
長女と森鴎外の『舞姫』談義
※虎の画像を選んだ理由は、後半分かります。
リケジョ長女がJKだったころ。現代文の授業で、森鴎外の『舞姫』を読んだそうですが、開口一番
「森鴎外のモデルの豊太郎ってクズやん!」
とお冠の様子。
荒っぽいあらすじ
ドイツへ留学した官僚の豊太郎は、踊り子のエリスと恋に落ちます。しかし、それが原因で、官僚を解雇(このころは、何もなかったらしい。知らんけど)。エリスと暮らし始めるも、友人の相沢に出世の道に戻るように諭されます。そんなときエリスは妊娠。豊太郎は悩んだ末、母親の死も相まって、エリスを置いて帰国。
長女
「エリスのお父さんが亡くなった時、葬式費用を工面したり、帰国する時もお金渡したりしているけど、そういうのが上から目線で嫌だ」
ちなみに豊太郎の方が年齢的にエリス(10代かも)より上です。
そういわれて、教科書を借りて、久しぶりに『舞姫』読み返しました。
「石炭をば早み積み果てつ」の優雅な文語体で始まりますが、中身はドロドロ。
しかし今回読み返して、豊太郎がエリート故に周囲から過度に期待され、妬みを買い、不慣れな土地で生活していく上、苦悩していく過程が丁寧に書かれていました。
この留学は個人的なことではなく国を背負ってのもの。自分の意志は尊重されません。もちろん、国際結婚は一般的ではなくエリスを連れて帰国なんて不可能。
あなたも大変ですねー、と若干同情しつつ、だったら気を付けろよ!
そして、今回初めて豊太郎のために親身になって動いている相沢の存在に気付きました。豊太郎は、帰国後仕事に就けるように取り計らってくれることに感謝しつつ、どこかエリスと自分を引き裂いたと思い込んでいる節があるようで。
「ああ、相沢謙吉がことき良友は世にまた得難かるべし。されど我が脳裏に一点の彼を憎む心今日まで残れりけり」
と感謝と恨み節で終わります。上げといて最後下げるんか!せめて文章逆にしてや!
相沢は、頑張っているのに報われない。おぱんちゅうさぎのようです(最近ハマっています)。
ついでに。中島敦の『山月記』も久しぶりに読みました。それを夫に言ったら、
「承認欲求強すぎて、虎になるやつなー」
一言で説明するとこうなるのか。
「承認欲求」の言葉自体は最近だけど、昔から人間が持ち続けていた感情なんだろうな。それを表に出し過ぎるのが令和の世の中なのかも。