上五島の旅:斑島にも行ってみた(2日目そのに)
2018年初冬の小値賀島の旅の記録、続き。なかなか野崎島にたどり着かない…(苦笑)
午後はせっかく電動自転車借りたので、少し遠出を。斑島という小値賀の小さな属島にある天然記念物「玉石甌穴(ポットホール)」に行ってみた。
笛吹の集落を出てしまうと、島の西側は山がちで、店どころか家もほとんど見かけない。この日は風が強く六島行きの船は全便欠航、佐世保と結ぶ高速船も欠航していたので、うっかりすると帽子も吹き飛ぶ風の中を走って、小値賀島北西に位置する斑島を目指す。車で行けばあっという間だと思うけど、自転車だと結構な距離。
私は資料館で相談して、北側から回り込むルートに比べ比較的アップダウンが少ないという、小値賀の南西サイドから大浦、浜津、横平を経て斑大橋へ至るルートを選んだ。
地図にはターミナルからポットホールまでは自転車で40分程度と書いてあるけど、これは脇目も振らずに自転車漕げば、という距離感で、途中で写真とったり道に迷ったりすることを考えると、普段からポタリングとかしてる人じゃなければ1時間はみておいたほうがいいと思う。
島のお土産にもよく意匠が使われている「牛に注意」看板とか…
ホンモノの牛さんとかを眺めつつ、斑島に渡る大橋に着く。笛吹郷を出てからここまでくる途中、人とすれ違ったのはたぶん2回。工事中のおじさん集団と、観光客らしい男女が車の脇に立ってる姿を見かけただけだった。
海沿い地域以外の民家は国道沿いよりも奥まったところにあるらしく、とにかく人に会わない。路線バスも走っているようだが本数は少なく、島の西側には休憩できる店とかがないので、飲み物やおやつはちゃんと準備していったほうがいい。
これが斑大橋。季節もあるとは思うけど、瀬戸内海とかで見た海とは色も波もちょっと違う感じ。橋の上からこれ↓撮ってたときは、自転車は風に煽られ倒れそう、手に持ったスマホも吹っ飛びそうで必死で踏ん張ってた。でも牛ちゃんたちは、この荒れた海のすぐ近くまで降りてきて草を食んでいる。
斑島に着くとアワビの養殖いけすみたいなものがあったけど人の姿はない。地図がアバウトで道に不安があったので、しばらく走って網の手入れをしている漁師さんを見つけ、玉石甌穴への道を聞いた。ほとんど海沿い道なりで良いのだけど、地図の印象よりは距離がある。
こんな可愛い落書きのある防波堤を通り過ぎると、道が少し登り坂になる。
網が干してある番小屋的なもの以外は民家もない小高い丘に出ると、こんな風景が広がる。小さく見える白い鳥居のあたりが目的地の天然記念物、玉石甌穴。自転車を置いて歩いて行く。
芝生は枯れてたけど、足元には小さな花が咲いていた。
風と波の音しかしない海岸にたどり着く。風は相変わらず強く、耳も鼻ももげそう。
これが玉石甌穴(ポットホール)。さてどこに…?と見渡すと、岩場に矢印が。つまりこの、東映映画のオープニングよろしくドッパーン!と波が砕ける岩場の先に行け、というのである。周囲は一切人の気配なし、さっき会った漁師さん以外私がここにいることを知ってる人なし、海に落ちたら誰も助けてくれない。躊躇したけど、ここまで来たんだし…と岩場に降りてみた。
ある程度までは舗装された小道で、その先はただの岩場になる。
途中こんな祠もあって、玉石が信仰の対象だったことがわかる。
矢印に導かれるまま屁っ放り腰でゴツゴツの岩場に降りて覗き込むと、波に洗われて黒光りする玉石が見えた。風だけじゃなく潮の関係だと思うけど、立ってる場所にも波しぶきが飛んでくる。すごい迫力。ほんと海に落ちそうで怖くて動画にも変な声が入っちゃってた。
カネゴンにピントをあわせる余裕なし。
とにかくこの荒波に削られて石がまん丸になった、ということはめちゃくちゃ実感できた。潮が引いているときはこんな感じでカラカラに乾いているらしいので、潮が満ちてる時間に着いたのはラッキーだったのだろう。でもほんとに波にさらわれそうなので、小さいお子さんとかお年寄り連れて行くのはちょっと危険かな…
日暮れの時間も心配になってきたので丘に戻る。
春にはこの枯芝も青々として、ぜんぜん別の風景になるんだと思う。でも、初冬のこの荒涼とした景色を独り占め、というのもなかなか良かった。オフシーズンならではの贅沢。
名残を惜しみつつポットホールとはお別れ。少しだけ斑島も走ってみる。
島に特徴的な赤い土の畑は特産の落花生の畑なのかなぁ…。とにかく人に会わないので聞けなかった。斑島灯台にも行ってみたかったけど、登り坂があまりにもきつかったのと日が傾いてきたので断念。いつか再訪する時のお楽しみ。
ここにも牛ちゃん注意の看板がある。
再び橋を渡り、夕暮れを気にしながら小値賀島北部の名所「五両ダキ」を目指してみた。資料館の人から聞いてはいたけど、島の北側は南側より道のアップダウンがあって電動自転車のバッテリーの減りが激しい。これ電池きれたらただの重たい自転車になるんだった、と思い出して、なるべく電池を節約しながら走る。
道に迷いながらたどり着いたのは、浜津のゴルフ場だった。夏場にはキャンプも出来るらしい。このへんは釣り客も多いので、シーズンにはこのへんでキャンプして釣りを楽しむ人もいるのかも。おじいさんが一人、練習を終えて帰ろうとするところだった。
何が書いてあるのかと近づいてみたらイーグル賞の記念石だった。ここからは水平線が本当にまるく見える。すっばらしい景色だったけど、お目当の五両ダキではない。少し日も陰ってきて寒いので早々に撤退。
さっきのゴルフおじいさんに五両ダキへの道を聞きたかったけど、叫んでも声が届くかどうかみたいな距離で、すぐにいなくなってしまったので聞けず。再びあてにならないグーグル先生の地図と島内地図を見比べながら自転車でウロウロ。
小さな集落っぽいところの畑の道を抜けた先に、ようやく五両ダキへの入り口のフェンスを見つけたときには、空の色が夕方のオレンジになりかけていた。
ほとんどケモノ道のようになった草ボウボウの細い道を抜けると目の前に五両ダキ。五両ダキのダキは滝ではなくて、崖のことだ。
赤土に夕陽の色が重なってこんな色になる。これは全く加工してない写真。日没との戦いだったので、あまり長居はできず接近する時間もなかったけど、一見の価値はあると思う。ただし、ここは自殺スポットでもあるため、島民にとってはあまり近寄りたい場所でもないらしい。フェンスは野生動物除けの意味だけではなく、自殺予防用だったのかも。
ここからは、暗くなる前に笛吹に戻るため一所懸命に自転車漕いだ。翌日トレッキングあるのに、こんなに必死で自転車漕ぐことになるとは…と思いつつも、素敵な景色をいっぱい見られたので満足。
北側から笛吹を目指すので、もう一つの観光名所である姫の松原も通ることができた。
ただまぁ、松原じたいは全国各地にあるので、さほど感動的というわけでもない。夏場は涼しくていいだろうなと思う。この松原沿いに、小値賀の小学校から高校までの学校が隣接して建っている。
体育館や校庭も立派だし、離島にしては教育環境が整っている島だな、とあらためて思う。
こんな感じで、どうにか暗くなる前に笛吹郷に戻ることができた。丸一日かけて小値賀の中心と西側だけを回った形だけど、とにかく自然景観が豊かでとっても満足。
晩御飯は宿でいただいて、翌日早朝の野崎島への出発に備える。
宿には高速船が強風で欠航になったため本土に帰りそびれたというお客さんが泊まっていた。島から出られない人がいる=島に来られない人がいる、ということなので、こういうアクシデントがあっても港で一夜を明かす…的なことにはあまりならず、泊まるところは大抵なんとかなるのが小さな離島のいいとこかも。
翌日に続きます。