過去には、お金である貝殻を差し出すことで、農作物を買えるという時期があったとされます。「交換の手段」は、お金が持つこのような性質を表しています。
上記のことから、交換(買い物)のために所有するのがお金だといえます。つまりお金は、生活において直接必要になる食べ物や衣服とは違い、それ自体を消費することはないけれど、交換手段として間接的に必要になるというわけですね。
「価値の保存」を可能にする
お金は価値の保存先としても利用されます。他のものよりも価値が失われにくいからです。
例えば、野菜農家は生産した野菜を保管し続けることはできません。野菜は腐ってしまうからです。たとえ腐らないとしても、翌年が豊作だった場合、野菜の価値は下がってしまいます。一方で、お金の価値は比較的下がりづらく、貯蓄方法として使われます。
人間が生きていく上で、将来の備えとして貯蓄しておくことは大切です。この点でお金は、人類の文化の発展に大きく貢献したといえます。
「価値の尺度」として使える
お金は、価値の尺度として利用されることもあります。例えば、日本円は現代日本で価値の尺度として使われていますよね。日本のスーパーに行けば、どの商品も日本円でいくらなのかが表示されています。
ただし、あらゆるお金が価値の尺度に用いられるかというと、そうではないようです。価値の尺度として使われるのは、広く流通するお金のみです。
尺度がバラバラだとわかりづらいので、よく使われている単位に統一されるのは自然な現象だといえますね。
優れたお金、廃れるお金
お金は単一ではありません。歴史を振り返ると、貝殻や岩、銅、金、貨幣など、様々なものがお金として採用されてきました。また、一時期使われていても廃れるなど、移り変わってきました。
では、たくさんあるお金の中で、どんなお金が優れたお金なのでしょうか。優れたお金と特徴として、以下を見ていきます。
価値を細かく表現できる
場所を問わずに使える
時を問わずに使える
「価値を細かく表現できる」というのは、少額の支払いも高額の支払いもできるといった意味合いです。支払い数量を細かく決められるお金のほうが便利というわけですね。
「場所を問わずに使える」と「時を問わずに使える」は、そのまんまの意味です。ある島ではお金として使えるけれど、島を出ると価値を失ってしまうなら、お金として優れているとは言いづらいですよね。また、数十年くらいはお金として使えたのに、それ以後に価値を失ってしまったら大変ですから、長期的にお金として使われることも重要ということになります。
重要なのは、時を問わず使えること
優れたお金の要素は3種類ありますが、この中で最も実現が難しく、差別化につながる性質は「時を問わずに使える」だとされています。
たしかに考えてみれば、どんなに金額調整がしやすいお金でも、数年後・数十年後に価格が落ちる恐れがあるなら使いたくないですよね。また、どんなに持ち運びが便利で、いろんな場所で支払いに使えたとしても、将来的な価値に不安があるなら、使いたい人は少なそうです。少なくとも貯蓄先にはならなそうです。
一方で、長期的に価値が保存されるお金があるなら、それを積極的に使いたい人は多いと考えられます。
時を問わず使えるお金の特徴
時を問わずに使えるお金には、以下のような特徴があります。
腐ったり腐食したりしない
簡単に生産されない
特に注意が必要なのは、簡単に生産されないという特徴です。生産が簡単だったり、科学的に合成できたりすると、どんどんお金がインフレしていき、お金の価値が薄まってしまいます。しかも、生産の難易度は急に下がることがあります。
例として、Aという貝殻をお金として使っていたとします。Aを使うと野菜などを買うことができるので、みんなたくさん欲しいと思っているはずです。
でも、そんなAが大量にとれる場所が発見されたらどうでしょうか。どんどん価値は下がっていってしまうはずです。
ストック・フロー比率を見よう
簡単に生産されないかどうかは、ストック・フロー比率を使うことで数字的に表せます。数字を使うことで比較しやすくなるので便利です。
ストック・フロー比率とは、「ストック(流通している数)÷ フロー(将来、追加生産される数)」で表せます。生産が難しいほど高くなり、生産が簡単なほど低くなります。
ちなみに、ストック・フロー比率が高く生産が難しいお金は、Hard Moneyと呼ばれます。ゴールドがその代表例ですね。一方、ストック・フロー比率が低いお金はEasy Moneyと呼ばれています。
Hard Moneyを保有しよう
新たに生産することが難しいお金(Hard Money)は、時を経ても価値が下がりづらく、価値の保存に適しています。逆にいえば、生産することが簡単なお金(Easy Money)を持っていると、相対的に損をしやすくなります。
例として、19世紀ごろの各国の貨幣制度を確認してみましょう。
金本位制 vs 銀本位制
当時、イギリスをはじめとするヨーロッパ諸国は、金本位制を取り入れだしていました。この制度では政府がゴールドを保有し、そのゴールドと交換可能な通貨を発行します。そのため、通貨の価値はゴールドの価値と関連付けられます。
他方、中国やインドは銀本位制のままでした。銀本位制はシルバーを裏付け資産とする貨幣制度ですので、この制度の下で発行される通貨価値は、銀の価値と関連付けられます。
銀本位制の通貨と、金本位制の通貨の交換レートに着目すると、銀本位制の通貨の弱さが明白になりました。シルバーのストック・フロー比率は比較的高いですが、より優れたお金(Harder Money)を持つことが重要だとわかります。
優れたお金も廃れていく
優れたお金(Hardなお金)を見つけるには、ストック・フロー比率の高さなどをチェックすればよいのですが、困ったことがあります。
ストック・フロー比率などは、時代によって変わってしまうのです。しかも予測できないこともあります。
見つけるのに数年かかるような貴重な貝殻であっても、科学技術の発展で簡単に見つけられるようになったり、作れるようになったりする可能性があるのです。