【Pathfinder's Quest】CHAPTER10の素人日本語訳(本編[レヴナントのとても意味のある話])

前提や注意事項(必読)

本編[レヴナントのとても意味のある話]

※ここではレヴナントがパスに対し一方的に物語を聞かせているような構成になっています。
※実際はこれまでの本編と同様口調は全く変わっていませんが、「物語」という体裁を踏まえ、演出上敬語の語り口で訳しています。

昔々あるところに、ボブ・ウッズという男がいました。ボブは善人でした。彼は毎日都市計画事務所の水処理施設で働いていました。
ボブは家に帰ると、2人の子供たちに本を読み聞かせました。ボブには美しい妻もいて、彼女はボブのために毎晩夕食を作ることが幸せでした。ボブは、愛と笑いが耐えることのない幸せな日々を送っていました。

ところがある日ボブが仕事に行くと、普段は見ることのない、あるものを見ました。ボブはすぐさま上司に報告しました。彼のボスは委員会…あるいはシンジケートなど、ある種のグループの人間たちと協力関係にありました。そして組織の人間たちは、ある金を借りた男を問い詰めていたのです。
男は激しく問い詰められ…"偶然"死んでしまいました。
彼の死そのものに何ら問題はありませんでしたが、困ったことに彼の父親は組織といくつかの商取引に関わっていました。
そして…まぁ?細かいことはおいておきますが、シンジケートが息子を殺したことが父親に知れたら、非常に多くの人がお金と生活を失ってしまいます。シンジケートはそうするわけにはいきませんでした。
そこで彼らは、死んだ男が街を飛んだかのように見せるため、遺体を処分する計画を思いついたのでした。計画は完璧でした。…ボブが会話の一部始終を目撃していたことを除いて。
ボブは真実を知ってしまいました。そして会話が終わった時、うっかりペーパークリップの箱を机から落としてしまいました。それを聞きつけたシンジケートの男がすかさず後を追いましたが、ボブはなんとか逃げることができました。シンジケートの男は、必ずボブを見つけ出すことを誓いました。

そしてシンジケートは、彼らの過ちを正すためにある男を呼び出しました。彼の名前はカレブ・クロス。カレブ・クロスは道徳も、価値観も、命に対する尊敬の念も持ち合わせていない男でした。シンジケートの人間が困った時、彼らにはできないことをするのがカレブ・クロスの仕事です。
ところで、このシンジケートに関わる全ての人間が悪人だったわけではありません。シンジケートに属するうち何人かは名誉を信じていましたし、また何人かは人々を助けたいと思っていました。ですが、善人でも悪いことをしなければいけない時があります。善人でも、カレブ・クロスを呼ぶことががありました。そして、この運命的な夜にクロスに電話し、仕事を与えたのは悪人でした。「ボブが見聞きした真実を他言しないようにしてくれ」

ボブは家に帰ると、妻に自分が見たことについて話しました。すると彼女は、シンジケートの善人のところへ行き、彼らに真実を伝えるよう言いました。ボブは怖がっていましたが、彼の妻ーー彼女の名前はメレディスーーは、善良なシンジケートの人間が、彼を助けるだろうと知っていました。そうしてボブはシンジケートの善人のところへ行き、目撃した事実を話しました。当然ながら彼らは酷く動揺し、歪んだ運命の輪を回す悪人を捕まえ、二度とこのようなことがないようにしました。
ボブは人生でまた正しいことをしました。そして悪人は皆捕まり、ボブは自身の正しい行いに満足しました。家へ帰りメレディスに「悪人は捕まり、全て終わった」ことを告げようとしました。

食堂から夕食の香りのする玄関にのロビーの床で、彼女の顔が出迎えてくれました。彼女の残りは夕食のテーブルの周りに散らばっていました。そしてカレブ・クロスはテーブルを挟んで向こう側に、肉切り包丁をもったままそこにいました。「会いたかったよ、愛しのハニー♪」

恐怖したボブは辛うじてクロスから逃げ切りました。そこからは恐怖のレースの始まりです。ボブはバンド練習をしている彼の子供たちを迎えにいき、ガイアに行く計画を立て、水処理施設の事務所へと急ぎました。なぜガイア?ガイアには警官隊がいるからです。ガイアの警官隊なら、ボブとその子供たちを守ってくれることでしょう。彼らが空港に着いたとき、子供たちは不機嫌になり、泣き出しました。子供たちは何が起こっているのか全く理解していません。ボブはガイア行きのチケットを3枚購入し、ガイアに着いてすぐにガイアグローバルタスクフォースへ向かいました。そしてボブが彼らに全てを話すと、立派な警官達が彼らを保護することを保証してくれました。警官たちはボブとその子供たちを安全な家に匿いました。ボブは子供たちをベッドへと押し込み、涙を拭き、恐怖をはねのけ、朝には新しい人生を始めることを誓いました。

翌朝、太陽は輝き、小鳥がさえずり、子供たちと始める新しい人生。それとも…来世。残念なことに、子供たちは朝を迎えられませんでした。クローゼットの中に潜んでいたカレブ・クロスによって惨い事件が起きてしまいました。ボブは自分の運命を理解しました。もう家族もいないボブに生きる理由はなかったので、彼は逃げ出すことはしませんでした。膝から崩れ落ち、頬を涙が伝います。ボブはクロスに早くするよう頼みましたが、クロスはボブを殺すつもりはないと言いました。ボブは口を閉ざしてさえいれば、彼の家族が今も生きていたであろうことを知っていました。

そこで突然、家が包囲されました。ガイアグローバルタスクフォースが駆けつけてきてくれたのです!警官が到着し、カレブ・クロスはガイアの管轄で2人の少年の殺害容疑で逮捕されました。ボブはもう一度希望を持ちました!彼の家族はもういませんが、少なくとも彼らを殺した殺人犯は裁判にかけられ、裁きを受けることになったのです!

しかし悲しきかな、それはこの世界のやり方ではありません。シンジケートがいくつかの不正を行い、カレブ・クロスに対する告訴は取り下げられました。ボブは、クロスが機動部隊から解放される前の日の夜にそれを知りました。なんてことでしょう、ボブはこれを聞いて激しく動揺し、追い詰められました。ボブに安息はありません。そこで彼は、ある計画を思いつきました。

翌日、カレブ・クロスは解放されました。彼はシンジケートの傭兵に囲まれ、再び日当たりの良いガイアの澄み切った空気を吸うことになりました。クロスはホテルに戻り、別の使命の達成を祝うため、いつものスコッチをグラスに注ぎました。底に注意深く注がれた透明な液体の味を知ることはないまま、間もなく彼は意識を失いました。彼が最後に見たのは、ホテルの部屋のクローゼットから、ボブが出ていく姿でした。この取るに足らない、忘れられ、過小評価された小さな男が、彼を出し抜いた最初の人だという皮肉は、遠のく意識の中でも失われることはありませんでした。しかし、ボブは限界に追い込まれました。このモンスターを自由に歩かせることなどできません。そんなのはもうこりごりでした。

クロスが目を覚ますと、自分が縛られ、何か不潔なもので満ちた大桶でいっぱいの部屋を見下ろす、キャットウォークに横たえられていることに気が付きました。クロスがこれまでの人生で嗅いだことのある何よりも酷い匂いでした。そのすぐそばで、ボブはクロスに銃を向けていました。ボブは何故こんなことをしたのかクロスに尋ねました。「どうして妻と子供たちを殺すだけでなく、途中、彼らを喜んで拷問したのか?」

クロスは微笑みました。「それが私の仕事だから」と彼は言います。非常に明快な事実です。クロスはボブが銃を撃つことが決してないことを知っていました。ボブにそんな度胸はありません。彼の妻や子供たちは…根性がありましたが?ボブの精神的なイメージが頭にあったため、クロスは自分のジョークで笑いました。そして彼はそれを止められませんでした。彼は笑いました…さらに笑い続けました…そしてもう少しだけ笑いました。

その瞬間、ボブの中で何かが弾けました。彼は銃を落とし、クロスを掴み、キャットウォークを横切って近くの大桶の1つまで引きずりました。「これが何か知っているか?」ボブは尋ねました。答えを待たずに、ボブは「これは市の下水処理施設だ」と説明しました。ここは、ザルダナシティの全ての下水が行きつく場所。それらがこの大桶に蓄えられ、ろ過処理され、最終的にきれいな水になるのです。次の瞬間、きれいとは正反対の光景がクロスの目前に広がりました。トイレに流された全ての汚物。それがこの大桶を満たしているものでした。クロスはその一部になりました。ボブが耳を掴み、頭を大桶の1つに完全に沈める最後の瞬間、クロスは酷い匂いが想像の100倍を超えるものだと身をもって知ることになりました。

そうしてボブは、この悪夢が始まって以来初めて微笑みました。クロスが最後の一飲みをし、その体がけいれんを止めた時、ボブは微笑んでいました。クロスの肺は、私たちが決して話題にしないもので満たされました。立ち上がって施設を出た時、ボブは笑っていました。そしてクロスを保護することになっていたシンジケートの部隊がクロスの遺体を引き上げ、ボブの体に弾丸の嵐を撃ち込んだときも、彼はまだ笑っていました。それから彼らはクロスの死体を急いで最寄りのハモンドの施設に運びましたが…クロスの話はまた別の日に。これはボブの話ですから。ボブは善人でした。そしてこれは、とてもいい人がどのようにして同じ人間を汚物や排泄物や…ああ、全ては話したくありません。彼は自身が血生臭い死を迎える前に、喜んでそうしたという話でした。

→本編[B]に続く


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