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クリエイティブマネジメントのススメ2

TV広告で“売った・売れた”経験、お持ちですか

このタイトルはなかなか挑戦的ですよね。
初回でも書きましたが、最終的な販売の数字はマーケティングの様々な
プロセスが重なり合った結果と言われるので、広告で!とかパッケージ
デザインが良くて売れた!なんてことは、なかなか証明できるモノ
では無く、会社にいた時に評価された記憶がほとんどありません。
逆に販売が芳しくない時の方が、販売会議でも広告に因るモノと強調され
やすく割に合わない仕事だな~と思ったものでした。
特に広告費は高額な分、各ブランドの最終的な損益にも影響するので、
年度末の対外発表でも販売実績の不振の理由としての広告は、とても
活用されていました。
と、前振りが長くなりましたが、2020年の春に残念ながら終売になって
しまい現在存在しない商品のことなのですが、でも広告で売ってみせた
お話を始めます。

売りを休む・・・?
5年間の海外赴任を終えて日本に帰国し、日本国内の商品の
パッケージデザインの開発と広告の企画制作の長となり最初の広告の
仕事でした。
全国発売の際に制作したCMが、馬鹿当たりして商品の供給ができ
なくなり、発売してまもなく休売を余儀なくされたという出来事です。
勿論、営業が各流通チャネルに果敢に商談して店頭を作り上げたから
でもありますが、36年間の会社人生で休売というのは初めての経験と
なりました。

大失敗・・・
ただし、上手くいって良かったね!という話には必ずと言って、
その前に大失敗が隠れているものです。
全国発売の半年前に首都圏での先行発売をするということで、
当然TVCMも制作し、意気揚々と船出したのですが、全く風が吹かず
商品が動きませんでした。見事な大失敗です。
その商品は新製品で、当然お客様は全く見たこともない知らない商品です。
商品内容が“パウダードレッシング”というもので、
ドレッシングと言えば誰でもボトルに入った液体を想像するのが
普通ですよね?
おそらくお客様の頭の中では、何それ?って思われたに違いありません。
ドレッシングの概念からひっくり返した商品だったのです。
さらにパッケージのカタチがテトラポットのような三角形したアルミ
容器で、店頭に並べても正面が定まらないので商品名さえ、
手に取らないと理解できない商品形態とデザインだったのです。
つまり馴染みの無い容器形状・使い方も分からない・味も想像ができない
状態なので、伝えることが、とても難しく厳しいな~と感じていました。
当時のマーケッターは、ある地方都市でテスト販売をしていたこともあり、
その販売現場でのお客様とのやり取りから強い確信を持っていて、
このように言えば通じます!との秘策を強く主張していました。
自分は商品開発の段階で全く関与していなかったので、とにかくその秘策
の言葉を信じてTVCMを企画し制作したのですが、残念ながら
役に立つことが出来ず、難しく厳しいと感じた自分の感覚を優先
できなかった、しなかったことを悔やみました。
半年後には全国発売が計画されていていましたが、作ったTVCMでは
戦えないという判断で、新しいTVCMを作ることになりました。

リベンジ・・・
結論は新しいTVCMをオンエアしたら販売はうなぎ登り商品供給が
危ういとの情報もありましたがまさかそんなことが起こるなんて・・・
と思ったら、本当に休売となってしまいました。
商品担当のマーケッターが青ざめながら休売処理と再発売のための
準備に苦労されている姿が思い出されます。
ということで、広告で売れた・売るという経験を実感することになる
のですが、
何故売れたのか? 別な回で丁寧にご説明したいと思いますが、
取りあえず、ごく簡単にやったこととして、
商品のおかれた状態に素直に向き合ったということです。
“お客様は新製品なので何も知らない”というスタンスをぶらさず、
お客様が商品を知っていくプロセスをシンプルに描き出した
TVCMに仕立てたのでした。
決して派手でもなく、淡々としたTVCMです。
クリエイティブ調査でも決して評価は高いものではありませんでした。
それでもお客様は感じてもらえたのです。
ここで、クリエイティブをマネジメントしていくことの必要性と
可能であるということに気が付いていくことになります。

広告は機能する・・・
実を言うと、ASEANでは、何度となくTVCMを変えただけで販売が
好転する経験をしていました。それだけTVCMが効くマーケットの
状況が活況でもあったかと思います。
しかし、こと日本では、市場も熟成しているし
長年にわたり広告を作りながらも、
安定したロングラン商品が多く、広告で売りが大きく伸びる、
きちっと売るといった体感をしきれなかったので、
今回の事は貴重な経験は、
あらためて日本でも広告はまだ機能すると思いました。
さらに自分自身がお客様に、事業に、ブランドに、会社に、社会に
役に立てているのかも感じることがなかなかできなかったので、
自分自身の仕事に対する再確認をすることができ、
広告は人の為に役に立てるし、社会を良くすることに貢献できると
誇らしく思えました。

広告の可能性・・・
しかし、
その休売までしたその商品も商品設計上の課題や販売価格など
の問題をクリア・改善することが出来ずに終売に追い込まれました。
やはり広告にも限界はあります。
お客様にお伝えして購入に結びつけることは出来ますが
その商品を評価するのは、やはりお客様。
お客様の生活の中でFITしなければ、次の購入はありえません。

広告が出来ることは、お客様に商品・サービスを通じて、少しでも
生活の豊かさをイメージして頂くことが役割の一つだと考えます。
広告を邪魔者のように語る文面もありますが、それは、広告が本来
果たすべき価値を描いていないからだと思います。
伝える商品やサービスには、その商品・サービスが生まれるときに
描いていた理想とする生活像があったはずで、それを描ききれば
売りを作る・期待されるメーカーにとっての広告の機能は
果たされるのかもしれません。
その生まれた商品・サービスをど真ん中において
クリエイティブされるのであれば必ずお客様の心を動かせる
はずなのですが、なかなかそうならないとすれば、
その理由は、意外にも、
そのTVCMの中から見つけられるかもしれません。
とにかく、まだ広告は機能する、そう信じてやみません。

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