クリエイティブマネジメントのススメ
クリエイティブマネジメントって・・・
広告やデザイン開発におけるクリエイティブをマネジメントすることは
本当に出来るのでしょうか?
このテーマは、メーカーでTV広告・デジタル広告や商品開発のデザイン
などの制作物に関わる人なら、一度ならずも二度・三度、もしくは
それ以上考えたことではないでしょうか?
私自身も美術系大学を卒業して、食品メーカーに入社し商品開発における
パッケージデザインの企画と制作、さらに、そのデザインした商品の広告
の企画も担当し撮影・編集と、いわゆる企業内クリエーター&デザイナー
の両方を担当しながら、さらにプロデュサーとも、デレクターとも言える
立場も織り込みながら、制作全般に関わる管理をトータルに行って
きたのですが、この悩みはなかなか晴れるモノではありませんでした。
メーカー内のクリエーターの葛藤?
メーカーの中に存在する企業内クリエーターは、世の中で言われる
クリエーターと異なり売り上げという数字と真正面に向き合うクリエーター
です。これは、クリエーターでなくても広告宣伝部で広告の制作管理を
担当されている方も同様だと思います。
特に広告においては、社内のさまざま調整の末に決定した企画案が、
最終的にCM映像として仕上がりオンエアされて、お客様がその商品・
サービスを選択し購入していただいたことで、当初に計画した数字を
たたき出せば安堵し、ただし、概して社内では営業力・商品力など
他の側面があり“広告だけで良くて売れたのではない”と簡単に言われやすく
もし販売の数字が芳しくなければ、今度は簡単に、広告が良くなかった
のではないか?と指摘されやすい状況が起こります。
これは、広告のもつ業務上クリアな数字になりにくい危うさと、感性
という言葉で片付けられることによるブラックボックス的な要素が、
メーカーの多くの人達の広告やデザインに対する確信を持てない状況を
示していると言えるでしょう。
最終的に、広告もデザインも人間相手だから仕方がないとしてしまえば、
それで終わってしまうのですが、特に広告はマーケティング活動の
プロセスの中で、一番最後に繰り出される戦術で、そのマーケティング活動
の結果を大きく左右するにも関わらず、このクリエイティブに対して、対応
する人材を抱えているメーカーもありますが、多くのメーカーは発注という
形式になるため、がっぷりと向き合い切れていないと考えられます。
自分自身もメーカーの中にいながら、何故お客様を動かすこと出来るCMと
出来ないCMが生まれてしまうのか、長い間悩みながらも見つけ出すことが
出来ませんでした。
初、海外赴任!
入社して25年後に、会社で初めて企業内クリエーターを海外赴任させる
ことになり、その大役を授かり、ASEANでは比較的先進的な国である
タイ王国バンコクへと海を渡りました。
業務領域はASEAN(タイ・マレーシア・シンガポール・フィリピン・
ベトナム・インドネシア、当時ミャンマーとラオスはタイからの輸出
だったので担当せず)にバングラデシュとインドまでの広範囲を担当した
のですが、広告とデザインの両方を身につけ指導できたので
一人でやれたというものでした。
私が赴任するまでは、現地のスタッフが広告会社にパッケージデザインも
広告もすべて依頼していましたが(当時のASEANでは、日本の様に
パッケージデザインだけを専門にするデザイナーが存在しなかったため)
現地のスタッフもデザインや広告に関する専門性が高いわけではないので
どうしても広告会社に任せっきりになり、決して喜ばしい成果がでている
とは言いがたかった。
これは日本でも、多くのメーカーで同様の状況が起きていて、
得られた成果に対して苦慮されているのではないでしょうか?
マネジメントの目覚め
そこで気が付いたのは、クリエイティブは使う人がちゃんと
マネジメントしないと誰もちゃんとしてくれないということです。
クリエイティブを重ねていくと、そのイメージの集積はブランディングに
繫がっていきます。
キャンペーン上、その都度の判断が優先されますがブランディング視点
で考えると、もったいない結果を招きやすくマネジメントとしては不十分
になりがちです。
その商品ブランドがどの様に思われたいのか、どの様になりたいのか?
どんなイメージを作り上げたいのか?など、具体物なイメージやカタチに
ならないまでも言葉でそれなりに商品ブランドの定義を多くの商品担当は
されていると思います。
しかし、いざ広告となると、その時代を象徴的に表す広告表現に対し、
メーカーにはサステイナブルな視点が存在し、さらに“らしさ”に対する“慎重
なスタンス”が内在するため、いわゆる保守的な判断がなされたりして、
判断にゆらぎが生じやすい。
さらに、海外であれ日本であれクリエイティブは、自身だけでは作れない
ので多くの方々との知恵の持ち寄りで成り立っています。
広告において広告会社に依頼するプロセスは基本的に日本も海外も同じですが、いくらオリエンテーションで丁寧に分かりやすく伝えたにしも、
その母国語を使う者同士ですら、その人の生きてきた人生観が違うため
一つの言葉でも感じ方が異なり齟齬が必ず生じます。
それは日本でも海外でも何度も感じたものでした。
日本人でも外国人でも人に伝えるのは、難しく、またメーカーに長期の
イメージ構想があったにしても現地スタッフや外部の制作スタッフを同じ
方向に向わせるのは容易なことではありません。
自分自身、企業内クリエーター・デザイナーとしてラフなスケッチなどを
示したりして、パッケージデザインの改訂の指摘や指導、広告の企画・制作
の現場での調理アクションや編集の指導など、こちらから積極的にプロセス
に関与しクリエイティブの質に対してしっかりマネジメントすることを
継続的に見せることで、最終的に海外のお客様にも、おいしそうな
パッケージのデザインとかおいしそうなCMと呼ばれるようになりました。
“CMの構造”と呼べるモノ
5年の海外赴任を終え、日本に復帰して最初に制作したCMで、売れすぎて
休売をしなければならない出来事を起こしました。
企業内クリエーターとしては、してやったり!ではありましたが、
じゃ、柳の下の二匹目のどじょういわく次回のCMも売りを作ることが出来るのか? また何故その様な現象になったのか?
と社内から問われた場合にハッキリと言える状態ではありませんでした。
まさに偶然の産物としてのCMだったのです。
それでは当たるも八卦、当たらぬも八卦が続くだけで、何も変わらない
悔しさがありました。
そこで、このCMは奇跡を起こしたのは事実であるので、落ち着いて、
ちゃんと向き合って見ようと思いはじめました。
きっと、このCMには自分が気付いていない何かが潜んでいるのではないか
と思いようになり徹底的にこのCMを分析し始めました。
そこで見えてきたのが“CMの構造”と呼べるモノで、
過去からのクリエイティブ調査が示していた予兆・前兆の様なモノと
分析した内容を複合的に見れば見るほど面白い考察につながって、
クリエイティブのマネジメントの必要性とその分析は、
他者に頼めるモノではなく自身が見つけ出さないといけないものであると
確信を持つようになりました。
これから・・・
この広告とパッケージデザイン開発におけるクリエイティブマネジメントに
ついて自身が経験したこと、発見したこと、また必要性を様々な側面から、
これから何回かに渡って楽しく面白く語っていきたいと思います。
特に広告に関しては、既存の地上波の広告であろうとデジタル広告であろうと、人間の心理を相手にする広告の本質を可能な限り掘り下げて、
美術や映像系を学んでいないから近づきがたいと思われがちなクリエイティブについて現在・未来の広告宣伝に関わる皆さんのお役に立てるようにお話したいと思います。