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胎児水腫 発覚

総合病院で詳しく検査をしてもらおう、
ということで思ったより早い転院となった。
思ったより、というのは、
息子も総合病院で出産していて、
帝王切開だった為、出産は総合病院ですると
最初から決めていたからだ。

息子の場合は保育器が必要な程小さく産まれてくるだろうと診断されていた為。また、帝王切開となったのは回旋異常があり陣痛が3日間続き、私の体力が尽きそうだったからだ。結果、息子は2700gと割と普通の体重だった為に保育器にはいることなく、当日から母子同室でOKな程元気だった。内反足と動脈管開存という疾患はあったが、とにかく元気な男の子を私は産んだ。

皆さんは見たことがあるだろうか。
「ハイリスク妊婦外来」の文字を。
私は妊娠の度、この文字を見て
自分が嫌になった。
産まれる前から子どもに
辛い仕打ちをしているのか、
と情けなくなったし、
周りの幸せを妬んでしまう気持ちが
時々ふと自分の全身を
覆ってしまう程になるからだ。

担当医がエコーでよくよく確認し、
最初に言った言葉は
「覚悟をしておいて下さい。」
それはつまり子が死ぬという覚悟であって
何の未来もない、絶望しかない、
そんな言葉だった。
医師は続けた。
「ここまでの状況から改善したという経験は私にはありません。ただ、命は不思議で・・・。奇跡は否定しません。」
私はこの言葉を未だによく覚えている。
この子が今こうして生きていることは奇跡で、
私はそんな奇跡と出会えたんだと
言葉を反芻し、感謝した。
その日は改めてつきつけられた
現実の残酷さと僅かな希望を
どう取り扱っていいのかわからずに
仕事へ向かった。
ただ流れていく日常を守ることで自分を支えた。

通常の妊娠を経験している同僚からは
「なんで健診そんなに多いの?」
「心配しすぎでは?」と言われることもあった。
上司からは「業務中に行く理由は何?」
「健診多くない?」
「土曜日の健診ではいけないの?
 みんな都合つけてるよ?」
と聞かれたりもした。
理由が無ければ私だって4週に1度が良い。
行くのも待つのも疲れるし、
健診の度に酷な話ばかりで
生きることをやめたくなることだってあった。
そんな私の気持ちなんて微塵も知らないくせに!
子どもの死を常に抱えているなんて…
なんにも知らないくせに!
申請すれば業務中に妊婦健診に
行くことは認められているのに
なんでそんな酷い質問をするの?
なんで?

みんな詳しい事情を知らないし、
悪気があって言っている訳ではないこと、
上司として理由を把握しておきたいことは
頭では理解できたが、
そういった言葉に何度も心を抉られた。
なぜ子どものことだけで精一杯なのに
周りからこんな仕打ちを
受けなければいけないのと不貞腐れた。
申請書を上司に提出する度に胃がキリキリした。
そして、羊水検査の為に日帰り入院をすること、
入院の為にPCR検査を受けなくてはならず、
会社の規定上勤務扱いとはなるが
出社できないことを伝えた。

もう、私は仕事を辞めるべきなんだろうか。
こんな思いまでして続けたい仕事ではないのに。

色々な気持ちが宙に浮いてまとまらないまま
羊水検査の当日を迎えた。

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