私の秘密ヒェン(小さな秘密)
私の秘密ヒェン
一つの秘密ヒェンを思い出した。
数年前、私は大都市Sのホテルで受付をしていた。
人が常に動いていて、ドラマがあって。
エレベーターが開くたび、次はどんな人がお出ましになるか。
魔法の箱から次々に飛び出す物語が楽しかった。
受付は4階。
どこかでボタンが押される。
どこからともなく、エレベーターがやってくる。
6
5
4
3
2
どんどん、どんどん、下っていく。
1
1階までお迎えにあがったエレベーター。
1
2
今度は数字がどんどん大きくなる。
どこで止まるかな。
3
…
光る数字に ぼーっと目をやる。
4
あ、止まった。
たまてばこ が開く。
ある若い女の子だった。
青い目に、ピンクのセーター、オレンジの髪。
美しかった。
受付は、外国人を見たらパスポートの提示を求める。
そして、日本の条例だか憲法だか知らないが、
それに則ってパスポートや在留カードのコピーを取る。
彼女は若かった。
受付は気がついてしまった。
若者を泊めるにはいろんなルールがあることを(一応)思い出す。
18歳は親の同意必要、18歳未満は宿泊不可能。
若い彼女は17歳だった(16だったかも)。
押し返して他の宿に泊まってもらうなんてできなかった。
大都会のど真ん中だし。
夜も遅かったし。
若い彼女は1人で日本を旅していると言った。
私はとりあえずルールを説明した。一通り。
そして、でもいいわよ☺️✌️ と言って彼女を泊めた。
目の前の若い彼女をcareしたから。
1人で日本を旅していて。夜に到着して。疲れていて。
人を守るためにできたはずのルールが上手く働いていない時、
私は「私」でありたいと思う。
授業の合間に彼女と出かけた。
彼女は写真が上手だった。
また会いたいな。
旅してたら会える気がする。
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