クリエイティブマネジメントのススメ4
広告のクリエイティブは誰モノのですか?
この問いに関しては、クリエイティブを含む広告そのモノの
基本的な規則、業界ルールでは、メーカー・広告会社・制作会社の3社
が権利を有すると確かそう取り決めされていたと記憶しています。
しかし、果たしてそうなのでしょうか?
広告の企画は確かに広告会社がアイデアを企画し、メーカーに提案し、
制作会社が演出家をともに撮影・編集したものであることは
紛れもない事実ではあります。
しかし、メーカーがマーケティング活動を行う中で、
広告活動を行う必要がありマーケティングプランからお客様に伝えたい
項目を広告会社に依頼して作らせたモノでもあります。
依頼が無ければ生まれなかった広告でもあります。
しかも、地上波を始めとしたメディアに載り、お客様に届けられるときは、
メーカーの名前だけが見えて伝わります。どこの広告会社の制作である
という情報は、広告関係の雑誌や調査会社以外では知ることはありません。
オンエアされる広告も、当初は一つの企画では無く複数の企画が
提案されて、絞り込む判断をするのもメーカー、
最終的に1案に決定するのもメーカー。
なにか企画内容に問題があって炎上したにしても、
矢面に立つのはメーカー。
でも世の中で話題になったヒットCMになると、突然、企画した広告会社
もしくは企画会社のクリエーターに光が当たり企画の経過などの講演会が
たくさん開かれたりします。
クリエイティブにおけるトーン&マナーとは
広告の企画・クリエイティブについてメーカーはそれなりに、
メーカーのモノという自意識はそれなりにあると思われるが、
やはり主体性に欠けるところがあると思われます。
広告を広告会社に発注する。
これはどこのメーカーもおこなっていることですが
代理していただく行為によってその意識が希薄になる要因では
ないのかと思われます。
企画を決定すると意外に、良い物作ってよ!といった感じで
全面的にお任せしているのが大半ではないのでしょうか?
まるでオーダーメイドの洋服の様に、衣装デザインから布地・ボタンなど
全部相談して選択すると、まさにお店の技術にお任せしているのと
似ているのかもしれません。
しかし広告には、その企業の広告らしいクリエイティブの質を
決めるモノに、いわゆるトーン&マナーと呼ばれるものがあります。
多くのメーカーは、これを大切に扱っているでしょうか?
この大切なポイントも含めて、任せてきってしまっているのでは
ないでしょうか?
洋服との違いは、デザインが決定されて発注しているのと違って
広告で決めたのは、あくまでも企画内容だけです。
登場人物の性格から醸し出されるニュアンス、場面、時間、照明の感じ
色合いなど何も取り決めをしていないのです。
特に広告会社が変わったり、演出家が変わったりすると、
依頼する商品やサービスに強いトーン&マナーが無ければ、
その広告会社のプランナーや演出家が抱いている
その商品とサービスに対するイメージに塗り替えられることになります。
キャンペーンを大きく変更する時など、良いタレントに巡り会えたり、
演出が良かったりして上手く行く場合もありますが、
商品やサービスの持つトーン&マナー大きく変更したことで
お客様が違和感を感じてしまう場合もあり、注意が必要となります。
こんなことがありました。
自分自身が若い頃、
ある広告会社のプランナーと演出家が話をしていたとき、
あの会社のパッケージはかっこ悪いから、
小さくレイアウトするんだよ!その方がカッコ良く見えるじゃん!とか
話をしていて、おいおい、そんなことでCM画像における商品の
サイズが決定されていたのか・・・と愕然としたことがあります。
さらには、ある有名な飲料メーカーのTVCMは毎回質が良くて
何故なんでしょうね~?と演出家にこんな質問をしたときのその答えが、
あの会社のTVCMを演出するということは、名誉なことで、みんなが
知っているように、もともと良い質の広告をしているのだから、
そのメーカーらしい良い質の広告にしないといけないんだよ、と
まるで導かれているかのような話をされていました。
つまり、長きに渡って話題の広告を作り続けているので、
その広告制作に関わる人々の中に、こうでなければならないイメージ
というか、見えないトーン&マナーがあるんだな~と感じました。
多分、広告のオリエンテーションの際に特段こうして欲しいと
注文するまでもなく、制作関係者によって、あるレベルで質が
担保されているんだな~と感じたものでした。
まさに人の印象と同じで、“○○らしいよね”といったその“らしさ”と
言われるあるフィルターを通して広告もイメージづけられているのだ
ということを感じさせるものでした。
まとめると、広告のクリエイティブが放つトーン&マナーは、
とても大切にしなければならないモノであり、マネジメントを
ちゃんとやらず怠ったり、毎CMが異なるトーン&マナーで
あったとしたらお客様はイメージを定着できないことに繫がります。
広告のクリエイティブは、商品・サービスがあってこそ
創造されるモノで、どの様に“伝えるか、告げるか”から
考えられますが、さらに、そこに人としてどう理解されるのか?が、
さまざまな角度から考えられているのですが、
最終判断するメーカーサイドにトーン&マナーに通じる
商品・サービスの世界観が持てなければ迷走するだけです。
広告会社のプランナーがトーン&マナーまで提案することは
出来ますが、メーカーにその判断力が無ければ、ひたすら提案し
続けることしかなくなります。
本当はこの人のモノ?
メーカーの広告宣伝担当やマーケッターは伝えることが何で、
ちゃんと語られているのか?最初の何秒でこれを言って、
後半にこれを言って・・・などと考えがちで、時間的には
それでTVCMが成り立つかもしれないが、
本来、重要視しなければならないのはあくまでも企画内容が、
人とし気持ちよく受け取れるか?
ちゃんと理解し、分かっていただける流れなのか?
お客さま目線を優先しなければならないのに、
どうしても忘れがちになります。
まさに、ここに隠れているのが広告のクリエイティブは、
“お客様のためのモノでもある” と言うことなのです。
メーカーがメディア管理だけでなくクリエイティブの手綱を
しっかり掴めるようになれば、落ち着いてお客様目線で
商品・サービスのメッセージをどの様にお伝えするのか、
計算出来るようになると思います。